映画の話でコーヒーブレイク

映画の話を中心に、TVドラマや旅行の話などを綴ります

スラムドッグ$ミリオネア

2009-04-27 | 映画 さ行
インド映画(といっても監督は英国人の英国映画)を見るのは「ムトゥ、踊るマハラジャ」以来。
1998年頃、この映画でちょっとしたインド映画ブームがあったけれど、
あれは一体なんだったんでしょう?
ハンサムとは言えないインド人男優とエキゾチックな美人女優さんの歌って踊るエンターテインメント。
確かに新鮮ではありましたが・・・?


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    スラムドッグ$ミリオネア  SLUMDOG MILLIONAIRE

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 < ストーリー >

テレビクイズ番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、
あと一問で最高金額の賞金を獲得するところまできたジャマール(デヴ・パテル)だったが、
スラム街で育った少年が正解を知るはずがないと不正を疑われ逮捕される。
何故教育も受けていないスラム育ちの青年が正解を知りえたのか?
警察の尋問に、望まないのに答えを知ることになった自分の過酷な生い立を語るジャマール。
そして彼がクイズに参加した理由が明らかになる。

このクイズのオリジナルタイトルは「Who wants to be a millionaire? 富豪になりたいのは誰だ」
なんですね。

「100万とある映画の中で、唯一無二! USAトゥデイ紙」とか
「4つ星では足りないほど。マスターピースと呼べる傑作! ニューヨーク・ポスト紙」なんて
新聞・雑誌のレビューの評判が高い上に、
アカデミー賞8部門、ゴールデングローブ賞など多数獲得とくりゃ~、期待が高まるってもんです。
映画館も満席でした。

でも正直な感想は、「なんでこの映画がこんなにうけたんだろう?」というものでした。
この不況時に、景気のいいアメリカンドリームならぬインディアンドリ~ムの実現ってのがうけたんでしょうか?

アメリカのみならず日本でも、どの感想を見ても絶賛の嵐!
なのに・・・そんな波にいま一つ私が乗り切れなかったのは何故なんだろう?

予告編でうるうるしてしまうほど涙もろい私としては
「きっと泣いちゃうよなぁ」と判断、ハンカチとティッシュを膝に置き準備万端で臨んだんだけれど・・・。

良くなかったというのじゃなくて、いい映画だけれどアカデミー賞を総なめするような映画かな?
「単なる賞賛ではない。狂おしいほどの愛を感じる!byローリング・ストーン誌」ってほどかなぁ?
ということなんです。
   

冒頭からムンバイのスラムで逞しく生きる兄弟の姿がテンポ良く描かれ、
インドのエネルギーや活力溢れる雰囲気が、カラフルな映像と音楽で迫ってくる。

子役達も家計を助ける為に働き、悪さもしたりして街中を走り回る。
その生き生きした瞳に惹きつけられる。
昨今こんな瞳の子供たちに日本で出会うことは難しい。
   
    
宗教的な暴動で母を亡くした二人は、生きるために必死で頑張る。
そんな孤児に物乞いをさせたり、歌を歌わせてを食い物にする組織の大人たち。
そんな魔の手から逃げ、二人で放浪しながら逞しく成長する。
美しい観光名所タージマハルで見よう見まねでもぐりのガイドをやったり、靴を盗んで売りさばいたり。
そんな危ない橋を渡る日々の中で、悲しい出来事を通して知りたくも無かった知識が
クイズの答えになっている。
  
兄にとっては金儲けをしてのし上がる事が、
ジャマールにとっては組織から逃げる時に助けられなかったラティカとの再開が生きる目標となる。
クイズに出場したのも、見失ったラティカがこの番組を見ていること知ったから。

監督のダニー・ボイルは、
「運命を信じ、愛を信じて突っ走れば、お金がなくても大切な何かを掴むことができる」
ことを見る者に教えてくれる映画だと語っておられます。

「 運命」が意味するところはという質問には、
「定義づけるのは難しい。撮影前は運命とは、人間を受身にさせるとして、
ネガティブに捉えているところがあったが、そうではない。
インドの人々は、運命を受け止めることで変化が生まれると考えている。
時に良いカードが配られることもあれば、悪いカードが手許に来ることもあるんだ、と。
実際、撮影で良くないことが起きても、長期的に見たら良い方向に転がったりということがあった。
理解不能ではあるが、ありのままを受け入れるということは学びました」と。
ええこと言うてんのに、あれ~、理解不能なんかいな?


ここで、何故いま一つだったのか?をもう一度考えてみると・・・

まず、この「どんなに困難で~くじけそうでも、必ず最後に愛は勝つ!
みたいな非現実的な美しすぎるラブストーリー

出来過ぎたサクセス質問の数々(こないに上手いこと知ってる問題ばっかり出えへんよ!)

そして何より、主役ジャマールを演じるデヴ・パテル君の面構えが
私にはどう見てもスラムの過酷な環境を生き抜いてきた人に見えなかったってことじゃないかな?
 二枚とも左端がジャマール君     ラティカ、きれ~い!
   
と思って調べてみたら・・・、
子役達は本当にスラム育ちらしいけれど、やっぱり彼はロンドン生まれの英国人。

映画を見て帰宅後パソコンを開いたら・・・
「ラティカの子供時代を演じた9歳の子役少女を父親が人身売買!?」のニュースが!
  上の写真の真ん中にいる子役ちゃんです。
この話、英国タブロイド誌「News of the World」が少女の父親に持ちかけた偽の引っかけ話だったそうで
ドバイの富豪が2000万ルピーで養子縁組するというもの。
一度は話に乗った父親(現在は否定)も、タブロイド誌もどっちもどっちって話だけれど、
2000万ルピーってジャマールのクイズ獲得金額じゃない?!
日本円にして約4000万円。
見事に映画にオチを付けたスキャンダルですね。

因みにオリジナルの英国でのクイズ賞金は100万ポンド!日本円にして1億3000万円だそうです。
確かに人生変わるよね~。  ファイナルアンサー!


私は最後のダンス、アリだと思いますインド映画だも~ん。

でも、インドの人たちはスラムを描くこの映画をどう評価しているんでしょうね?知りたい。


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 ***** 見た 映画 *****

 4月20日 「スラムドッグ$ミリオネア」@109シネマズMM横浜


レッドクリフ2

2009-04-21 | 映画 ら行
昨年『レッドクリフ』の公開時、
「やっぱり原作『三国志』を知らないとまずいなぁ」と、本を読もうかと思ったけれど
その分量に「無理!」と断念。
それじゃあ横山光輝氏の漫画版「三国志」があるじゃあないか
本屋さんでびっくり!漫画版でも全60巻あらら・・・
幸いなことに片付けをしていたら第1巻から8巻まで家にあるのを発見!
・・・でも8巻までいっても「赤壁の戦い」に届かず・・・
諸葛孔明の登場が12巻だし、「赤壁の戦い」は第13巻なのでした。トホホ・・・。
ブックオフで探しても無いんよこれが。みんな考えることは同じ?
1巻680円を5冊・・・映画3本観れるやん~と断念。
  
ところが、ところが、3月の三都旅行で姉の家に行ったら全巻揃っているやないですか!
歴史好きの甥っこが持ってた~

取りあえず15巻まで持ち帰り、予習
登場人物が多いなぁ~。やっと主要人物と大きな流れを把握
先週の「世界不思議発見」三国志特集~で、実際の場所も確認。
三峡ダムの影響で水位が上がって随分雰囲気変わっちゃったんだ。
横浜中華街にある『関帝廟』って劉備玄徳の義兄弟「関羽」を祭ってたのね・・・知らなんだ・・・
これってかなり恥ずかしいことかも?
中国では文といえば孔子、武といえば関羽、孔子廟は学問の神、関帝廟は商売繁盛の財神として
日本にも受け継がれているそうな。

横山光輝版15巻を読み終えて、やっとパート1をDVDにて鑑賞。
ん?こんな戦いあったっけ?

        
これで完結編パート2鑑賞の準備はOKいざ、映画館へGO

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    レ ッ ド ク リ フ  赤壁の戦い

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『三国志』は吉川英治版、横山光輝版、新しいところでは北方謙三版やゲーム版、
NHKの人形劇もあったりして(これ見逃した~『八犬伝』は見てたのに・・・)、
好きな人はメチャクチャ詳しいよね~。
かくいう漫画全巻所有の甥っ子もその一人。

私は『関帝廟』の由来も知らなかったくらいの『三国志』初心者です。
漫画を読んでいなかったら、冒頭何が起こっているのかわからんかったね。
もう人間関係もバッチリだぜ

そして水曜日レディースデーの午前中、予想に反してほぼ満席
年齢層は高く、女性もしくはリタイアされたと思しき男性が多数。
三国志ファンかな?

     

う~ん、これでいいのか? ええのんか~? 見終わって唸ってしまいました。

中国人の方々や三国志ファンの方々は、このストーリーと結末で不満はないの?
ちょこっとかじっただけのにわか三国志ファンの私でも、これは納得できへんよ。
「三国志 赤壁の戦い」ではなく、
監督ジョン・ウーの解釈によるエンターテインメント性の高い「レッドクリフ」という
別物として見れば良いのかも。 ・・・予習なんかいらんかった


もともと赤壁の戦いに劉備玄徳や三傑の「関羽、張飛、趙雲」は参加してませ~ん。
曹操に敗れ辛くも逃れた劉備が曹操軍の攻撃をかわすために、
に同盟を持ちかける。その使者として諸葛孔明を呉に派遣。
大軍で押し寄せるの曹操を前に降伏しようとしていた孫権・周瑜。
そこで「曹操のねらいはあなたの妻の小喬と姉の大喬だ」と言い、
周瑜をそして呉を曹操との戦いに引きずり出す孔明。
この周瑜と孔明との駆け引きが面白く、孔明を敵に回すと後々大変なことになると命を狙う周瑜。
殺気を感じた孔明は、赤壁での戦いの準備をすべて整えた後こっそり周瑜のもとを去り、
赤壁のあと敗走する曹操を孔明の策により劉備軍の趙雲・張飛・関羽が追う。
そんな中、かつて曹操に恩を受けた関羽が曹操軍兵士の主従の情に哀れを感じ逃がすという筋でした。

「レッドクリフ」では、劉備をはじめ三傑の影が薄く、劉備と三傑との絆とか、
三顧の礼をもって迎えた孔明との繋がりも感じられない。劉備、影薄いし・・・。

にわかファンの私が言うのもなんですが、「三国志」の面白さって「義とか仁、忠、信」、それに
相手の性格を読み、裏をかき、裏の裏まで考えたぎりぎりの知恵比べの駆け引きじゃあないのかなぁ~。
これじゃあ、孔明の知識・知略の素晴らしさもいま一つ。
でも原作通りじゃあエンターテインメントたる映画としては成り立たないってことなのかな~?

ウー監督自身、「レッドクリフ」のテーマは「勇気・友情、そして愛」。
「自分を偽らず、人を疑わず、信じぬくことが、人生を楽しくする」ということを感じてもらいたい
と言っておられますが・・・周瑜と孔明に友情ってあり?
           
    金城武演じる孔明            トニー・レオン演じる周瑜 

トニー・レオンを主役にする為、周瑜と妻との愛情物語に時間をかけ過ぎだし、
女性を活躍させる為に孫権の妹を敵陣にもぐりこませ友情?淡い恋話?みたいなことになってるし・・・
果ては周瑜の妻小喬は一人曹操軍に乗り込んで色仕掛け・・・
曹操は色香に迷って戦に負けるような馬鹿野郎じゃあないぞー。
「三国志」の登場人物の中で、中国で人気があるのは「曹操と孔明」だそうです。
曹操はただの悪者ではなく、戦さ上手でなかなかの人物ってことで人気が高いらしいです。

クライマックスの火攻めの戦闘シーンや全員参加の戦闘シーンは確かに迫力満点だけれど、
ちょっと長くないか~い?「ロード・オブ・ザ・リング」を思い出しちゃったよ。

そして何より、「勝者はいない」って、「えぇ!」そりゃアカン。黒澤明リスペクト?
何のために命を懸けて戦ったのよ?
これ天下分け目の合戦だよね!?

とまあ、不満たらたらになってしまいましたが、
この映画をきっかけに知らなかった「三国志」の世界(漫画ですが…)を知ることができました。
ジョン・ウー監督、ありがとうございます

15巻読み終っても、でもまだ四分の一・・・ 続きが気になる~。
全60巻読了まで、道は遠いなぁ~。頑張るぞ
お姉ちゃん~、着払いで送ってね


・盾を使った戦車のようなフォーメーションは面白かった~。
・金城武の孔明は爽やか~、スマート~で
・中村獅童って、どう見ても悪役のお顔よね?まぁ、海賊上がりって設定だけど・・・
・小喬役のリン・チーリンは美しい~。まさに「手弱女(たおやめ)」って感じ。



「レイダース 失われたアーク」の中でインディーが長い刀を持ったアラビア人に相対し、
「ありゃ~絶対絶命?」かと思いきや、拳銃一発で相手を倒すシーンがありました。
まさに「飛び道具」、場内は結構笑いが起こっていたけれど、何となく憤りを感じて笑えなかったです。
これって腕っぷしの力力の戦いの終焉というか
イスラエルパレスチナみたいな絶対的な力の差を感じます。
「三国志」の国取り物語は「刀と弓と知恵」の戦いだからできる
「やあやあ、我こそは・・・」式の戦さだから、80万5万でも番狂わせが期待できたんでしょうね。
鉄砲や大砲は、革命的に戦いを変えてしまいましたね~。
あっ、「矢」も飛び道具だ




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 ***** 今週 見た 映画 *****

 4月14日 「コミュニストはSEXがお上手?」DVD ドイツ映画
          タイトルはちょっと、でも・・・戦後、資本主義・社会主義体制下の
          東西ドイツにおける性をめぐる真面目な社会学レポート

        「レッドクリフ パート1」DVD

        「幸せの1ページ NIM'S ISLAND」DVD 
           ジュディー・フォスター、ジェラルド・バトラー主演
           マイケル・ダグラス主演の「ロマンシング・ストーン」お子様版  

        「マルタのやさしい刺繍」DVD スイス映画 
           田舎のおばあちゃんが保守的な村で偏見を乗り越えて昔の夢を叶える物語
           元気をもらいました。人生まだまだ捨てたもんじゃない!

 4月15日 「レッドクリフ パート2」@TOHOシネマズ海老名

「おくりびと」滝田洋二郎監督記者会見

2009-04-19 | その他
木曜日、都内某所で行われた滝田洋二郎監督の記者会見にたまたま参加することができました。
言わずと知れた、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」の監督です。
4月15日現在、観客動員5,282,805人、興行収入6,042,510,500円
上映館数179、公開30週+5日間の累計成績だそうです。
映画賞は全77冠!・・・映画祭ってそんなにあるんだ~と思った次第です。

イタリアでは来週から、フランスでは5月末から、ドイツでも公開は決定しているそうです。

           

監督を引き受けたのは
 ・スクリプトの読後感がよかったこと
 ・「人が覗きたくないと思うようなところを覗きたい」という映画監督の習性
 ・「死=暗い映画」のイメージを覆したかった
だそうです。
     
当初、納棺というネガティブなイメージのあるストーリーにどういう映画になるかわからなかったそうです。
その後、納棺の現場に立ち会った時、自分の中の何かが変わったそうです。
そこには全く音がない。
聞こえるのは、衣擦れの音、水を絞る音、息を殺した息づかいのみ。
最初は怖かったが不思議な空気に驚いたそうです。
静かな、不思議な空気の中で行われる送るという儀式、
残された人たちは泣いていたかと思うと突然笑い出したりと、多様な感情が溢れる中、
死んで尚、人は何かを残していくんだな」と感じたそうです。

山形の美しい自然の中、寂れた風呂屋や映画館という滅びゆくものに美を感じ、
山形がこの映画のロケ地として最適だと感じたそうです。

映画完成から公開まで、実に13ヶ月かかったそうでかなりの苛立ちを感じたそうです。
「死を扱う」なんてとんでもないというところからスタートし、宣伝も難しく、
地道な試写会活動を続ける中、映画に賛同してくれる人が増え、
「モントリオール映画祭」でグランプリを取ったことでブレイク、
アカデミー受賞後は動員数が倍増したそうです。
宣伝担当の方々の熱意が凄かったと。まさに、奇跡の映画だと。
映画はいきものです。初めも終わりもわからない。だから面白い。」ともおっしゃいました。

アカデミー賞受賞については、
皆さんもうないだろうと思っているだろうが心の内に「I'LL BE BACK.」を秘めて
戻るための計画を画策中とのこと。
今回の受賞で「自分が信じたものをやればいいんだな」と感じ、
映画に夢中になれるきっかけになったそうです。
そしてこの映画の受賞をきっかけに、若い人たちにもっと映画を見に劇場に足を運んでもらいたいと。

「何故海外で受けいれられたと思われますか」という質問に対しては、
どんな世界にも、どんな時代にもある「悲しみ・怒り・喜び」という根源的な感情が
共感されたのではないかと。


「生きてゆくことは滑稽だ。真面目にやればやるほど、可笑しくてかわいい」と。
「誰しも自分のことは置いておいて、他人のちょっとした不幸は楽しいという感情も持っている。
そしてそんな感情を持っていることで悩むのだ。それが可笑しい」と。

「死生観」について問われた時には、
一生わからないのではないかと、だから映画に撮りたいと。
50代になり、「死」に遭遇する場面が増え、死を題材に扱う映画に興味を持った。
いずれ死ぬことはわかっているが触れたくないと誰しも思っている、それに触れたいと。

グローバリゼーションについては、
現在多くの日本の若者がハリウッドで働いているが、
どこにいるかではなく、何であれ自分が何をやりたいと思うかだ。
やりたいという意志、自分の気持ちを大切にすればいい。
そしてどこにいようが日本人であり続けることだ
と結ばれました。

約2時間の会見は、
ウイットとユーモア溢れる穏やかな語り口から、
監督の映画に対する篤い思いや、真摯な人となりが伝わってくる楽しい時間となりました。

フロスト×ニクソン

2009-04-12 | 映画 は行
久々の映画館
初めて「ららぽーと横浜」内にあるTOHOシネマズ横浜へ。
何故わざわざJR鴨居駅下車でららぽーとまで足を運んだかというと・・・、
本作「フロスト×ニクソン」が見たかったからなんです。
アカデミー賞にもノミネートされた話題作にもかかわらず、何故か神奈川県では川崎のチネチッタと2館のみの公開。
チネチッタは夕方以降のみ、ららぽーとも昼間は12:50からの一回のみ。後は夕方と夜の2回。
こういう政治ものは集客が難しいってことなのでしょうか?

どうせそこまで行くなら2本見ちゃえー!ってことで、もう1本は「ザ・バンク」
こちらも重厚な社会派ドラマです。
「ザ・バンク」が体を張った命がけの銃撃戦なら、
「フロスト×ニクソン」は知力を駆使し社会的な存在を賭けた心理戦。
「ザ・バンク」終了後10分、ホットドッグでお腹を満たして本作へ。
見応えた~っぷり!


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    フロスト × ニクソン   FROST × NIXON

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ウォーターゲート事件の責任をとってニクソン大統領が辞任したのは1974年。
いやぁ~、盗聴事件で大統領が止めるって大変な騒ぎだったけれど、
当時の私はノンポリ以前、何だか大変なことが起ったてことぐらいでよくわかっておりませんでした。
ましてや、辞任後英国人テレビ司会者による一対一のインタビューがテレビで放映され、
史上最高の視聴率を取っていたなんて知る由もありません。
コメディアンから司会者に転進ってことで軽く扱われているけれど、
ニクソンが辞任後ホワイトハウスからヘリに乗り込む光景を世界中で4億人が目撃したと知り
単独インタビューを思いついたフロストって人もただ者じゃぁありません。

「ニクソン大統領」といえば、盗聴スキャンダルで在職中に辞任した唯一の大統領ということで、
ダークなイメージしかなかったので、まずどのような政治家だったのかを知る上で
オリバー・ストーン監督、アンソニー・ホプキンス主演の「ニクソン」を見て、すこしばかり
調べてみました。
        

クエーカー教徒の家庭に育ち、兄と弟を病気で亡くしている。
ハーバートやイエールの奨学金が貰えたにもかかわらず生活費がまかなえず地元の大学に行き、
成績優秀でデューク大学大学院から全額奨学金を得て進学。
下院議員時代には赤狩りで有名なマッカーシーと共に非米活動委員会のメンバーとして名を馳せた。
39歳でアイゼンハワーの副大統領を2期務め、1960年の大統領選挙でケネディーに破れ、
カリフォルニア知事選に敗れた後、数年間政界から離れるも
1968年大統領選挙に勝利し第37代大統領に就任。
ヘンリー・キッシンジャーを補佐官に、
東側との宥和政策を展開し、中国との関係正常化、ベトナムからの完全撤退、環境保護局設置
その他、ドルと金との交換停止宣言など、色々やっておられました。

政治の世界、一寸先は闇とやら。
ウオーターゲート事件の判断ミスがなければ良い意味で歴史に名を残す大統領になれたでしょうに・・・。
キャンダルのイメージが強かったとはいえ、わたくしあまりに知らなさ過ぎました。反省。

ストーン監督の「ニクソン」ではかなり屈折した人で、
ケネディーと比較しては「自分は人から好かれない」と苛立つ姿が描かれていました。
若々しく、見た目も良い(私はカッコいいとは思わんけれど・・・)戦争の英雄(映画まであったし)ケネディーと、
陰気で人好きのしない4歳年上のニクソン。
テレビ討論のビジュアルで負けたと言われ、
以降政治家はスーツやネクタイ、ヘアメイクに気を使うようになったとか。
野球界ならさしずめ「長嶋茂雄氏と野村克哉氏」、「ヒマワリと月見草」ってところでしょうか?

晩年はレーガン大統領時代、影からアメリカ外交を支えられたそうです。
にもかかわらず、通常大統領経験者の死去の際に行われる国葬は行われなかったというのは
ちょっとお気の毒な気がします。

アメリカでは「謝罪をするかどうか」が大きな意味を持つらしく、
あれほどのセックススキャンダルを起こしたにもかかわらず、
クリントンは「不適切な関係」を認め公式に謝罪したということで辞任を免れたようです。
ニクソンも謝っておれば・・・?


 < ストーリー >

1997年、英国の人気トーク番組の司会者デビッド・フロストが、
ウォーターゲート事件で辞職した元米国大統領リチャード・ニクソンにインタビューを申し込む。
フロストはアメリカ進出を、ニクソンは汚名返上と政界復帰を賭けて4回のインタビューに臨むが……。

                  
脚本は「クイーン」や「ラスト・キング・オブ・スコットランド」のピーター・モーガン。
「クイーン」の時も感じたけれど、まるでその現場にいたんじゃないかと思わせるような
臨場感・緊迫感にすっかり引き込まれてしまいます。

しかし、よくまあこんなインタビューを思いついて実行したもんです。
アメリカのジャーナリストこそやるべきだったんじゃないのかなぁ?
3大ネットワークからもスポンサーからも冷たくあしらわれ、
本当はインタビュー対策に集中したかったろうに、金策に奔走するフロスト。
片や破格の出演料を要求し、あわよくば契約金だけもらって企画が流れるかもとほくそ笑むニクソン側。
学生時代から討論会で連続優勝というニクソンにフロストが敵う訳もなく、老獪なニクソンに翻弄される。
映画の4分の3は敗色濃いフロストの焦りと余裕のニクソンを描き、判官びいきの観客としては
フロスト頑張れ!と応援したくなる。ニクソンは完全にイメージ通りの悪役です。
そんな中、最終日の前日にかかるニクソンからの電話というのは実際にはなくフィクションだそうでが、
このシーンが、コンプレックスに悩まされ続けた屈折したニクソンの実像を描いている気がします。

4日目の結末を見て思い出したのは「ア・ヒュー・グッドメン」。
裁判でトム・クルーズの尋問に乗せられた将軍ジャック・ニコルソンが
調子に乗って自ら犯した罪を認めてしまうシーンです。
「力のある自分には法を超えた力が認められる」といった意味の
驚くべき傲満な台詞が口をついて出てしまうのです。

パンフレットで町山智浩氏がニクソンの伝記を書いた英国保守党議員の発言を紹介しておられます。
ニクソンの謝罪を引き出したのはフロストの力量ではなく、
ウェーターゲート裁判や病気で費用のかさんだニクソンの経済的な理由と
「ここで謝罪する機会を逃すと、歴史はあなたを赦さないでしょう」と諭されたからだというのです。
実際のテレビ討論の映像ではどんな雰囲気の結末だったのでしょうか?
前もって謝罪する気持ちがあったというなら、映画の雰囲気とは違ったものだったでしょう。
これ、再放送とかしないのでしょうかね?見てみたいなぁ!

元々は舞台劇。
ロンドンで、そしてブロードウェイで映画と同じ配役で上演され、
インタビューの合間に駆け寄る参謀達がボクシングのセコンドのようだったっていうんだから、
これも見てみたい!
  

マイケル・シーンは「クイーン」のブレア首相に続いて、実在の人物を違和感なく演じられる俳優さん。
凄くは見えないけれど、実は凄~い俳優さんじゃあないでしょうか。
決して本人に似ているわけじゃぁないのにね。

フランク・ランジュラはかつて繊細な二枚目吸血鬼を演っておられたのを思い出しました。
こちらも似ているわけではないのに、全体から醸し出す雰囲気がとってもニクソンしてます。 
    
      ホワイトハウスを去る時のニクソンにそっくり!
             
     眼鏡がミスター・ダーシーのマクファデン。横顔はカッコいいけど・・・

プロデューサーのジョン・バートを演じるマシュー・マクファディンが、
「プライドと偏見」のミスター・ダーシーと同一人物とは驚きました。
「え~、この人がダーシー?」と不満気味に見始めたけれど、途中から主人公のエリザベス共々、
すっかりマシューダーシーに魅せられました。
本作ではそんな魅力を封印?したのか、地味に裏方に徹しておられました。

楽園か荒野かーー人生を賭けた討論バトル!
もっと上映館を増やしてもいいんじゃないのかなぁ~。


*** おまけ ***
フロストのその後




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 ***** 今週 見た 映画 *****

 4月 6日 「ニクソン」DVD オリバー・ストーン監督、アンソニー・ホプキンス主演

 4月 7日 「ザ・バンク THE INTERNATIONAL」@TOHOシネマズららぽーと横浜

        「フロスト×ニクソン」@TOHOシネマズららぽーと横浜 

  

イエスマン  ”YES”は人生のパスワード

2009-04-07 | 映画 あ行
春休みでファーストデイ割引の日とくれば、
映画館は子供でごった返しているんだろうなぁ~と少々恐れつつ、
でもやっぱり割引の日は外せない!
というわけで、「魔法にかけられて」以来のディズニー映画「ベットタイム・ストーリー」へ。
やっぱり、とんでもなく混んでました
予告編を見るかぎり「魔法にかけられて」や「ナイトミュージアム」のような大人が見ても
十分楽しめる映画をイメージしていたんだけれど・・・残念ながら子供向けのドタバタでした。
アダム・サンドラーはやっぱり苦手やなぁ。
でも「LAコンフィデンシャル」や「メメント」のガイ・ピアースがこんなドタバタ映画の
ゴマすり男で最後はバカにされちゃう役やっちゃっていいのかな~?


NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO 

   イエスマン   ”YES"は人生のパスワード

YES YES YES YES YES YES YES YES YES YES YES 

コメディー系の俳優さん、結構好きです。
トム・ハンクス(昔はコメディー系だったのに今やアカデミー賞2回連続受賞の大物になっちゃって・・・)
を始め、スティーブ・カレルにベン・スティラー、オーウェン・ウイルソン等々。
マスク以来ジム・キャリーも好きなんです。
強烈な個性とハイテンションな顔の演技で、今までにないコメディアンのスタイルを確立。
「マスク」は衝撃的でした。
最近ケーブルTVのムービープラスで「マスク」を見直して、キャメロン・ディアスの顔が随分変わっているのにビックリ。
整形とかじゃあなくて、今が老けたとかいうのじゃあなくて、当時は顔が若くてキュート!

         
ジム・キャリーはといえば、いやぁ~、人のことは言えんけれど、歳とったなぁ~
前半、「NO」を連発する暗~い主人公を演じている時は特にそう感じました。
友人や恋人を演じる俳優さんたちが若いから余計に年齢を感じたのかもしれません。
中盤「YES」に目覚めてからは、本領発揮!元気でおかしなジムでした。
シリアスなドラマを目指してコメディーからの脱却を図っているようで、
「トゥルーマン・ショー」「マジェスティック」や「エターナルサンシャイン」のジムも良かったけれど、
「マスク」や「ブルース・オールマイティー」系の印象が強すぎて苦労なさっている気がします。

 < ストーリー >
銀行で融資担当のカール(ジム・キャリー)は、仕事でもプライベートでも「ノー」を連発。
電話にも出ず、親友の婚約パーティーをもすっぽかしてしまう。
ひょんなことから自己啓発セミナーに出席し、
「どんな事に対しても『イエス』と答えることが、意味のある人生を送るための唯一のルール」と教えられる。
それ以来どんなことにも「イエス」と言うルールを自分に課しひどい目にもあうが、
その結果知り合ったアリソン(ゾーイー・デシャネル)から好意を持たれ、次第に運気が上っていくが…


とんでもない設定だなぁと思ったけれど、実はこの話、
すべてに「イエス」と言ったらどうなるかを実際に試したBBCラジオディレクターの実話に基いているそうな。(ここシャレですよん

しかし何にでもYESって・・・かなり危険。
実際、車を買わされたり、おかしなバンドのライブに行ったり、週末シンガポール旅行
を決行したらしい。

主人公は、バンジー・ジャンプに挑戦し、ギターを習い、韓国語を習ったり大忙し。
USJのジェットコースターでびびってるようじゃあ、絶対バンジーにYESは言えません。
でも空港で行き先を決めず一番最初に取れるチケットで旅行するって、ワクワク~
こういうの、私はアリです。

人生って、小さなことから大きなことまで選択の繰り返し。
「何を食べる?肉?魚?」「出かける?出かけない?」「右か左?」・・・
「出かけたら疲れる~」とか「面倒くさい~」って言っていたらな~んにも始まらない。
最近は子供まで、若いみそらで何かというと「面倒くさい~」って言いますもんね。

決まりきった日常に一石を投じて・・・ってそんな大層なことじゃなくても、
ちょっと波風を立てるってワクワクするじゃぁないですか?
同じことの繰り返しじゃつまらない。
まぁ、知らない人に「車に乗せて」といわれてYESとは答えられないけれど・・・
「自己啓発セミナー」なんてとっても怪しげだし、あの雰囲気はアメリカのTV伝道か、新興宗教
みたいだけれど、「信じるものは救われる~」「イワシの頭も信心から」
ワクワク感が気持ちを高揚させ、前向きに良い方に転がるってあると思うなぁ。

セミナーの主催者を演じるはテレンス・スタンプ。
最近「ゲット・スマート」や「ウォンテッド」「ワルキューレ」と出演作が続いています。
「あんたのせいでこんな目にあった」というカールに、
「何でも肯定するのは最初は身体を慣らすため、次第に思考が前向きになる」という台詞には
説得力があります。
    
                            勿論左がアリスン
アリソンが所属するバンドの名前は「ミュンヒハウゼン症候群」何ともすごい名前を付けたもんです。
ウィキペディアによると、
『自分に周囲の関心を引き寄せるために虚偽の話をしたり、自らの体を傷付けたり、
病気を装ったりする症例の事。ビュルガーの著作から「ほら吹き男爵」の異名を持った
ドイツ貴族・ミュンヒハウゼン男爵(実在)の名前から付けられている。』とあります。
今年1月、自分の子供に腐敗液の入った点滴をうって殺してしまった女性のニュースで
「代理ミュンヒハウゼン症候群」という言葉を聞いたばかりだったので妙に頭に残りました。
アリソンを演じているゾーイ・デシャネルがキュートでチャーミング!

カールのチャレンジを不審に思ったFBIの取調べや
上司の「ハリーポター」「300」のコスプレパーティーなど笑いも満載、
そして前向きな元気をもらえる映画でした
       

それにしてもこの映画、もっと宣伝してもいいんじゃないかなぁ?
テレビCMもあっという間に終っちゃったし、映画館での扱いも小さいなぁ



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 ***** 今週 見た 映画 *****

 4月 1日 「ベッドタイム・ストーリー」@TOHOシネマズ海老名

 4月 2日 「クワイエットルームへようこそ」DVD 内田有紀、宮藤官九郎主演の日本映画

 4月 3日 「無ケーカクの命中男」DVD 「40歳の童貞男」の監督だからって日本語タイトルが悪すぎる