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新しい「領解文」の問題点を探る 上

2023年04月20日 | 浄土真宗とは?

『中外日報』(2023.4.14日号)に「新しい領解文」問題をまとめています。その「上」です以下転載。

 

本願寺派 新しい「領解文」の問題点を探る 上

 

 浄土真京本願寺派で1月16囗に発布された「新しい『領解文』(浄土真宗のみ教え)についての消息」に対し、これまで勧学や司教、宗会議員や布教使、一般寺院僧侶、門信徒らから様々な声が上げられてきた。それらの声から、教学面、制定の経緯・手続き、拝読・唱和の推進など多岐にわたる問題点と、背景にある組織的な課題が浮かび上がってきた。上下2回の連載で今回は教学面と制定経緯について取り上げる。   (渡部梨陽)

 

法義大きく誤る懸念

 石上総長は発布経緯を説明新しい「領解文」は、2021年4月に大谷光淳門主が示した親教「浄土真宗のみ教え」に師徳の内容を加えた形で発布された。当初から教学面で疑問視する声は多く、3月26日に宗門の教学を司る勧学・司教ら18人が声明で「宗意安心の上で重大な誤解を生ずる危惧を抱かざるをえない」と示したことてその問題が明確になった。

 新しい「領解文」の「私の煩悩と仏のさとりは 本来一つゆえ」について、「本覚思想(天台本覚法門)で真宗教義と異なる」等の意見が相次いでいた。勧学・司教らは声明でこの部分を「最も深刻な危惧」とし「何一つ善をなしえない煩悩具足の凡夫という機実をおさえず、煩悩と菩提が『本来一つ』であることを理由句として『そのまま』の救いを理解することは、法義の領解を大きく誤り、きわめて安易な現実肯定論に陥るおそれがある」と指摘した。

 また、もともとの領解の「次第相承の善知識」が師徳の段(図表の点線内)で宗祖親鸞聖人と歴代宗主に限られていることについて、門信徒から「お取り次ぎのお寺さんが一番の善知識なのに」といった意見や、僧侶から「ご縁となってくださった師や門徒さんは含まれないのか」という声も多く上がっている。

 勧学寮は本願寺新報2月1日号に解説文を掲載したが、解説文を踏まえても理解できないとの声が少なくない。勧学・司教らの声明でも「勧学寮の解説文は、その混乱に拍車をかけるもの」と厳しい指摘があり、さらなる説明や教学的議論の場が求められている。

制定経緯に残る疑問

 

 新しい「領解文」の制定の経緯について、石上智康総長は第321回定期宗会の執務方針演説で、05年8月1日を始期とする親鸞聖人750回人遠忌宗門長期振興計画において「浄土真宗の教義と信心(現代版頌解文の制定)」が掲げられ、その後は15年から現在まで続く宗門総合振興計画の新たな事業「現代版『領解文』を制定し、拝読する」として研究・検討が重ねられてきたが制定には至らす長年の懸案事項となっていたこと、22年8月に現代版「領解文」制定委員会を設置し、11月の委員会からの答申に基づき勧学寮の同意を得て1月16日に新しい「領解文」の消息が発布されたことを説明している。

 しかし「なぜ長年議論が進まなかったものが昨年から急速に進み、制定に至ったのか」や「なぜご親教『浄土真宗のみ教え』が新しい『領解文』になったのか」などの疑問は払拭されていない。ただ総局は22年1月の第20回宗門総合振興計画推進会議の時点で、門主の消息をもって「浄土真宗のみ教え」(21年4月の親教)を新しい「領解文」とする考えを示していた。

21年11月に発布された「本願寺本堂内陣修復完成についての消息」の中で光淳門主は「次の世代の方々にご法義がわかりやすく伝わるよう本年4月の立教開宗記念法要において、その肝要を『浄土真宗のみ教え』として述べさせていただきました」と言及している。総局は「(この)消息で門主がそのように示したことをもって、実質的に(現代版領解文の)制定がなされたという認識が確認された」と述べ、それに従い今後は「浄土真宗のみ教え」の拝読等を徹底していくことを事業計画(「現代版『頷解文』を制定し、拝読する」)として提案した。

 しかし、宗会議員から「なぜ浄土真宗のみ教えが現代版領解文になるのか」等の厳しい意見があり再検討され、「制定方法を含めて慎重に検討する」とし、22年8月に現代版「頷解文」制定方法検討委員会が設置されたのは石上総長の経緯の説明の通りだ。

 制定方法検討委員会は制定方法の検討のみで、内容を検討する煬は持たれていない。また、結果的に総局が描いていた通りに、門主の消息をもって「浄土真宗のみ教え」がほぼそのまま新しい「領解文」となったことに対し、違和感や不信感を抱く関係者は少なくない。

      (下に続く)

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