(1)岸田首相は何かにつけて「決断」(decision)が遅い。就任時に掲げた新しい資本主義、成長と分配の好循環は2年たっても賃上げ頼みで政策が具体化せずに、防衛費増額、少子化対策拡充の重要政策の財源も増税でまかなうとしながらもどう対応するのか絞り込めずにあきらかになっていない。
(2)増税論に国民の批判が出ると減税論を持ち出して、何をやりたいのかまるで伝わってこない。政治家としては慎重姿勢で優柔不断、周りに影響を受けやすいところが見受けられて、国民に安心感、安定感、自信が映らなくて、伝わらなくて右往左往、内閣支持率(政策力、決断力、実行力の不足も影響している)にも反映しているとみられる。
(3)いい例とはいえないが、戦後最長の政権を記録した安倍元首相は伝える前に行動しているところ、実行性があり、何をやろうとしているのかわかるところがあり、逆に説明、理解があいまいになって独断、独善ひとりよがりが後になって不正、疑惑につながり、政治権力志向、不信、政治とカネの問題を生んでいたが、それでも国民の一定の支持を受けていた要因だろう。
(4)その安倍元首相も首相就任にあたっては党内最大派閥の自派閥を離脱して無派閥として政治活動をしていた。岸田首相は首相就任後も党内第4の小派閥でそれまでほとんど見当たらない事例のそのまま首相と会長を続けて当時も党内から異論はあった。
首相として自派閥内での会長の政治力を活かして存在を維持したい思惑があったとみられるが、やはり慎重姿勢が感じられるものだ。
(5)しかし今回自民党5派閥のパーティ券の収支報告書不記載のキックバック(裏金)不正問題で東京地検特捜部の捜査を受けており、国民、与野党からの批判の高まりの中でようやく岸田首相は自派閥の会長を辞任して無派閥となることを表明した。首相としてあまりに遅い「決断」だ。
(6)官邸を取り仕切る要職の松野官房長官のパーティ券収入キックバック問題を受けて更迭することになり、いよいよ岸田首相の政治、政権運営はたとえ年を越しても前途はあまりに多難、危険水域になったといえる。
「決断」することがあまりに多く、続けて起きてきており、それが遅れて対応できずにいよいよ身動きが出来なくなってきた。岸田首相の最後の「決断」はどうか、注目だ。