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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

「頭がいい」とはどういうことか①

2024年06月01日 | 日記
『「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える』(ちくま新書・2024/4/10・毛内拡著)、興味深く読みました。三箇所転載します。


自己意識すら言語化

 この左脳の解釈装置は、ありとあらゆるものを説明し尽くそうとします。人間はある日、体に次々と湧き起こるストレスに対処し、さまざまな疑問を解決してくれる便利な存在がいることに気が付きます。そうだこれを「自分」と名づけよう。そうやって自己意識なるものが確立されていくのです。
 「感情」も、言語化により生まれたものと考えることができます。体には外部環境の変化に応じてさまざまな情動が生じますが、その中で左脳の解釈装置によって言語化されたものだけが、感情として知覚されるのです。それはおそらく、感情として言語化することで、その体験を学習し、記憶しやすくするためなのでしょう。賛否両論あると思いますが、言語を持たない赤ちゃんや動物には「感情」は存在しないと言うこともできます。あるのは、情動に伴う肉体の変化だけです。
 情動は、英語でemotionです。通常、emotionを感情と訳しますので、感情と情動を日本語で区別していないことがわかりますが、きっちり区別すべきです。いわゆる感情、気持ちのことは、英語ではfeelingnになります。emotion は、「外」を意味するeと「動き」を意味するmotionからなります。ここからも外に見える形で表出するものが情動であり、内なる現象である感情とは一線を画しているとわかります。
 さらに、自己意識の確立に欠かせないのが、エピソード記憶と呼ばれる種類の記憶です。
これは「あの時、ああだったなあ」と思い出せる類の記憶です。このエピソード記憶の確立は二~三歳と言われていますが、自分の体験を言語化することが欠かせないことから、言語の獲得とともに発達すると考えられています。
 なぜ私たちは、言語を持たない赤ちゃんや動物にも自己意識があり、感情を持つと思ってしまうのでしょうか。それには、人間の脳がやはり発達とともに獲得する「心の理論」という、共感や意図推論の能力が関係してきます。
 いずれにせよ、どのように言語化するかが「自分」というものであり、外部環境の変化に対して湧き起こる情動や肉体変化に、どんな言葉を割り振っていくかが左脳の解釈装置の働きであり、各々が異なる脳のフィルターを持っていることになります。
 この言語化のフィルターは個々の経験や記憶に基づくもので、誰一人として同じものはありません。おそらくは、その状況を説明する最も確からしい言葉を、ほぼ瞬時に検索して当てはめているに過ぎません。(つづく)
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