旅限無(りょげむ)

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中国洗浄法 其の参

2006-03-18 02:06:28 | 外交・情勢(アジア)
■3月17日の読売新聞が、「中国が反資金洗浄法」という題名の記事を国際面に掲載しています。

…2005年1月、中国4大商業銀行の一つ、「中国銀行」の黒龍江省ハルビン分行河松街支店の高山・支店長が、顧客の預金約8億元(約120億円)を横領してカナダに逃亡した。当時、中国国内で「高山事件」として大々的に報じられたが、容疑者は現在も逃亡中だ。

■またもや黒龍江省ですなあ。アムール河は汚染で得たいの知れない泡が消えなくて対岸のロシアは怒っているし、こんな大泥棒も出るしで、日本の若くない男の嫁さんにでもなって脱出したくなるのも分からないでは有りません。昔、哲学者のフリードリッヒ・ニーチェはこんな事を言いましたなあ。


どんなに注意深い男でも、女は袋詰めのまま買ってしまうものだ。

■開けてビックリ、チャイニーズ袋というわけでしょうか?ビザと結婚証明書を手に入れて、来日して暫くしたら行方不明などという不法移民の隠れ蓑に日本の嫁不足を悪用する輩もいるようですから、ご用心、ご用心。何事も「地獄の沙汰も金次第」が通用する国から来る人には、日本の呑気な民百姓には計り知れない闇が有ると思った方が良さそうですなあ。留学生の世話をしても同じ目に遭う保証人も多いのですが、日中友好の国策を慮(おもんぱか)ってか、余り大々的には報道しないようです。「井戸を掘った人の恩義は忘れない」と言うのも、自分の都合の良い時にだけ使われる外交辞令で有る事を忘れては行けませんぞ!


(黒龍江省)の地下銀行は朝鮮族の経営で、表面上は小規模な日用雑貨店、航空券や電話の販売などを営んでいるが、裏では韓国の通過ウォンと人民元との両替や海外送金などを仲介、年間の総取引額は300億元(4500億円)にも上っていた。

■こういう国を相手にして、人民元を切り上げるの上げないのと交渉している人達は、一体、何を目安に話をしているのでしょうか?高級寿司屋の「時価」と同じで、ブラック・マーケットは国際関係を敏感に繁栄して動くものですから、どちらの為替相場が「本物」なのかは、最終的には流通量で決まります。ソ連崩壊直前の東欧諸国など、何種類も為替相場が有って何が何だか分からなくなり、仕舞いにはただの紙屑同然で、アメリカ煙草の方が信頼出来る貨幣になっていましたなあ。それが平壌でせっせと偽煙草を製造している理由ではないでしょうなあ。日本の外務官僚達も、こうした為替事情を知っていて、本国から支給される給与や手当てをしっかり膨らませて蓄財するのだと、ムネオ議員が暴露しています。北京の日本大使館でもお盛んなのでしょうか?


…2004年には前年の5倍に当たる155業者を摘発、05年1~10月に42業者を摘発した。だが、地下銀行は「違法経営罪」(刑法225条)には問えても、資金洗浄罪(刑法191条)は適用しにくい。中国の刑法では、資金洗浄罪の構成要件が厳しく、①麻薬②テロ③密輸④暴力団組織犯罪――に関係する資金移動について、「故意に」資金の出所や性格を隠したことを立証できなければ、犯罪が成立しない。

■要するに、今までは地下銀行の利用は自由だったという事です。中曾根さんが気前良く「10万人留学生招致」などと恐ろしい事を言い出してから、日本と大陸の間には地下銀行のパイプが無数に生まれて、どれだけの非合法な収入が送金されたか誰も分かりません。国際電話の通話料が安くなり、インターネットの時代になれば、実際には現金を動かす必要の無い地下銀行は大繁盛です。どんな理由であろうと、地下銀行を取り締まる!と北京政府が宣言していたら、日本への不法な出稼ぎはぱたりと止んだかも知れないのです。何を今更!と言うべき事態ですぞ。面白いのは、地下銀行を経由して送金されたカネは全部が非課税になるという点です。地下銀行自体が非合法な組織が運営しているのですから、送金を受けた者が税務署に申告するはずが無いのです。そんな穴だらけの税制で、税収不足で貧困状態に苦しんでいるから、ODAが必要だ!と平気で言える国なのですから、油断はなりませんぞ。

■4種類だった「資金洗浄罪」を増やしたのだそうで、「腐敗犯罪」と「金融詐欺」の2つを加えて6種類の罪が問われるのだそうです。しかし、違法入国して荒稼ぎしたカネを実家や親戚に送金する事は罪に問われないようですなあ。「世界の工場」やら「世界の金融センター」になるのは良いとしても、世界の「地下銀行」になられたら堪りませんぞ!


上海外国為替市場で、人民元と直接交換できるのは米ドル、日本円、欧州ユーロ、香港ドルの4通貨だけ。換金需要の高まっている韓国ウォン、台湾ドルは、米ドルなどを介してしか換金できず、手続きが煩雑で、費用も時間もかかる。このため、中国の韓国系企業も地下銀行を経由して韓国の本社と資金の遣り取りをするケースが多い。違法為替業者の撲滅には、まず換金の自由化など為替制度の整備が先決のようだ。

■これは話がまったく逆でしょうなあ。「地下銀行」が便利で活発に動いているからこそ、誰も使いたくないような「煩雑で時間と費用がかかる」正規の為替業務が改善もされずに放置されているのでしょう?正規と闇と、どちらが表やら裏やら分からない恐ろしい仕組みが完成しているのです。こんな危なっかしい経済基盤の上に、「共同体」を構築しようとなどと酔狂な事を言って得意になっている困った学者や政治家が居るのですから、本当に嫌になりますなあ。

■中国に必要なのは、「反資金洗浄法」などという役にも立たない法律ではなくて、国を丸ごと洗い清める「中国洗浄法」なのではないでしょうか?でも、本気で洗ったら汚い水がどんどん外に流れ出してしまいますなあ。嗚呼、困った。世界的なメーカーになっている日本の自動車や電機製品の一流会社が、中国に生産拠点を作ろうと熱心ですが、決算や送金はどうする心算なのでしょう?まさか、外務官僚の手引きで裏の闇マーケットで為替の利鞘を稼いで甘い汁を吸おうなどと思ってはいますまいな!?自国通貨を信頼していない国との取り引きは、余ほど注意深くやらないと、エライことになりますぞ。

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中国洗浄法 其の弐

2006-03-18 02:05:47 | 外交・情勢(アジア)
■中国に開いた大穴の実態を1月9日のFujiSankei Businessから引用してみましょう。

非合法な民間金融「地下銀行」の中国での融資規模が昨年末現在で、7405億~8146億元(約10兆3670億~11兆4044億円)と、正規の金融機関による融資規模の3割近くに上ることが初の実態調査で明らかになった。中国では、国有商業銀行などから融資を受けられない中小企業や個人が高金利の地下銀行に依存する傾向が強まっており、不正資金の温床や金融政策が機能しにくい原因となっている。

■日本にも莫大なアンダーグラウンド・マネーが蠢いていると言われますが、正規の経済の3割になどはならないようです。こんな闇金融が活動していたら、計画経済など成り立つはずが有りません。簡単に言ってしまえば「闇金融」が国家の経済政策に支障を来たすほど巨大化しているという事です。


新華社電によると、この調査は北京の中央財経大学が実施した。全国の20省の82市・県および206村の中小企業110社、個人事業主1203人に対して直接調査したほか、金融機関や司法当局からも聞き取りした結果をまとめた。中国の地下銀行の実態を明らかにしたのは、この調査が初めて。 それによると、中国政府が昨年4月からの景気過熱抑制策として、資金の供給などを抑えている炭鉱や石油、鉄鋼、セメントの分野での調達資金の多くが地下銀行から出ていることがわかった。政府の金融引き締め策の影響で昨年から、地下銀行の活動が活発化している実態が浮き彫りになった。

■つまり、政府がいくら金融政策で赤字企業を整理しようとしても、闇から湧き出す黒いカネで延命してしまうという事です。しかし、慢性的な赤字企業は高利貸しから得た資金をどうやって返済する心算なのでしょう?結局は地方政府の役人と結託して違法な税金を取り立てて返済に回して貰うしか無いでしょうなあ。逆に、政府が投資した予算も、この大穴に投げ込まれたら二度と戻っては来ないのでしょう。どうやって帳簿を調整していることやら。


金融引き締めにより、商業銀行などから融資が受けにくくなっている中小企業経営者の約3分の1や農民の半数以上が地下銀行から資金を調達。また、正規の金融機関に対する地下銀行の融資額の割合は、黒龍江省が53・4%と全国で最も高かったほか、遼寧省や福建省、山西省が30%を超えていた。

■沢山ある中国の省の中でも、黒龍江省はすっかり日本の皆さんに馴染み深い地名になってしまいましたなあ。千葉県の農家に嫁いで来た整形エステ嬢の鬼嫁さんの故郷です。上の省政府が闇金融からの借金で省予算の半分以上を賄っているのですから、手段を選ばず海外に逃亡しようとする娘さんが出て来ても何の不思議も有りません。そんな場所に大金を払って嫁探しに行く人こそ、良い面の皮、葱を背負ったカモでしょうなあ。どうしても農家の嫁不足解消には大陸からの花嫁が必要ならば、出身地別の離婚率や家庭争議のサンプルを集計するべきでしょう。少しはリスクを回避できるかも知れません。


中国証券報は、中国では地下銀行が一定の役割を担っていると指摘。浙江省など沿海部では中小企業でも正規の銀行との取引比率が高いが、地方や農村では地下銀行に依存せざるを得ないと分析するとともに、地下銀行から高利融資を受けた企業が株式投資に失敗し、巨額の損失を出したケースを紹介しリスクの高さを警告している。一方、中国国家外貨管理局は地下銀行がマネーロンダリング(資金洗浄)の温床になっているとして、公安省と協力。昨年1年間で地下銀行や取引場所47カ所を摘発し、3300万元(約4億3400万円)の現金を押収した。これらの地下銀行が関与した資金総額は100億元(約1400億円)にのぼるという。このほか、同局は2000あまりの銀行口座で1億7000万元(23億8000万円)相当の資金を凍結しているが、これらは「氷山の一角」(同紙)とみられている。

■眩暈(めまい)がするような天文学的な闇金融の規模です。高利貸しから借金して株に投資している企業まで居るのなら、これはもう市場経済の末期症状です。もしも株で儲けても決して従業員には還元されず、経営陣は持ち逃げしてしまうのでしょうし、失敗したら夜逃げ騒動の末に、大量の失業者が吐き出されるのでしょうなあ。しかし、この闇の大穴は海外に通じる穴でもあるので、中央政府はほとほと困っているようです。