映画の話でコーヒーブレイク

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幸せの経済学  The Economics of Happiness

2011-07-10 | ドキュメンタリー
前回の「ヤバイ経済学」と続けて見たもう一本の経済学映画です。
こちらは真面目に(「ヤバイ経済学」が不真面目と言っているわけではないですよ)真っ向から
世界経済の来し方行く末に提言を投げかけています。

幸せってなんだっけ?」と聞かれて・・・○○ですと明確に答えられる人はなかなかいないでしょう。

今年5月発表されたOECDの幸福度調査では、11の項目別に数値化し「よりよい暮らし指標」を
出しています。日本は34か国中19位、トップ3はオーストラリア、カナダ、スウェーデン。
日本は「安全」は1位 「教育」は4位ですが、
「生活満足度」「ワークライフバランス」の評価が低いです。
職場まで長時間満員電車に揺られ、残業があたりまえという現実を踏まえれば
ワークライフバランスの悪さは已むなしかな。
「生活満足度」が低いって、満足するかしないかは主観的なものだからねぇ。
情報量の多寡も「満足度」に影響するでしょう。他所の情報を知らないほうが幸せってこともある。

ブータン王国の国民が考えるワークライフバランスは「8時間働き、8時間余暇を楽しみ、8時間寝る」
だそうで、「労働時間を増やせば収入は増えるかもしれないが、ストレスは増し、楽しみは減る。
それで幸せですか?」って・・・う~ん、痛いなぁ。

しかし、どの位「幸せ」かって・・・人に決めてもらうものじゃないし、他と比べて競うってこと自体
おかしなことだけれど、○○よりはマシってことで安心するのかなぁ?



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          幸せの経済学  Economics of happiness

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映画の中である学者が紹介するエピソード。
アメリカの世論調査で「幸福」と答えた人の割合は、1956年をピークに徐々に下がっている。
当時に比べ、物は3倍に増え、物質的な豊かさは十分に満たされているはずなのに、
人びとの幸福感は年々減少を続けていると。

1956年とは、プレスリーの「ハート・ブレイク・ホテル」がヒット、「80日間世界一周」「王様と私」「十戒」
「戦争と平和」「愛情物語」「道」などがアカデミー各賞を獲得した年です。
ヘップバーン、ユル・ブリンナー、C・へストン、バーグマンらが活躍した良き時代。
因みに、大統領はドワイト・アイゼンハワーで、ケネディの登場前です。

日本の幸福のピークはいつだったのでしょう?バブルが弾ける直前でしょうか?

          ラダックの少女
ヒマラヤの辺境ラダックは30年前まで外国人立入禁止地域として外界と隔絶された環境の中、
自然と共存する豊かなコミュニティーを築いていた。
そこに押し寄せた西洋の消費文化の波。彼らの生活は一変し、消費文化に翻弄される。

本作の監督ヘレナ・ノーバーグ・ホッジさんや映画に登場する思想家や環境活動家たちは
「物質的な豊かさ=幸せ」という定義が崩れ去った今、
「グローバルリゼーションが環境危機経済危機、ひいては人々の心の危機をも生み出している」と説く。
そんな「グローバル化では人は幸せにはなれない」とし、ローカリゼーションこそが
自然環境を守り、人々の地域コミュニティーの繋がりこそが人々を幸せにする答えだと主張しています。

GNH(国民総幸福量)なる指標を政策に役立てているブータンでは、
4人に1人が貧困なのに、2005年の国勢調査で97%が「幸せ」と答えている。
首都には職のない若者も少なからずいるけれど、物乞いやホームレスは一切いない。
貧しい人がいればみんなで助け合い、家庭・学校・職場で人と人の絆を大事にしているそうです。


そんな中、「農的生活と文化」と題した千葉大学名誉教授の古在豊樹氏の日経夕刊コラムを読みました。
映画「幸せの経済学」のメッセージが650字ほどのコラムで見事に説得力を持って語られているのです。
でも、この映画を見ていたからこそ少々難しい内容をすんなりと受け入れることができたように思います。

私が下手に纏めるより原文を読んでいただく方がよいのですが・・・・ざっくり言うと、
「文化」は農業に根ざしたローカルな風土を反映し、
  「文明」は世界標準の科学と社会制度をグローバルに発展させたもの。
  20世紀後半は「文明」が「文化」より優位な時代だった。
  しかし今、グローバル文明の行き過ぎに疑問を持ち、ローカルな文化の価値を再発見する動きがある。
  「文明」は人間主義的、「文化」は自然主義的な側面を有し、自然主義は共生・持続性を重視する。
  21世紀に望まれるのは、「自然主義的な文化」と「人間主義的な文明」の統合を目指す社会の構築だ。
  文化基盤を支えてきた農村人口が世界的に減少する中、
  市民の農的な生活が21世紀の文化の基盤を支える大きな力となるだろう。 ここまで引用。
(古在先生、纏めがざっくりで・・・真意が伝わらなかったらすみません
そして、3・11以降に特に切実に感じると結んでおられます。

3・11以降、地域の繋がり、人と人との繋がり、そして自然エネルギーが大事だなぁと感じる今日この頃、
「農的な生活=ローカリゼーション」と解釈していいんじゃぁないでしょうか。

幸せってなんだろうなぁ?と今一度、考えるきっかけになる映画です。


便利なもの、楽なものは環境に悪い。美味しいものは身体に悪い。このジレンマをなんとしよう?



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