『「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える』(ちくま新書・2024/4/10・毛内拡著)からの転載です。
顧客は新奇体験を求める
少しアートの話題からは脱線しますが、後で繋がりますのでいったん脇道に逸れます。
ニューロマーケティングという研究分野があります。マーケティングというのは、商品をよりよく売るにはどういう戦略がいいか、どういうプランティンクが有効かなどの方法論です。さらに一歩進んで、ニューロマーケティングは、脳科学の立場から、どうしたら脳が喜ぶか購買行動に結びつくかということを提案したり、逆に人は買い物を始めとする意思決定をする際にどういう心理になるのか、どんな脳の働きがあるのかを研究したりする学問です。
素人的には「物を売ってなんぼのもの」だと思っていましたが、マーケティング研究では、顧客は商品そのものが欲しいのではなく、体験にお金を支払うものと言われています。なにかを購人した際に、どんな便利な生活が待っているか、どんななふうに既存の価値観を変えてくれるか期待しているのだとか。そう言われてみると、一顧客としては確かにそうかもなあと納得します。
私たちは多かれ少なかれ期待を持っていますが、この「期待」という形のない心の働きを司っているのもやはり脳です。ここまで、ドーパミンという脳内物質が関与していると述べてきました。つまり、報酬を予測し、それが最大になるように行動し、誤差があれば修止するという学習の指標となります。
予想通りかそれ以上の報酬を得ると幸福感や高揚感を感じるようにできており、これが「次も欲しい」や「もっと欲しい」という気持ちを生み出します。これが行き過ぎるとギャンブル依存症や買い物依存症などの行動嗜癖となってしまいます。新奇体験に対する依存は聞いたことがありませんが、私たちは多かれ少なかれ新奇休験に飢えていて、スマホの通知があると「何か新しい情報があるかも」と即座にそれを確認せずにはいられません。
余談ですが、人は一旦集中力が切れてから回復するまで二十三分かかるというデータを見たことがあります。スマホやパソコンの通知が鳴るとどうしても見たくなってしまい、そこで集中力が途切れてしまいます。一つ通知が鳴るたびに二三分ロスしていると言っても過言ではありません。(つづく)
顧客は新奇体験を求める
少しアートの話題からは脱線しますが、後で繋がりますのでいったん脇道に逸れます。
ニューロマーケティングという研究分野があります。マーケティングというのは、商品をよりよく売るにはどういう戦略がいいか、どういうプランティンクが有効かなどの方法論です。さらに一歩進んで、ニューロマーケティングは、脳科学の立場から、どうしたら脳が喜ぶか購買行動に結びつくかということを提案したり、逆に人は買い物を始めとする意思決定をする際にどういう心理になるのか、どんな脳の働きがあるのかを研究したりする学問です。
素人的には「物を売ってなんぼのもの」だと思っていましたが、マーケティング研究では、顧客は商品そのものが欲しいのではなく、体験にお金を支払うものと言われています。なにかを購人した際に、どんな便利な生活が待っているか、どんななふうに既存の価値観を変えてくれるか期待しているのだとか。そう言われてみると、一顧客としては確かにそうかもなあと納得します。
私たちは多かれ少なかれ期待を持っていますが、この「期待」という形のない心の働きを司っているのもやはり脳です。ここまで、ドーパミンという脳内物質が関与していると述べてきました。つまり、報酬を予測し、それが最大になるように行動し、誤差があれば修止するという学習の指標となります。
予想通りかそれ以上の報酬を得ると幸福感や高揚感を感じるようにできており、これが「次も欲しい」や「もっと欲しい」という気持ちを生み出します。これが行き過ぎるとギャンブル依存症や買い物依存症などの行動嗜癖となってしまいます。新奇体験に対する依存は聞いたことがありませんが、私たちは多かれ少なかれ新奇休験に飢えていて、スマホの通知があると「何か新しい情報があるかも」と即座にそれを確認せずにはいられません。
余談ですが、人は一旦集中力が切れてから回復するまで二十三分かかるというデータを見たことがあります。スマホやパソコンの通知が鳴るとどうしても見たくなってしまい、そこで集中力が途切れてしまいます。一つ通知が鳴るたびに二三分ロスしていると言っても過言ではありません。(つづく)