前々から気になっていた本作。
福島原発事故以降、日々放射線量が報道され、放射線量を測るスマホのアプリまで登場する中、
放射線が人体にどのような影響を及ぼすのか?非常に気になるところです。
1986年4月26日、旧ソ連、現ウクライナのチェルノブイリで起こった原子力発電所事故。
四半世紀が過ぎた今を追うドキュメンタリーです。
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チェルノブイリ ハート
カウントダウンZERO (COUNTDOWN TO ZERO)
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本作はマリアン・デレオ監督の2本の短編ドキュメンタリー「チェルノブイリハート」と
「ホワイトホース」の2部構成。
この美人の女性監督さんがどういう方なのか? 全く情報がないんです。
これ以外にも映画を撮っておられるのか? 反原発の活動をしておられるのか?
「
チェルノブイリ ハート」 2003年制作。
2004年にアカデミー短編ドキュメンタリー映画賞を受賞した作品です。
「チェルノブイリハート」というのは、放射線の影響で、生まれつき心臓の心房や心室に穴の開いた
ウクライナの多くの子供たちの心臓病の病名です。
監督はウクライナの小児病院や孤児院を訪れ、子どもたちの健康への影響を映し出します。
身体の障害や知的障害など、子供たちの障害の映像は衝撃的です。
病院で働く医者や看護師によれば、障害を持った子供たちは増えているとのこと。
寝たきりの子供を起こそうとする年配の看護師さんに「もっと優しく扱ってあげて」と頼む監督
チェルノブイリハートは手術でよくなるそうなんです。
ただ患者が多すぎること、治療に使うゴアテックスのシートが高額であることで、手術で助けられる
子供の数は限られているのです。
シートは1枚300ドル。それくらいなら…いえいえ、ウクライナのお医者さんの月収の3倍だそうで
アメリカ人のお医者さんがボランティアで手術をしているのでした。
アメリカではごく普通の手術なのに…っと、ウクライナの現状を残念そうに話す。
「
ホワイトホース」 2008年制作。
事故当時原発近くのピリピャチ市に住んでいた青年が、10歳まで住んでいたアパートを
20年ぶりに訪れるのに密着した映像です。
アパートから原発建屋が見えるほど近い所で、事故3日後何も持たず強制移住となり、ゲートで
兵士(?)の検問があるものの、町の中は時が止まったまま当時の姿を留めていたようです。
自宅のアパートに入り、自分の部屋の壁に貼った「白馬の写真」を愛おしそうに撫でる。
「ちょっとこの部屋で独りにしてくれないか?」と撮影クルーを外に出し暫しの沈黙。
「あの事故さえなければ・・・」という言葉に、この20年の人生の過酷さ、
事故がなければ違う人生を歩んでいたのにという無念さが伝わってきます。
彼は映画撮影後まもなく心臓病で亡くなったとのテロップに、やりきれない思いがしました。
居住禁止区域近くに今も住む家族。放射線量が高いと聞いても「今も元気だし、他に行くとこなんて
ないよ。住み慣れた土地を離れる気はないよ」と陽気に話す爺ちゃん、婆ちゃん。
「お孫さんはこの土地を一日も早く出た方がいい」と話す監督。
人っ子ひとりいない「死の街」ピリピャチ。
放射性物質が安全レベルになるには900年かかるとか。→ウィキぺディア「
ピりピャチ」より
福島、いえ25年後の日本はどうなっているんでしょう?
毎日東京電力の電気のお世話になっている身ではありますが、原発はもうアカン!と言いたい。
先月「カウントダウンZERO」という核兵器についてのドキュメンタリーを観ましたが、
いま世界には23355個の核爆弾があるそうな。
ソ連崩壊後、生活に困った核施設労働者が高濃縮ウラン(イエローケーキ)をこっそり持ち出して
売り飛ばそうとしていた話や、テロリストが核兵器を手に入れたがっている話、
戦闘機から核兵器が落っこちて危機一髪の話、沖縄の海にいまも一個沈んだままなど
核兵器にまつわる「知らない方が幸せ」な恐ろしい話が次々紹介されていました。
そしてオッペンハイマーの「とんでもないもん作ってしもた~」みたいな顔のアップ。
核抑止力という論理のもと、核保有に走った各国元首のインタビュー。
最後に核兵器は必要か?の質問に、誰もが「NO」と答える。
核兵器は言うに及ばず、平和利用でも、廃棄物処理の問題やひと度事故が起こったら・・・
何十年経っても人体に影響を及ぼし続けるウクライナの子供たちの状況を知ると、
「人類はとんでもないもんに手を染めてしまったんやなぁ~」という思いを強くします。
一体、地球上には目に見えない放射性物質がどれほど放出されてしまっているんでしょう?
核実験も数知れず、廃棄物漏洩、劣化ウラン弾使用・・・
「カウントダウンZERO」で1961年国連でのJ・F・ケネディーのスピーチが紹介されていました。
「地球のすべての住人は、いずれこの星が居住に適さなくなってしまう可能性に思いを馳せねばならない。
老若男女すべての人間は、核という
ダモクレスの剣の下で暮らしている。
いまにも切れそうな細い糸でつるされたその剣は、
事故や誤算、若しくは狂気により、
いつ切れても不思議ではない。核兵器が我々を滅ぼす前に、我々は破棄しなければならない」
Today, every inhabitant of this planet must contemplate the day when this planet may no longer be habitable. Every man, woman and child lives under a nuclear
sword of Damocles, hanging by the slenderest of threads, capable of being cut at any moment
by accident or miscalculation or by madness. The weapons of war must be abolished before they abolish us.
*ダモクレスの剣は古代ギリシャの故事です。
ウィキ参照
「今 そこにある 地球の危機」です。
いやぁ~、50年も前にケネディーが言ってるやん!
なんでキューバ危機の「13デイズ」で止めとかへんかったんかなぁ~?
みんなで渡っても、怖いもんは怖い。
破棄するどころか、造り続けて23355個の核爆弾に500基あまりの原発ですか
どんだけ賢い人たちが頑張ったって、人間にミスは付き物やし、これを手に入れて世間を騒がそうなんて
輩もいるし、天災にもみまわれます。
こんなことが起こるなんて知らんかった~という無知にも責任があるとは思い反省もしていますが、
絶対安全なんて、よう言うたわ。まだ言うか?(書きながら気持ちが昂ってきてます)
かなり遅きに喫した感はあるけれど、今からでも遅うない。
東電のマスコット「でんこちゃん」やないけれど「電気を大切にね!」節電に努めましょう。
研究者の皆さん、原子力に頼らない再生可能エネルギーの開発、頑張ってください。
このドキュメンタリー、多くの人に見てもらうためにNHKで地上波放映しないかなぁ。
***** 観た 映画 *****
10月 5日 「チェルノブイリ・ハート」 @横浜ニューテアトル
「この愛のために撃て」 @横浜ニューテアトル
「ヒマラヤ 運命の山」 @横浜ニューテアトル ドイツ映画
ヒマラヤ山脈ナンガ・パルバート 1970年人類初登攀の真実