超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

鏡の国の針栖川 3巻/叶恭弘

2012-05-02 17:11:37 | 漫画(新作)






叶恭弘「鏡の国の針栖川」3巻読了。






全3巻で終了・・・って事で結構駆け足だったのかな?って思ってたら
実際は全然そんなことなかったぜ!っていう。
ぶっちゃけ、これは、単純に短期用のテーマで短期に終わらせた、ただそれだけの話ですね(笑)。
しかもそれが凄く貴重に感じられるんですよ。よくよく考えても凄い事ですよねこれは。
だって引き伸ばしでもなく、人気不振でもなく、ただ単純に終わるべき時が来たから終わるって言う
最も正しい漫画の有り方を体現してるんですもん。
これは支持せざるを得ないと思うし
ここまで自由に動いて自由に終わったジャンプの作品もそうそうないですよね・・・
流石叶さんならではのフットワークっていうか、作品っていうか、その媚びなさに惚れるっていうか。
一切の未消化も、遣り残しも存在してない完璧に終わった相当の秀作。
そんな風に解釈しているのと同時に、
ここまできれいにちゃんと終わってて未練も後悔もないなら
全然成功作に数えちゃっても平気な作品でもあるかな、と。なんせ終わる数週前にカラーもらってますからね(笑)。
だからそういう意味では円満作品よりも円満的な雰囲気が漂ってる
むしろこれ普通に円満だろ、って思えるような
それくらい素晴らしい着地を見せてくれた良質な恋愛コメディでした。

振り返ってみると、やっぱり設定がきちんと面白くて
今回もまたバレるかバレないかの瀬戸際恋愛コメディだった訳ですけど
そんな中でも上手く三角関係を作ったり、切ない設定の妙が光っていたりと
設定の達人ならではのユニークさや楽しさが往々に機能していて
しかもそれが
結果的に主人公を成長させるファクターになっていたのが最も面白かったんじゃないかなあ、と思います。
最終話での針栖川のセリフを読めば分かるとは思いますが、ある意味での教訓っていうか
言いたい事も言えないままにずっとモジモジしていた彼への罰というか
一種のしっぺ返しみたいな効果は確かにあって
その経験があったからこそ、堂々と想いを口に出せる人間になる事が出来た・・・っていう
単なる想いが結実するありふれたストーリーではなく、ちゃんと主人公の成長譚になり得ている部分
そこがこの物語の一番素晴らしい部分だったのかもしれない、と
読み終えてみて実直にそう思えた訳です。
かといって、ヒロインが告白を待つだけのお姫様みたいなお話にもなっていないし
それぞれがそれぞれに全力で動いた結果の物語という感じで・・・そこが非常に良いと思うんですよね。
巻数が短いと感慨も少ないのでは、って思ってたけどきちんと切なさもカタルシスもあって
やっぱり叶恭弘って物語を締めさせれば本当に抜群の手腕を発揮するなというか
今回はもう一切の心残りが発生しないくらいきれいに終わらせてて、
そこもまた過去作とは違う一面なのかな、と思ったりも。

今回の作品は元々長期連載する気もなかったように感じられて
本当に「作品の為の作品」という感じなので
無駄も色気もない訳ですが
だからこそ、この後一切の展開も出来ないようにちゃんと作品世界を畳んで終わらせてるんですよね。
多分、プリフェもエムゼロもやろうと思えば続編って結構容易に出来ちゃうと思うんです。
けど、この針栖川はそもそもがそういう色気のある展開とは無縁の作品なんで・・・
本当に綺麗に纏まった良質な短編作品って印象、かな?
引き伸ばしも、人気不振による駆け足も消化不良も全くうけなかった短期終了作品が
あのジャンプで生まれたって事自体が相当に奇跡的だと思えるんですけど(笑)。
砂漠の中のオアシス的な、東京の中の自然のような。
そんな正しくも潔い作品。逆に何一つの引っかかりもないというのは小奇麗って印象を与えるかもだけど
自分としてはここまできれいに後悔もなくきちんとまとまった恋愛作品が読めただけで幸せです。
ともすれば、ただ幸せなだけの作品で終わっちゃう可能性もあったと思うけど
最後はきちんと主人公が頑張る展開になって終わりを迎えたのが尚素晴らしかった作品かな、と。
ある意味ジャンプらしさとは距離を置いた優れた叶流ラブコメディでした。最高のラストをありがとう!
ちなみに番外編は未収録なので注意です。
短編集に載りそうですがね。







しかし、何気に針栖川の妹さん、可愛かったですね(笑)。
いつか妹コメディとか描いても面白そうだな~って思った事は胸の中にしまっておきます。
しばらくはまたこれで読切作家としてのターンになりますかね。
それもまた楽しみにしておきます。そして次の短編集も早く読みたい!




ハテナ/夢みたいだ/チャットモンチー

2012-05-02 01:21:51 | 音楽





チャットモンチーの新曲「ハテナ」を聴いた。





今年入ってから3枚目のシングル。ここ最近はまた昔のようにシングルバンドに戻ってますけど、
その中でも最も強くバンドの衝動を感じたのがこの「ハテナ」でした。
いつからかエッヂの聴いたロックナンバーはシングルやリードトラックにはならなくなってたけど、
この曲で久々にガツンと来るロックスピリットを感じつつ
正直「満月に吠えろ」あたりはまだベースの音色が恋しい感触もあったんですが
この曲でそんなモヤモヤは払拭された感じがしていて
その意味でも収穫のあったシングル。
実際どう解決してるのかって言えば、まずは若手バンド以上にフレッシュなバンドサウンドと
ブルースハープを使って音の隙間を埋めてたり、単純にギターの音色が新鮮で面白かったり
何よりも以前のようなワクワクするメロディ
グッと来るメロディの求心力が復活しているのが大きくて
また「告白」辺りに感じられた声の張りの強さも再び感じている自分もいたり
この曲こそ正に新生チャットの始まりの一曲っていうか、大きなパンチを食らった感覚に素直になれて
二人体制後の新曲の中では最も「らしさ」を個人的に感じたナンバーでした。
勿論、前の2曲も全然好きなんですけどね。


人間は無駄に理屈っぽかったり、変な強迫観念が付いてたり
それを誰かに強いられたりと
中々素直には、思ったようには生きられない生き物で、それに対して畜生って思う気持ちもありますが
この曲では自分の思ったように、感じたように、好きなように生きる事を肯定していて
そんながんじがらめの精神状態から解放されるような力強さがある曲なんですね。
別にそんなに理由や目的がなくてもいいんだ、っていう
そのフットワークの軽さと、純真さに救われる楽曲であると同時に
そんな悩みや疑問は一生尽きることがない、一生付き合っていかなきゃならないっていう
一種のメッセージ・ソングにもなっててそのコントラストっていうのか
決して片方だけでは生きられないっていう事実の提示もまたリアルで好きなんですけど
だからこそ余計にロール感が強調される感覚は当然あって
その意味でもチャットらしい曲になってるかな、と。
 カップリングの「夢みたいだ」も洋楽ナンバーを日本語詞に訳してポップに紡いだ好カバーで、
2曲併せてちょっと懐かしい空気感も漂ってるのがまた面白いシングルですね。
90年代のギターロックっぽい雰囲気というか、
きちんと過去も現在も踏襲出来てるその感覚も秀逸な楽曲群で。
音源の状態でも抜群の出来だと感じるので、
是非一度ライブでも二人体制を観てみたいもんですね。去年のアルバムツアー以降、観てないので。





二人になっても、力強いロックを鳴らし続ける立派なバンド・チャットモンチー
その苦節の道に光が差し込んだかな?と思えるような明るい閃きが宿っている名シングルでした。
次はどういうアルバムを作るのかが楽しみッス。