映画の話でコーヒーブレイク

映画の話を中心に、TVドラマや旅行の話などを綴ります

つぐない

2008-04-25 | 映画 た行
アカデミー賞7部門にノミネートされアカデミー作曲賞獲得、
キーラ・ナイトレイ出演作なのに、CMも少なくひっそり公開されているのは何故なのでしょう?

知り合いのYさんに関内の横浜シネマリンのチケットを頂き、
調べてみたら「つぐない」上映中!ということでダッシュ!

こんなことがあるのでしょうか?初めて行った小さな映画館のトイレで知人Iさんに遭遇!!!
同じ日の同じ時間に、数ある映画館の中で同じ場所、それもトイレで会う確率って、
めっちゃ低くない~?!
などとおバカなことを考えながら鑑賞。

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   つぐない  ATONEMENT

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原作はイギリスのブッカー賞作家イアン・マキューアンのベストセラー『贖罪』。

「贖罪」「つぐない」「あがない」「罪滅ぼし」「埋め合わせ」、
う~ん、やっぱりキリスト教的な意味を持つタイトルなんでしょうね?

第二次世界大戦前、夏のイングランド。
上流階級の娘で作家になることを夢見る13歳のブライオニー。
ケンブリッジ大学を卒業したばかりの姉セシーリア。
使用人の息子で幼なじみ、2人の父の援助を受け、ケンブリッジを卒業し医学を志すロビー。
  
以前からロビーに恋心を抱くブライオニー。
身分が違うとロビーと距離を置いていたセシーリアだが、ある出来事をきっかけに、
お互い惹かれていることに気付く。
それを見つめ、うろたえるブライオニー。
ロビーの手違いで、出すつもりの無いセシーリアへの手紙をたまたま目にし、二人の密会を目撃してしまうブライオニー。
好きな人が、自分ではなく姉と只ならぬ関係であることを知り、ショックを受ける。

彼女の歩き方、劇作家としていとこ達への演技指導する様、表情などから彼女の少女らしい一途な潔癖さがうかがえる。


まさにそんな時に事件が起こる。
夜、幼い双子の従兄弟が家に帰りたいと行方不明になり、懐中電灯を手に全員で暗闇の中を探す。
双子の姉が、レイプされているところに出くわしたブライオニーは「犯人を見た」と言い、
警察にロニーが犯人だと証言する。
行方不明の双子を見つけ出したにもかかわらず、ロニーは犯人として逮捕され刑務所へ。
その後刑務所から出る為に従軍する道を選びフランスの戦場へ。

ロニーと引き離されたセシーリアは家を出て看護婦になる。
出兵前にロニーと会い、「私のところへ、もどってきて」と海のそばの別荘の写真を渡す。

    

この後、映画は二つの構造になっています。
ブライオニーの書いた小説の話と年老いた彼女が語る真実と。
最後まで見て、観客は今まで見ていたのは現実に起こったことではなく、
ブライオニーの、セシリアとロニーへの
せめてもの「つぐない」として書いた小説であることがわかる。

幼さゆえの潔癖さと嫉妬が生んだ罪。
自分の一言がどんな結果を生むか想像できるはずもなく、
大人になって自分の言った嘘で二人の運命が大きく変わってしまったことを悔い、詫びるわけだけれど、
当時13歳の彼女がついた嘘は嫉妬による悪意のある嘘だったのか、
それともショッキングなシーンを目撃し、混乱し姉を守ろうという意識が働いたのか?
その両方が入り混じったものだったのか?

後になって言っても詮無いことだけれど、
もしあの時噴水での二人の様子を目撃しなければ・・・
もしもう一通の手紙が届いていれば・・・
もし図書館に入らなければ・・・
もし双子が家出をしなければ・・・と思わずにはいられない。
人生の歯車は、些細なことで方向を変えられてしまうことがあるのですね~。
悲しいな~。


子供がついた嘘で周りの大人の運命が悲劇へと変わっていく映画といえば、
オードリー・ヘップバーン、シャーリー・マクレーン主演の白黒映画「噂の二人」。
原作はリリアン・ヘルマンの「子供の時間 CHILDREN'S HOUR」。
親友ふたりが営む私立女子寄宿学校で、先生に叱られた少女が嘘をつく。
ふたりの仲が怪しいという言葉に、子供がそんな嘘をつくはずが無いという大人の思い込みから、
悲劇の結末へ。
こちらで描かれるのは少女の「つぐない」ではなく、
子供の残酷さ、身勝手さ、「子供がそんな嘘をつくはずがない」という大人の思い込み、
広がった噂に翻弄され、集団による精神的暴力の怖さを描いている。

告発する時のこの少女の目とブライオニーの目がそっくりなのに驚きです!

ブライオニーを演じるシアーシャ・ローナンも撮影中は13歳、
迫真の演技でアカデミー助演女優賞にノミネートされましたが、
先週の「フィクサー」ティルダ・スウィントンのよりも、個人的にはこちらが受賞すべきだったのではと思います。

晩年のブライオニーを演じるのは、ヴァネッサ・レッドグレイヴ。
77歳になったブライオニーは作家になり21作目を発表する。
それはセシリアとロニーの物語。
病院で看護婦見習いを始めた時から書き始め、認知症初期と宣告され、やっとの思いで完成。
彼女にとっては処女作であり絶筆となる一作。
数十年を、彼女の人生を懸けて仕上げた作品だったということから、
彼女の悔恨と悲哀の、想像を絶する辛く暗い人生がうかがわれます。涙が・・・
セシリアとロニーのみならず、彼女も人生が変わってしまった。
誰一人幸せになっていないというのが、何とも切なく、悲しいなあ~。

とっても、文学的で、イギリスの美しい風景も楽しめる作品でした。


第二次世界大戦でフランスといえば、ノルマンディー上陸はよく知られていますが、
ダンケルクでチャーチル指揮のもと、
あらゆる船を動員した史上最大の撤退作戦があったなんて知りませんでした。
観覧車やメリーゴーランドが出てきて、何なのこれは?はて?状態でした。
   
 
タイプライターの音を使った音楽といえば、ルロイ・アンダーソンの「The typewriter」、
誰もが耳にしたことがある軽快で明るい音楽だけれど、
この映画では、タイプを打つ音が緊張感とこれから何かが起こるということを
暗示するように使われているのには驚きでした。

戦場のシーン(だったかな?)とつぜん流れたドビッシーの「月の光」もよかった~。

ロビー役のジェームズ・マカヴォイは前回見た「ラスト・キング・オブ・スコットランド」以来ですが、
ラッセル・クロウに似ていると感じているのは私だけ?
ちなみに、二人ともタイプじゃありません。(ファンの方、すみません~)

キーラ・ナイトレーは「ベッカムに恋して」とか、「パイレーツシリーズ」みたいな元気印の方が合っていると思うけどな~。
お姫様とか令嬢というのは・・・ちょっと
あくまで個人的な意見です。(石が飛んできそう、失礼しました)






***** 今週 見た 映画 *****

 4月21日  「リトル・チルドレン」 DVD

 4月22日  「あるスキャンダルの覚書」DVD ジュディー・デンチ、ケイト・ウインスレット

          「靴に恋して」 DVD スペイン映画

         「グレイズ・アナトミー」シーズン1①②③

 4月24日  「プロヴァンスの贈り物」DVD ラッセル・クロウ、マリオン・コティアール主演 
            「トスカーナの休日」男性版?

         「グレイズ・アナトミー」シーズン1④⑤




 

フィクサー  MICHAEL CLAYTON

2008-04-19 | 映画 は行
今年のアカデミー賞に7部門でノミネート、
ちょっとミステリアスなお顔立ちのティルダ・スウィントンが助演女優賞を獲得した映画です。

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     フィクサー  MICHAEL CLAYTON

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日本語で「フィクサー」と聞くと何をイメージするでしょう?
総会屋とか政治の「黒幕」とかじゃないでしょうか。
広辞苑によると
「(公正でないやり方で)陰で仲介・調停することで報酬を受け取る黒幕的人物」とあります。
やはり、陰の大物のイメージがありますよね
英語の「fixer」は「不正・不法な方法で調停するのがうまい人」で、大物のイメージはありません。
映画の中では「ジェネター janitor(清掃・管理人)」が自嘲的に何度か使われておりました。
「もみ消し屋」というより、「後始末屋」ってとこでしょうか。

この映画の主人公マイケル・クレイトンは、
バツ一で元妻は子供を連れて再婚、
ギャンブルで負けたお金を事務所から前借り、
従兄弟と始めたレストランは失敗し人手に渡り、
借金を返せないと怖いお兄さんに痛い目に合わされそう、
乗ってるベンツは事務所の車、
弁護士なのに法廷に出れず、
事務所では不祥事を裏で工作する便利屋のような存在で昇進も無い、
崖っぷちのカッコ悪~い人。
この役を、カッコよすぎ~の渋~いジョージ・クルーニーがやるってのに無理がある気がします。
          
もっと疲れた、裏家業が似合う人(あえて誰とは・・・あっ、アル・パチーノどうよ?)
がやんないとリアリティーに欠けてるんじゃないのかな?


農薬の垂れ流しの薬害訴訟の映画といえば、
ジョン・トラボルタの「シビル・アクション」や「エリン・ブロコビッチ」を思い出します。
そういえばこの映画も「エリン・ブロコビッチ」も、
どちらも主人公の名前がオリジナルタイトル。
これって偶然の一致?

「エリン…」がジュリア・ロバーツの明るいキャラで、
原告勝訴に持ち込み高額な賠償金を手に入れる事実に基づく爽やかな作品とすれば、
こちらは複雑で、暗~く、食うか食われるか命がけのガチンコ勝負、
越えてはならない一線を越えて、裏取引ってこんな感じ?
やっぱりこういうことあるのかしらと思わせるフィクション映画でした。

弁護士のドラマといえば、
法廷で陪審員に語りかける最終弁論が見せ場になるものが多いのですが、
この映画に法廷シーンは全くありません。


****** ネタばれ ありです ******



農薬会社とその会社を弁護する法律事務所が、集団訴訟原告団と対立する中で、
農薬会社の有害データファイルを入手、
良心の呵責と原告女性に対する同情から、事務所を裏切ろうとする弁護士アーサーが、
会社・法律事務所の大きな力で潰されそうになり、同僚の主人公マイケルに助けを求めるところから始まります。

何日前、何ヶ月前と時間を巻き戻して何があったか振り返るという手法と、
登場人物たちの名前と人物の一致に時間がかかり、少し混乱(老化現象?!)
      
 
主人公の息子が夢中になっている冒険ファンタジー小説?「王国と征服」と
その本に夢中になるアーサー、
マイケルが丘の上で見る3頭の馬、
突然道をはずれ馬を見に車を離れたおかげで命拾いをするわけだけれど、
この本と二人の行動の関係がいま一つ。
一般的に冒険ファンタジーのテーマは「力を合わせ、正義のために悪と戦う」ってことだけれど、
そこが二人を引き付けたのか?DVDの発売後チェックしようっと。


弁護士事務所の花形で、6年越しで大手農薬会社U・ノースの弁護をしている
アーサーを演じているのはイギリス人のトム・ウイルキンソン。
主役ではないけれど、いつも良い味出しておられます。
この映画でアカデミー助演男優賞にノミネートされていたけれど、
「ノーカントリー」のハビエル・バルデムさんに持っていかれてしまいました。残念!

      

U・ノースの法務担当カレンは、表では自信満々の発言で鉄の女ぶりを発揮しているが、
裏にまわると何度もスピーチ練習を繰り返し、
手は振るえ腋にべっとり汗をかき、プレッシャーに押し潰されそう。
非常に真面目で仕事熱心、このポジションまで登りつめ、会社の為、有能さを示す為、
越えてはならない一線を越えてしまう。
已む無くそんな命令を出してしまった自分に戸惑い、恐れ、
死んだと思っていたマイケルの登場に、驚き、頭が真っ白状態になり、ぼろを出す。
さすがに助演女優賞獲得、迫真の演技でした。


最後にマイケルがカレンをはめ、警察のおとり捜査に協力するけれど、
これは正義感というより、アーサーが殺されたことと、自分は危機一髪で助かったことで、
後始末屋の仕事は命を懸けてまでするようなことじゃないと思い切ったということと、
彼の弁護士としての意地でしょうか?
自分でも言ってたように、今までお金で動いてきたから。
でも自分が働く法律事務所の大型顧客であるU・ノースを裏切った以上、
首になることは間違いないでしょうね。

最後にタクシーに乗り、50ドルで行ける所までと行ってくれと言って笑顔を見せるマイケル。
社会悪と戦った満足感と達成感?

それにしても、悪徳企業U・ノースのイメージ戦略コマーシャルが、妙に頭に残ってるのは何故?


***** 今週 見た 映画 *****

  4月15日 「つぐない」

  4月16日 「フィクサー」

  4月18日 「忘れじの面影」J・フォンテーン、ルイ・ジュールダン主演
          ツヴァイク原作「見知らぬ女からの手紙」1948の白黒映画
          ダイソーで、な、なんと!税込み¥210也 
          タイトルがいいなぁ~
          著作権が切れてるからって、こんな値段でいいの? 
            







    




クイーン

2008-04-13 | 映画 か行
4月7日、死後10年を経てロンドン高等法院の陪審団はダイアナ元妃らの死因を、
重過失を原因とする事故死の評決を下した。
英王室の命令で情報機関MI6が暗殺したという陰謀説までまことしやかに囁かれ続けてきたが、
ダイアナ妃が乗っていた車の運転手の飲酒とスピードの出し過ぎ、
パパラッチの無謀な追跡、
それにシートベルトの不着用による事故死”unlawful killing"との結論を下した。
二人の王子も、この評決を受け入れるという声明を発表している。

元妃の恋人といわれているアルファイド氏の父で
高級百貨店ハロッズのオーナーであるエジプト人大富豪は、
フィリップ殿下(エリザベス女王の夫)をナチと呼び、
暗殺に関わり隠蔽工作に関与したとして、ブレア元首相を始めCIAに至るまで非難しているらしい。

この結論によって一件落着となるのか、はたまた第2幕が始まるのか?


今週、このニュースを聞き、今さらと驚きつつも、
DVD「ダイアナ妃の小説家」を借りていたことを思い出し、
ついでにDVD「悲劇のプリンセス ダイアナ」を見て、
昨年映画館で見てずっと書こうと思っていた「クイーン」を書くことにしました。

昨年ヘレン・ミレンがアカデミー主演女優賞賞を始め、多くの賞を獲得した映画です。

* QUEEN * QUEEN * QUEEN * QUEEN * QUEEN *

     クイーン  THE QUEEN   2006

* QUEEN * QUEEN * QUEEN * QUEEN * QUEEN *

世界中が驚いたダイアナ元妃事故死の後、揺れ動くイギリス王室の1週間を描く、フィクションです。
実在の人物が登場し、実際に起こった事故後をテーマにした映画ということで、
一体どのように描かれているのかと、ワイドショーを見るような野次馬的好奇心で
映画館へ足を運びました。

良くぞここまで、と言うのが正直な感想。
日本の皇室と違い、
テレビ番組でそっくり人形を使いロイヤルファミリーのパロディーなんかを作ってしまうほどのお国柄。
現女王の叔父ウインザー公エドワード8世とアメリカ人シンプソン夫人との「王冠を賭けた恋」以来、
離婚だなんだとスキャンダル報道の多い英国王室にあっても、
離婚前も離婚後もダイアナ元妃は台風の目のような存在だったのでしょう。
たとえ皇太子とカミラとの関係が発端であったにしても・・・。


   
女王を筆頭に、チャールズ皇太子、ブレア首相など、演じる俳優のそっくりさんぶりに、
ややもするとドキュメンタリーかと混同してしまいそうなほど。
ヘレン・ミレンは服装・髪型は勿論のこと、歩き方、しゃべり方までそっくりで、
途中エリザベス女王のお顔って?と思い出せないほどのなりきりぶり

脚本家は王室に近い筋からの情報を綿密に調査したらしいけれど、
本当にその場にいたかのようなストーリーに驚かされる。
アカデミー賞受賞後、女王が祝意を表されたってことは、
ご覧になって内容に御不満は無かったということですよね。


冒頭の女王と肖像画家の会話が面白い。
「一度でいいから投票して自分の意見を示したい」と言う女王に、
「お気の毒とは思いません。選挙権が無くても、この国は陛下のものです」と言う画家。
「せめてもの慰めね」と笑う女王の態度で、労働党のブレアに不満があることがわかる。
1952年26歳で即位して以来、一番変化の激しい時代に55年間在位してらっしゃるのね~。
在位直後の首相は、かのチャーチル。


1997年8月31日、ダイアナ元妃のパリでの死亡が英国王室存亡の危機になろうとは
思いもよらなかったことでしょう。

ここから王室、ブレア首相、マスコミ、一般国民の4つの動きが緊張感を持って描かれる。

もはや王室の一員ではないダイアナを、従来のしきたりに従って静観しようとする王室。
ダイアナ元妃を「国民のプリンセス」と評し、国民感情を読み、時代遅れの王室に助言を続けるブレア首相。
事故のきっかけがパパラッチであったことによる国民からの非難をかわすために、王室の態度が冷たいと書き立てるマスコミ。
「国民のプリンセス」を失った悲しみ・怒りをマスコミにあおられ王室に向ける国民。

本当に女王にとっては悪夢のような1週間だったと言っても過言ではないでしょう。
時代の流れを全く感じていない皇太后と
「2日もすれば収まるさ、先に寝るよ」と言う軽~いフィリップ殿下。
徐々に、うすうす今までと違う何かを感じる女王。
このままではまずいと感じつつも母である女王に何も言えず、ブレアに近づき保身に走るチャールズ皇太子。

10年前の当時、45年の在位期間、植民地の独立、英国病と言われた経済不振、
アイルランド問題など、数々の危機を乗り超えてこられたわけだけれど、
女王の肩にのしかかる責任の重さと孤独は、とんでもないものだなぁと感じずにはいられない。
    

それにしても、母を亡くした悲しみにある王子達を慰める為に鹿狩りって、えぇ~???
これは慰めになるんかいな???
この状況で動物を殺すなんて、理解に苦しみます!
ハンティングは英国貴族のスポーツであり、たしなみなのかもしれないけれど、
この状況で気晴らしにはならんでしょう。

文化の違いか、はたまた庶民にやんごとなき方々の発想はわからんということか?
女王は「銃はよくない。写真にでも撮られたら…」と心配しておられたけれど。


当時71歳の女王は、自分で運転もされるし、携帯電話も使いこなしていらっしゃる。
車の整備も御存知ってすごいなぁ。

大鹿が猟師に追われ撃たれたことを知り、「苦しまなかったことを祈る」と言う女王。
この1週間、マスコミと国民に攻め立てられている自らの姿を大鹿に重ねている。

  

王室存続を考えれば変わらなくてはならないと説得するブレア首相は43歳にして就任したばかり。
親子ほど年の違う二人の状況は、立場は違えどよく似ている。
頭が固く旧態然とした母や夫に囲まれ悩み、ブレアの助言を受け入れる女王と、
王室なんて必要ないといわんばかりの妻やスタッフに囲まれつつ、女王は大した方だと言うブレア。
     
声明発表、半旗を掲げるなど、行動を起こすタイミングって重要ですね。
国民感情を理解できなくなったからには国家元首を辞める時か?と悩んだ末
これ以上ダイアナを無視することは得策ではないと判断し、行動を起こす決心をした女王。
    
声明や反旗のタイミングは逸したが、TV生放送で国民に語りかけるよう進言するブレア。
危機管理能力って、こういう時どう動くかで問われるのですね。
日本の政治家に欠けているのは、思い切った決断でしょうか?

今の時代、王室を維持するのも楽じゃない。
王室といえど、国民を無視することは出来ません。
しきたりを曲げ、プライドを捨て、前例を破って国民に歩み寄らなければ存続が危ぶまれる。

最後の、女王とブレア首相の会話もいいなぁ。
この一件を乗り越えたことで、お二人に信頼関係が生まれ、
よそよそしかった女王がブレアを散歩に誘う。

「これからもサポートさせていただきます」と言うブレアに、
「僭越です。助言は私の役目です」ときっぱり。
「新聞で叩かれる日が来ると思いますか?」と人気絶頂のブレアに問い、
「ある日突然、予告も無くそんな日が来るのです」と言うお言葉通り、
この一件で人気を博したブレアが10年経って辞任に追い込まれたのは皮肉です。

それにしても、何故ダイアナ元妃はこんなに人気があったのでしょう?
映画の中でチャールズ皇太子が言う、
「ダイアナが見せる弱さや過ちが大衆を引き付けるのです」がその答えなのでしょうか?
マーガレット王女の電話での言葉として
「ダイアナは生きてても死んでも厄介だ」というのがやはり王室の本音だったのでしょうね?

あくまでフィクション、どこまでが本当なのかはわからないけれど、
「全人生を神と国民に捧げる」と誓い、
「duty first, self second.務めが第一、自分は二の次」と毅然とおっしゃる女王は、
さすが長年の在位を乗り越えてこられた品格と威厳に満ちて、ブレアならずとも素晴らしい方だと賞賛を贈るでしょう。

まさに「クイーン」は、エリザベス女王のための映画でした。






***** 今週 見た 映画 *****

 4月 9日 「モンゴル」  浅野忠信主演、アカデミー外国語映画賞受賞作品

 4月10日 「ダイアナ妃の小説家」 2002 DVD ベストセラー「ダイアナ妃の真実」出版の物語

 4月11日 「悲劇のプリンセス ダイアナ」 2006 DVD ダイアナの死因を検証し事故と結論

          
 

ノーカントリー

2008-04-04 | 映画 な行
アカデミー賞をはじめ、様々な賞を獲得したこの作品。
見に行かなくっちゃ~と思いつつ、
バイオレンスと殺し屋さんを強調した前宣伝と、
公開当初旅行していたこともあって行きそびれておりました。

!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?

ノーカントリー  NO COUNTRY FOR OLD MEN   2008

?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!

      

見渡す限り乾燥した荒野、
荒涼たるテキサス、
これほどまでに音楽がないと、
風の流れる音さえこれから始まるドラマを予感させる効果音になる。
全く音楽のない映画って初めてだと思うけれど、まるで現場にいるかのような臨場感がある。


時代は1980年代、
アメリカ経済は戦後最悪、高インフレと高失業、
レーガン政権は行政サービスや社会保障を民間に開放しできるだけ削減、効率を優先させる「小さな政府」の立場を取り、国家によるサービスの縮小と、大幅な規制緩和、市場原理主義の重視を行なった。
堤未果著「ルポ 貧困大国アメリカ」を読んだが、この頃から現在に至る格差の増大が始まったらしい。

ベトナム戦争を境にアメリカは変わった。
絵に描いたような現実味のないホームドラマや明るく甘い恋愛映画が影をひそめ、
麻薬・暴力・性が露骨に描かれ、言葉も汚くなっていく。
社会構造、家族形態、犯罪さえも複雑で残忍なものへと変わっていく。


     
モスはベトナム帰還兵、かなりサバイバルに慣れている。
ハンティング中、麻薬取引に失敗した密輸取引業者同士の銃撃が終わった後の壮絶な場面に遭遇。
普通なら恐ろしくなって、即警察に通報するでしょうに・・・
金がないってことは逃げた奴がいる→血痕から手負いと判断→炎天下木陰にいるはず
という推理で逃げた男を発見、200万ドルの入ったスーツケースを持ち逃げする。
この人、ただ者じゃ~ありません。
普通のおっちゃんにこんなことは出来ません。

届け出たら1割もらえたかも・・・アメリカにそんな制度はあるのかいな?
欲張らないでせめて10万ドル位にしておいたら良かったのに・・・
現場で水をくれと言っていた瀕死の男に、仏心を起こして水を運んでやったのが2つ目の失敗。
もし行かなければまんまとお金を手に入れられたかも。
発信機ったって、ある程度近寄らないと作動しないやつですもんね。

そんな彼の選択で、彼を取り巻く人々の人生が変わっていく。

「一つの発見が人生を変えることもあり、たった一つの失敗が人生をだめにすることもある。」

密輸組織が追跡に使うわんこの犬種は「ドゴ・アルヘンティーノ」でしょうか。
すんごい面構えで、「鉄砲いらずの猟犬」の異名をとる猪狩りなんかに使われるアルゼンチンの犬種のようです。


     
行く先々で出会う人々を無表情・無感情に殺す、殺し屋シガー。
今までどんな人生を送ってきたのかなどの情報は何もない。
彼の腕を疑い、別の殺し屋を雇った依頼主をも殺すって、一体何に突き動かされて殺人を犯すのか?
お金の為という訳でもなく、淡々と自分のルールに従って、モスを追い詰める。
武器も家畜を殺すのに使う特殊なもの。
これを見て、この武器を使う人なんていないでしょうね?怖っ!
時としてコイントスで人の命をもてあそぶ。

「人生一寸先は闇、何が起こるかわからない。」などと言われます。
彼の存在はそんな人間の存在としてのはかなさを思い知らせる死神のようなものかも。

この方結構律儀です。撃たれた血だらけのズボンを脱ぐのに、ビニールシート敷いたりなんかして・・・
殺し屋するにゃ、医学知識や技術も必要なんですね。自分で縫合してました。
病院行ったら足が付くものね。厳しい~。

そんな彼も、交差点で赤信号で突っ込んできた車にぶつかられ交通事故に遭う。
今まで真面目に生きてきた人にさえも、突然理由もなく悪夢のような出来事を起こしてきた加害者シガーでさえ、そんな悪夢の被害者になりうる。

誰にだってとんでもないことは起こりうるもんだ。
この傷(骨が飛び出してるって)も自分で何とかするのかいな?


ショーにでてくるカウボーイのような出で立ちのウッディー・ハレルソンは何だったのでしょう。
あれだけって?友情出演ってやつ?
それより、あれだけ派手にドンパチやって、近隣住人は出てこないのかしら?
怖くてカーテンの陰に隠れてるって?



保安官ベルは「昔はこんなひどい事件は起こらなかった。全く理解できない。」と嘆く。
いつの時代も、人は年をとると「昔はよかった」と懐かしむ。
年をとったという証拠かも?

     

ゴッドファーザーのビトとマイケルの違いのように、時代の変化で犯罪も変わった。
義理と人情の厚かったビトの時代、
麻薬取引が資金源になり仁義も何も無くなるマイケルの時代。


一見、モスとシガーの逃走・追跡バイオレンス劇のようで、
実は時代の変化と、簡単に変わってしまう人生の脆弱さをテーマにした映画なんじゃないでしょうか。
そんな時代の変化と人々の人生を見続け、何とかモスを救おうとする保安官ベル。
救えなかったという彼の無力感が、テキサスの荒涼とした風景と重なる。


「人間ってのは、奪われたものを取り戻そうとしてさらに失う。結局は出血を止めるしかない。」という
保安官ベルの叔父の言葉が深い。

パンフレットの隅っこに、タイトル「NO COUNTRY FOR OLD MEN」の意味を発見!
アイルランドの詩人イェイツの詩の引用で、
老いや死が避けられない現実であるということを意味しているそうです。
こういう解説がないと、詩全般に疎い私は理解に苦しみます。

原作は、ピューリッツァ賞受賞作家コーマック・マッカーシー。
含蓄のあるタイトルをお付けになります。


 
助演男優賞のハビエル・バルデムを始めて見たのはBS放送での「海を飛ぶ夢」。
不気味なオカッパ頭と言われてますが、懐かしのマッシュルームカットでは?
呼び方で随分イメージが変わりますね。

ジョス・ブローリンって始めて見たけれど、ジェームス・ブローリンの子供か?
クラーク・ゲーブルファンの私には、
「ゲーブルとロンバート」でゲーブルを演じてた人(似てない~と不満)として記憶に残っておりました。
バーバラ・ストライサンドと結婚したと知りびっくりしたのですが、そのブローリンの子供ですね。
お父さんの方がハンサム~。
ダイアン・レインの夫ですって~、またまたビックリ、


*****  今週 見た 映画  *****

4月1日  マイ・ブルーベリー・ナイツ

4月2日  ノーカントリー