象徴天皇の意志。 intention of symbolistic tenno

　(1)天皇のビデオメッセージ「象徴としてのお務めについての天皇陛下のお言葉」では、高年令で大きな手術も受け公務を遂行することが難しくなる懸念と、現行皇室典範では突然の天皇退位により関連、恒例行事が１年にも及び国民生活や家族に準備にともなう多大な困難な事態を招くことを懸念した生前退位を強く望む国民に向けたメッセージとなった。

　政治にかかわらない天皇の一般論としての象徴天皇制度として、その立場のあるべき姿について言及したものと理解できるものだった。

　(2)数千年にも及ぶ日本伝統の天皇制は、歴史観（a view of history）的にも人間の理解をはるかに超えたところにある荘厳で尊厳なものであり、かっては神として権力の頂点にあって、１９４５年の世界大戦の敗戦を契機に日本国憲法で国民統合の象徴としての天皇、人間天皇としての現在がある。

　歴史の重みはその継続性、持続性（sustainability）で比類のない荘厳な価値を有するものではあるが、歴史、国家、社会観そのものが近代史で大きく根本的な変化を見せて、天皇、皇室の有り様も歴史の重みとは別に近代、現代史の変化、変革とは無縁でいられないことが必然なものとなってきた。

　(3)そうしてかっては現人神（あらひとがみ）として権力の頂点にあったものが、国民統合の象徴としての天皇制、人間天皇となって７１年を迎える。
　現人神の天皇時代にも報道によると生前退位はかなりの数であったといわれており、まして国民統合の象徴としての人間天皇となって、現代政治、社会の最高権力者の首相も定期的に交代する時代で、天皇だけが終身天皇であり続ける論理は歴史の重みは重みとして人間天皇の立場は近代史、近代化国家、社会の中で十分に尊重され、見直されるのは当然のものと考える。

　(4)数千年の天皇制持続歴史観を標榜する歴史観の安倍首相は生前退位には慎重な考えともいわれて、天皇が制度としての一般論として懸念をあらわしたのに対して現天皇だけの特別な配慮として特別立法で対応することを検討している（報道）といわれている。

　歴史専門家、自民党保守派の中には、天皇の生前退位、強制退位によって天皇がいらぬ権力、権威闘争に巻き込まれる恐れを懸念するといわれるが、現在の象徴天皇は政治的、国家的権力者ではなく天皇の国民統合としての象徴としての立場をおびやかすことが仮にあったとしても、「国民統合」としての象徴天皇という立場を考えれば、対応の仕方はあり問題はない。

　(5)そもそも天皇は権力、権威闘争とは無縁の国民統合の象徴としての立場であり、天皇個人の意向、意志で決める生前退位と国民統合としての象徴天皇制をどう組み合わせるのか知恵、工夫、理念を示せばいい。

　天皇個人の意向、意志も考慮、配慮されるべき象徴天皇制、人間天皇の立場に、権力的、権威的威光の波風を立てようという勝手な取り巻く環境が問題だ。