超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ニセコイ 1巻/古味直志

2012-05-03 00:03:19 | 漫画(新作)





古味直志「ニセコイ」1巻読了。





元々この作家さんはデビュー作「island」から読んでいて、それが当時物凄く話題になりまして
少年誌ど真ん中のワクワクするようなファンタジーに自分もそれなりに夢中になり
漫画サイトとかでもこぞって絶賛されるような作品だった訳ですけど
その後本誌に来て最初に書いた読切が恋愛漫画だったので、
「あれっ?」ってなったのもよく憶えてて
正直ファンタジーなのか恋愛なのかよく分からない感触もあったんですけど
一作目がそのファンタジー系の漫画を連載してそれが短期打ち切りに終わって
その後恋愛ものに再び着手して今現在に至るって言うバイオグラフを考えてみると、
元々両方やるつもりだったというか、
基本的に少年少女に読ませるような純朴なお話がやりたい人なのかなあ、とちょっと思いました。
冒険ものが失敗したから恋愛作品に取り組んだって見方もあるようなんですけど
実際はちょっと違うようにも思えるんですよね。これもこの作者の一つの持ち味というか
元々持ってた武器の一つなのかなあ、と。
それが証拠に最初からスムーズに進んでいて、トピックの入れ方も器用だし、キャラの使い方も上手い。
前作はヒット作を生み出そうとして若干気負ってた部分も感じられたんですが
今作は、あんまりそんな気負いも感じられなくて
割と素直に書いてる印象
だからこそ現時点で常に掲載順が上位っていう人気を博していられるのかもしれません。
実際、気軽に読めるし、ちゃんとニヤニヤ出来るし、古き良きラブコメのお手本のような作品です。
エロコメとラブコメは別物なんだって事をこの作品を読んでると強く思います。

少年誌のラブコメって言うと必ずお色気路線を強要される訳ですけど・・・
この作品は一切色気がないんです。
その後サービスシーンもちょくちょく入るようにはなりますが、ぶっちゃけ色気にこだわってる節は全然なく
そういうシーンを期待して買うと相当に肩透かしだとは思うんですが
これも一つの原点回帰なのかもしれません。
あまりにも安易なエロのエスカレートで読者を釣った結果、
真面目な読者が少年誌の恋愛漫画から離れていってしまった感覚があるので
ある意味その逆を突くっていうか、
むしろ色気抜きで勝負することにロマンがあるっていうか。
一つのオーパーツみたいなものなんですよね。この過激時代に敢えてナチュラルな、普通の
何の奇を衒ってもいないストレートなラブコメで読者に訴えかけてるっていう
その本来の姿に戻った感覚が自分は凄い好きなんですよね。
勿論サービスで勝負する作品も大好きですけど、
やっぱりこういう作品があると安心するのもまた事実だし、ちゃんとコメディで勝負してる気がして。
まだ1巻の時点ではラブよりもコメディの方が全然強いような印象ではありますが
この後はもっともっと盛り上がって、ニヤニヤ展開も待ってますので
千棘があんまりデレを見せない事に不満な方は
是非続巻を期待して下さい!っていう事で。滑り出しとしては相当好調だと感じられた1巻目でした。


個人的に好きなヒロインは、やっぱり千棘なんですよね。
ある意味時代に逆行してるヒロインだと思うんです。最悪の地点からスタートして、
徐々に徐々に好感を上げて、どんどん親密になって・・・
気がついてみれば、
そういう構成のラブコメディも随分少なくなった気がする。今って結構初めから両想いのパターン多いから。
そう考えると、本当に古き良きラブコメディの再現というか
ラブコメディの本質の復権を担うような
割と、っていうかかなり重要な作品なのかもしれません。
関係のない話題ですまないんですが、千棘は「俺妹」の桐乃にキャラが近いと思います。
最初はツンツンから始まって、どんどん雪解けしていく部分が近いな、と。
まあ桐乃の場合は最初からある意味デレデレではあるんですが
そうやってワンステップずつ丁寧に進むラブコメの良さを体現しているのが本作、という事で。
性質的に「瀬戸の花嫁」とも通じる部分のある作品ですけど
燦と違ってヒロインが分かりやすいツンデレな時点で差別化は十分に出来てますね。
圧倒的なオリジナリティがあるとかそういう類の作品ではないけれど
読めば必ず面白いし、その純粋さに安心も出来る
優良なラブコメディの一つだと個人的には素直に思える漫画です。
前述のように、この後の展開もまたたまらないのがいくつか待ってるので、続巻もめっちゃ楽しみです!ね。





簡易ですが全話数レビュー。



第1話 ヤクソク

転校生からの始まりって云うのはベタと言えばベタですが、
何気に親の仕組んだ事なので
単なる偶然にもなってないのが手が込んでていいですね。展開的にはインパクトも十分
そしてみんなの前で暴力女扱いした楽もまた実は悪いとは思うんですよね(笑)。
デリカシーがないっていうかなんというか。
犬猿になるのも必然、かな。ある意味両方尖ってるから。


第2話 シツモン

10日でキスはまだ早い、って概念がこの漫画の本質をよく表しています(笑)。
最後の千棘のイラっとしながらニコっとしてる顔が可愛いなあ。


第3話 ハジメテ

初めてのデートは散々・・・かと思いきや
何気に千棘の立場を気遣っている楽の態度が男らしい。
要するに自分の手を汚すな、と。


第4話 ソウグウ

小野寺さんとデート中の遭遇。扉絵の時点でインパクトは抜群。
こりゃあアンケも稼げそうです。実際私も出してますけどね(笑)。生き残って欲しいので。
さり気に千棘とギュッと腕組み出来る楽が羨ましいぞ!
アレ絶対に胸当たってますもん。
楽のテンパり具合に非常に笑わせてもらったお話ですが、安易に千棘に嫉妬させない丁寧さもまた良し。
小野寺さん、こうして見ると案外大人っぽくて可愛いと思えますね。


第5話 イッパイ

遂に公式カップル認定されるの巻。
小野寺さんの「すごいね ラブラブカップルだね」の一言がなんか物悲しい。
最近つぐみに出番取られてるからあれだったんですけど
普通に存在感あって可愛いじゃない、彼女。
今は感想で全然触れてないけど、
やっぱり所謂フラれポジションの人なのかなあ。「美鳥の日々」の綾瀬さん的な。
そして扉絵が超絶キュートでずっと眺めても飽きない出来栄え。


第6話 ニタモノ

似た者同士だからこそ分かる寂しさの共有。
っていうか、クラスメイトの情報のノートだとか
ひょっとしなくても相当健気ですか?
ペンダントの件もそうだし
本当に根は良い子なんでしょうねえ・・・ちょっと照れた千棘の表情に魅せられたお話でした。


第7話 テヅクリ

この話を見るに、やっぱり真に料理ベタなのは小野寺さんの方なのでは、とか思う。
この後彼女らの料理を一緒に食す場面で楽の体調が悪化する話があって
その原因ってやっぱ小野寺さんの方だろうな・・・と。
壊滅的な料理ベタネタは珍しくないですが
形がヤバくて美味しい、形がきれいなのにマズいっていう形式は微妙にひねってるなという感じもする。
なんだかんだいって自分の欲よりも千棘の友達作りを優先する時点で情が沸いてるなあ、と。
そういう変遷を楽しむのもまた面白い一作ですよね。面白かったです!







記事本編でも書きましたが、今やってるお話は当然の如く初期よりもずっと面白いです。
それはきっと積み重ねの作品って性質も関係してるんでしょうが
どんどん魅力的な表情を描くのが上手くなっているので
その点でもこの先の展開にも注目してみて下さい!って事で。

「針栖川」は実質短期用の漫画だったので、この作品が最近のジャンプラブコメ攻勢の第一弾ですね。
最初はお色気抜きのピュアラブ作品って事で真面目さのアピールにはちょうど良い、
その上できちんと笑えるギャグもあったりで相応に好印象の作品になったのではないかな、と。
その中でも時折見せる一条くんの男らしさにもまた評価を、という〆で。
個人的にすっごくオススメしたい漫画の一つです。