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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す③

2024年06月29日 | 現代の病理
『悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す』(2024/2/23・キャサリン・A・サンダーソン著)からの転載です。

同調圧力は非常に強力です。社会的規範から逸脱した人は、恥ずかしさ、気まずさ、他人からの敵対的な行動などネガティブな結果をしばしば経験します。他の人が拒絶されているのを目撃するだけでも、それがどれほどい不愉快かを思い起こさせる場合があることから、より強い同調を生み出す可能性があります。
 拒絶への恐れがどれはどの同調を誘発するのかを示す研究として、実験参加者の大学生を3つのユーモラスな動画のうち一つの動画を見るように無作為に割り当てることで、説得力ある実証を試みた研究があります。この研究の1つ目の動画(他者嘲笑条件)では、ある人物が他人の外見を揶揄して「ティーンエイジャーの頃は、彼のニキビがひどかったので、私たちは、彼のことを『ピザ顔』と呼んでいました」と言いました。2つ目の動画(自己嘲笑条件)では、ある人物が自嘲して「ティーンエイジャーの頃は、ニキビがひどかったので、彼らは、私のことを『ピザ顔』と呼んでいました」と言いました。3つ目の動画(統制条件)では、コメディアンが誰に向けたものでもないジョークを飛ばしました。
 その後、実験参加者全員にいくつかの漫画を読んでもらい、各漫画の面白さを評価してもらいました。使用した漫画は、他の学生から「とても面白い」または「まったく面白くない」と評価されたものでした。実験参加者は、漫画を評価する直前に、他の学生の評価結果を伝えられましたが、それは実際の評価結果とは真逆の内容でした。実験参加者の評価はどのようになったのでしょうか?
 他者嘲笑条件の動画を見た実験参加者は、自己嘲笑条件や統制条件の実験参加者よりも、他の学生の漫画の評価に同調しようとする傾向が認められました。すなわち、他者嘲笑条件では、面白くない漫画を面白いと評価し、面白い漫画を面白くないと評価したのです。
この結果から、社会的拒絶の一形態である、嘲笑されることの連想は、私たちの同調傾向を強めることがわかりました。また、この研究は、いじめっ子が嘲笑やからかいを使って、どのようにして大きな同調を引き出しているのかに洞察を与えてくれます。私たちは、自分か所属する集団の規範を学び、守るということを積極的に動機づけられていて、特に自分が所属する集団のメンバーの悪事に対して、その悪事を非難することで生まれる結果を恐れる傾向かあります。このことが、例えば、同級生が女子学生の体型を格付けしたリストを回覧したとき、あるいは感謝祭の夕食の席で親戚が同性愛嫌悪的な中傷を行ったとき、または会議中に同僚が攻撃的な発言をしたときなど、あらゆる場面で私たちが非難の声をあげることを抑制するのです。そして、この知見は、宗教的・政治的集団のメンバーが、集団の外部にいる人々にとっては耐えられないような行動を容認してしまう理由を説明する一助になります。
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