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悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す

2024年06月26日 | 現代の病理
『悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す』(2024/2/23・キャサリン・A・サンダーソン著)


「最大の悲劇は、悪人の執拗な暴言ではなく、善人の沈黙であった」(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)、

〈はじめに〉に傍観してしまう原因が4つにまとめられています。「発生事象の曖昧性」「個人的な責任感覚の欠如」「社会的規範の誤解」「結果に対する恐れ」で、以降はそれぞれの原因の詳細を読み解いていく構成になっています。そして最後に、どうやって傍観者(善人の沈黙)の殻を破って一歩を踏み出すかのヒントが書かれています。

本書から転載します。

第2章誰の責任?
2017年4月9日、69歳の医師デイビッド・ダオは、オーバーブッキングされたユナイテッド航空のフライトで席を譲らなかったために、シカゴ・オヘア国際空港で強制的に降ろされました。彼は、シカゴ航空局の3人の警備員に機内の通路を引きずられ、肘掛けに頭をぶつけて意識を失い、脳震盪と鼻骨骨折、歯を2本失うけがを負いました。
 このできごとは、複数の乗客が事件の様了を撮影してソーシャルメディアに動画投稿をしたことで大きな話題になりました。
 この動画を見た多くの人々は、ダオに対する扱いの悪さに注日しましたが、私か驚いたポイントは他にありました。この飛行機は物言わぬ乗客で一杯だったのです。乗客は何か起きているのかをはっきりと認識していました。たくさんの大が携帯電話を取り出して様子を撮影していて、後にソーシャルメディアで大きな声で怒りを表明しました。ところが、その場で「何をやっているの!」と叫んだのはただ一人の女性だけでした。明らかに不適切な行為だったにもかかわらず、警備員に立ち向かったり、阻止しようと介入した人は誰もいませんでした。
これは驚くべきことではありません。たくさんの研究が示しているように、私たちは他者がいると介人しにくくなります。他の人が何かしてくれる、自分は何もしなくてよいと思い込んでしまうのです。
 皮肉なことですが、この傾向は心理学行が「責任の分散」と呼ぶものです。責任の分散は、被害者が援助を受け取れる可能性がその場に居合わせた人の数に反比例することを意味します。心理学者はこの現象を「傍観者効果」」と呼んでいます。(以上)

傍観者から抜け出すために必要なこととして書かれている要素で、強く同意するのは次の3点です。

・専門スキルを高める
 … 例をあげると、AEDや心肺蘇生のスキルを身に着ければ、倒れている人を見かけたときに、積極   的に助けることができるようになります。少なくともその心構えが強化されます。
・アイデンティティを共有する
 … 自分が応援しているチームのアイテムを持っている人が困っていると、そうでない相手に対して   よりも強く助けたいという気持ちが芽生えます。
・正確な情報を提供することで、他者の認知を変える
 … 昨今の、差別に対するバイアスやハラスメント等に関する改善意識が徐々にではあっても社会   全体で変化してきているのがその証左です。(以上)
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