さる9月、拙ブログをご高覧くださったある方から、「我が家にあるセガのMAD MONEYを譲りたい」とのオファーをいただきました。
MAD MONEY(関連記事:【小ネタ】セガ・マッドマネーとアルフレッド・E・ニューマン(Alfred E. Neuman))。「ダルマ筐体」とも呼ばれるこの筐体を、拙ブログでは「スターシリーズ筐体」と呼んでいる。
この時のワタシの心の動揺は、楽器店のショウウィンドウに陳列されているトランペットを飽かず眺める黒人の少年が、見知らぬ紳士から突然「これを君にあげよう」と言われた時の心境を想像していただければよろしいかと思います。
スターシリーズ筐体の左右両側面。
お声がけくださったのは愛媛県の方で、仮にKさんとしておきます。Kさんはこれを、セガの前身であるサービスゲームズ・ジャパン(関連記事:セガ60周年記念・1960年以前のプレセガ期(2) 4つの「Service Games」)の専務だったS原さんと言う方から、かつて日本の米軍基地で稼働していたものとして譲り受けたとのことです。
スターシリーズ筐体の背面。メンテナンスはこちらから行う。
しかしKさんは「MAD MONEY」にどのような謂れがあるのかをほとんど知らず、自分なりに調べてはみたものの役に立つ情報を得ることができないまま今日に至っていたのだそうです。それが最近、ふと思い出してまたネット上を検索してみたら拙ブログがヒットし、長年の謎の答えをやっと知ることができ、そして「我が家のMAD MONEYも家で眠っているよりもちゃんと価値のわかる人の所にあるべき」と決心して、ワタシにお声がけくださったのでした。
背面のドアを外して内部を覗いたところ。どこもかしこもピカピカに整備されている。
この上なくありがたいお志ですが、しかし、ワタシには二つの問題がありました。一つは保管場所の確保です。単体では小さく見えるスロットマシンも、居住空間に持ち込むと結構なスペースを占有するので、狭い我が家には置けません。可能性のありそうなところをいくつか当たり、某オフィスで置いても良いと言っていただけるところを見つけて、この問題は解決しました。
もう一つの問題は輸送手段です。最初に問い合わせたY運輸は、「当グループではスロットマシンを禁制品に指定しております」と言われて断られました。以前は取り扱っていたものの、どうも個人間でやり取りするパチスロ機の輸送でトラブルが少なからず発生して方針を変更したらしいです。その後に問い合わせた他の運送会社でも次々と断られ、やっとS運輸が「補償なし、営業所止めであれば」との条件で受けてくれることになりました。
MAD MONEYのトッパ―部分。このゲームの最大のフィーチャーが掲げられている。
問題はクリアしたとは言え、これだけの重量物(コミコミで約60㎏)を運送業者まで運ぶだけでも結構な労力を要しますので、「あとはKさんに全てお任せ」と言うわけにはいきません。ワタシが人足として働かなければバチが当たりますし、何より直接お会いしてお礼を申し上げたいこともあって、先週末、女房を伴って愛媛に行ってまいりました。
松山空港に到着すると、有り難いことにKさんが車でお迎えに来てくださっていました。まずはホテルまでお送りいただいてチェックインし、その後、実機の保管場所に行って発送の最終準備をするという段取りでした。しかし、保管場所に到着してみると、Kさんは既に土台の木枠とかぶせる段ボール箱を作成されており、あとは車に積んで運ぶだけの状態まで整えておいてくださっていました。
その夜は、Kさんが行きつけだという「赤ちょうちん」という屋号のおでん屋に入り、松山名物のじゃこ天やらかまぼこやらのおでんをいただき、時には初対面の他のお客さんとも楽しく談笑しながら過ごして初日を終えました。
上からじゃがいも、牛すじ、肉団子、カマボコ。からしは味噌を練り込んだ自家製。写真にはないが、じゃこ天とロールキャベツもおいしい。
翌日、Kさんの車にMAD MONEYを積み込んで運送会社に持ち込んで発送しました。我々はこの日も松山にとどまり、翌朝に東京へ戻る旅程であったところ、Kさんは「空港までの交通機関は貧弱だから」とおっしゃって、なんと我々が帰京する日の朝もホテルまで車でおいでになり、空港まで送ってくださいました。機械をお譲りいただくだけでもこの上なくありがたいことなのに、万事至れり尽くせりのご親切を賜り、何とお礼申し上げればよいのか言葉が見つかりません。Kさん、その節は本当にありがとうございました。機械は無事到着し、某オフィスに設置されております。これからも重要な歴史資料として大切に保管させていただきます。
(つづく)
検索用ワード セガ マッドマネー
価値が共有出来て大切にしてくれるnazoxさんのところに嫁がれた"MAD MONEY"も喜んでいるかと思います。
なんと素晴らしいお話なのでしょうか!(感涙)
本当に、全くありがたいお話でした。
大事にしていこうと思います。
アンティークスロットマシンを入手されておめでとうございます。私はスロットマシンを分かっていないのですが、よろしければ教えて下さい。
背面ドアを外した写真に見えている中央左のカウンターは何を表示しているのでしょうか。そしてリール群の右側に見える銀色の円筒形のものは蛍光灯の点灯管ですか(もしそうならば蛍光灯用安定器もどこかに実装されているでしょう)。
あと、正面写真に関して:
(1) 右上の「10」は「10円硬貨用」の意味ですか。
(2) 上の看板は、MADの顔がガラス越しに見える3×3の中に3個現れたら18コイン出ますという意味ですか。
(3) youtubeでMAD MONEYを調べるといくつか見つかりますが、投入されたコインが投入口の下の横長の窓に左から右へ移動する様に見えています。このMAD MONEYではその窓が黒く塗りつぶされていますがなぜでしょうか。そもそもこの横長の窓の目的が分からないのです。
(4) MAD MONEYにはjackpot払い出し用コイン箱中身が正面から窓越しに見えるものと見えないもの(このMAD MONEYは後者)がありますが、箱にコインが溜まっていない時にそれが見えると誰も遊ばないので見えなくしててしまったのでしょうか。
(5) ミステリーペイアウトは配当表の表示よりもコインを多く出したり配当表にない組み合わせでも配当を出したりするシステムとのことですが、配当表に正しく記述すれば済みそうなのになぜそんな事をしたのでしょうか。
ではまた。
背面ドアを外して見えるカウンターは、1956年に発行されているMillsのスロットマシンのサービスマニュアルによれば、ジャックポットの出現回数をカウントするカウンターであるようです。
(1) コイン投入口の脇の「10」ですが、ここでは通常、使用されるコインの額面を表示します。この個体は米軍基地で稼働していたと伝えられているので、「10¢」を意味するものと思いたいですが、しかし現状では径がずっと大きい10円硬貨で作動しています。
(2) その理解で正しいです。3つのリールのすべてで、ペイラインとその上下1段のいずれかにMADの顔(アルフレッド・E・ニューマン)が停止すれば、18コインが払出されます。
(3)窓の向こうには「エスカレーター」と呼ばれる機構があり、投入されたコインを機械内に留めて、適正なコインが使われているかどうかを容易に確認できるようになっています。その窓が黒く塗りつぶされているのは、日本円の現金が使われていることを隠したい理由があったからではないかと推察しています。その意味では、(1)の回答にも関係しますが、米軍基地以外で稼働していた可能性も感じます。
(4) スターシリーズ筐体には、ジャックポット用のコインを収納するチェンバーがあるタイプと無いタイプの2種類があります。チェンバーがあるタイプは、ジャックポットの支払いは自動的に行われますが、チェンバーが無いタイプの場合は係員が確認して手渡しする必要があります。ミルズのジャックポットアッセンブリーには、空になったチェンバーにコインを自動的に補充する機能があるようなのですが、詳細はわかりません。
(5) 「ミステリーペイアウト」のワタシの理解に根拠がないわけではないのですが、しかし、実は確信があるわけでもないのです。これについてはブログ本文の方でご説明するつもりでおりますので、少しの間お待ちください。ただ、いずれにせよ、多く払い出される分には文句はあるまい、ということではあろうかと思います。
米軍基地内ならば日本の法律の適用外なので10円硬貨が使えても気にしない、でも実はアンダーグラウンドで使われたので窓を黒く塗りつぶしたのでは…という事ですか。
私は過去の記事に、かなり昔に10円硬貨が使えるスロットマシン(MAD MONEYではなかった)を地方のホテル内ゲームコーナーで見たとコメントしましたが、そのマシンでは窓越しにゲーム用メダルと10円硬貨が混じって見えていました。
ジャックポット(JP)用コインチェンバーがないタイプではJP時ベルが鳴動して係員が来て正規のコインが投入されていた事を窓越しに確認する訳ですね。
JP用コインチェンバーがあるタイプでは払い出し後すぐにチェンバーへ補充するために、規定数のコインを貯めておいた別室からチェンバー内へコインを落とすのではないかと思います。その後投入コインは別室へ優先的に格納されていくと考えられますが、通常払い出し用のチューブが空になったらゲームを続けられないので投入コインの行先をどの様に制御しているのか気になります。
ミステリーペイアウトについては、「基本のペイアウト率を低めに設計し、特定の役の払い出しを表示よりも増やすか、表示されていない組み合わせでも払い出しさせる事でペイアウト率を調整可能とする。表示よりも多く出るのだからミステリーペイアウトと書いておけば矛盾しない。」と考えたのではないか、そんな気がしてきました。
この機械にはベルが装備されておらず、ジャックポットが出ても、通常のコインチューブから20枚のコインを払い出すだけですので、プレイヤーは係員を呼び出す必要があります。
ワタシの手元にある機械にはジャックポットチェンバーが無いので、投入されたコインの流れがどう異なるのかがよくわかりません。youtubeでジャックポットチェンバーの仕組みを解説している動画がありました。英語なので何を言っているのかはよくわからず、まだすべてが解明されるわけではありませんが、ある程度まではわかる、なかなか良い動画でした。
https://www.youtube.com/watch?v=DaqnR9lmX3s
セガは後にミステリーペイアウトを外した機械も売り出しているので、正確に払い出すことは可能だったと思います。いろいろな意味でミステリーなフィーチャで困ります。
I have a Mills High Top near my desk and sometimes when I am frustrated I will get up and put 10 nickels through it. These machines are a mechanical pleasure.
I have very little mechanical knowledge so I touch the machine with afraid.
If I take it disassemble or break something, I definitely won't be able to fix it.
BTW, do your Mills machine pays proper number of coins?
My one delivers two more 10-yen coins than proper number when hit the Orange or greater.