旅限無(りょげむ)

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やっぱり出たかテポドン3 其の弐

2006-03-10 18:59:04 | 外交・情勢(アジア)
■北朝鮮のミサイルが米軍基地に加える圧力は、中国が台湾に向って700発の短距離ミサイルを配備を完了したという話と相俟って、平壌と北京との腹の探り合いと、そこにワシントンが引っ張り込まれての権謀術数が展開されていると考えるべきでしょうなあ。上海の総領事館で、色仕掛け事件を起こしているマヌケな国など蚊帳の外に置かれているのは当然と言えば当然ですなあ。急に米国が日本人拉致事件に同情的になっているのも気になります。日本政府がだらだらと相手のペースに乗せられて時間を浪費している間に、米国に利用されると分かっていても、「どうぞ宜しくお願いします」としか言えない日本の立場は絶望的です。

またベル司令官は、「国連軍司令部の役割を拡大させる必要がある」と主張し、「国連司令部を実質的かつ恒久的多国籍連合機構に発展させていく方針」と明らかにした。これは今後の南北交流の増進と停戦協定を平和協定に代替する過程で、国連司令部の韓半島停戦態勢の維持および監視の役割を強化するという意味として受け止められる。なかでも、韓国軍の戦時作戦統制権の回収以降、国連司令部が解体または大幅縮小になる可能性が高いと予想されてきたが、米国側は当分の間、国連司令部の機能をかえって強化する考えがあるものと受け止められる。

■何処かの大学で、「朝鮮戦争は終結した」と入試問題に書いてしまったニュースが有りましたが、在韓米軍は飽くまでも「国連軍」の旗を持ったまま駐留している事を忘れて、「国交正常化」の夢を見ている日本政府も似たような勘違いをしているのかも知れませんなあ。


国防部の高位関係者は、「ベル司令官の発言は、国連司令部の再編計画を明らかにしたわけではなく、今後、京義・東海線の鉄道・道路の通行が増える場合、(非武装地帯を管轄する)国連司令部が役割をきちんと果たせるように国連司令部の要員を増員するという観点からの発言」と説明した。また同関係者は、今年6月の完成をメドに建てられている韓国海軍第3艦隊基地には、核推進航空母艦が停泊できる埠頭が含まれていると明らかにした。 尹光雄(ユン・グァンウン)国防長官はこれについて、記者懇談会で「米国の航空母艦の停泊を念頭に置いて(第3艦隊埠頭を)作ったのではない。ベル司令官が可能性に言及したかどうか分からないが、米国のためではない」と述べた。

■イラクを攻撃した時と同様に空母を投入してピンポイント爆撃を敢行する計画のようですが、相手は何でもかんでも地下に埋めてしまう要塞国家ですから、本気で中枢を叩くには開発中の小型核弾頭を付けた地下貫通型の兵器を投入しなければならないはずですぞ。


ベル司令官は戦時作戦統制権に関連し、「韓国政府は最近、軍の作戦統制権の改正を要求した」と前提した後、「現在、同等な立場にある韓米両国間の役割分担構造は、今後は韓国軍が主導することになり、米軍が補助する形に変わるだろう」と見通した。ベル司令官は、「韓国軍が独立的作戦統制権を行使する場合、米軍は空軍と海軍を中心に支援するだろう」と付け加えた。この他ベル司令官は、「韓国の適切な防衛費分担の意志が、米軍の韓国駐留を望んでいるかどうかを判断できる尺度」と述べ、前任の在韓米軍司令官たちのように、韓国の防衛費分担金増額の主張を展開した。
朝鮮日報

■生意気な事を言ってないで、用心棒代をきちんと払えよ!という意味でしょうが、日本という悪い手本が有るので韓国も無下に断わるわけにも行きませんなあ。韓国版「思いやり予算」を分捕らないと、軍事予算が間に合わない米国の事情も有るでしょうが、日韓関係が妙な具合になっていると、米軍が独断専行する危険性が高まりますなあ。


ベル在韓米軍司令官は9日、下院軍事委員会で証言し、北朝鮮が7日に発射実験を行った短射程弾道ミサイルについて、「固形燃料ミサイルで、北朝鮮がこれまで生産してきた形式に比べはるかに高性能」との見方を明らかにした。同司令官は「固形燃料ミサイルは、移動が容易で、命中精度も高い」と説明、「北朝鮮は定期的に実験を行っている」と述べた。その上で、「ミサイルシステムがうまく機能すれば、買い手がいるだろう」とし、輸出に乗り出す可能性を指摘した。時事通信 - 3月10日

■「これまでに生産してきた形式に比べ遥かに高性能」という言い方にはトゲが有りますぞ!一体、何処からそんな新しい技術が入ったと言うのでしょう?『正論』4月号の論文には、こんな一節が有ります。


…テポドン打ち上げの前後、あたかも「打ち上げ前の準備」から「打ち上げ後の処理」までを懇切丁寧に指導するかの如く、両名ともおびただしい回数、北朝鮮を訪問し、ときには一緒に帰国しているのだ……。

ここで言う「両名」とは、東京大学生産技術研究所に所属し、連名で米国の動力機械学会賞を受賞しているロケットエンジンの世界的権威の在日科学者なのだそうです。


在韓米軍のベル司令官は9日の米下院軍事委員会で、北朝鮮が開発中と指摘されていた新型の大陸間弾道ミサイルについて、「テポドン3」の名称を初めて挙げ、開発を継続しているとの見方を示した。新型ミサイルに関して、米政府機関がこれまでにも偵察衛星などで情報を入手していたことが明らかになっているが、軍高官として公式に証言した。同司令官は、北朝鮮が8日に発射したミサイルについては短距離弾道ミサイルとし、「固体燃料を使い、これまでより飛躍的に進歩している」と言明した。共同通信 - 3月10日

■日本のロケット開発の技術者達が、固体燃料に固執しているのは有名な話でH2シリーズはその成果とされていますし、コスト面では問題が有っても輸送力には定評が有って、「何でも」弾頭に載せられるそうですなあ。米国に巨大な予算を提供して、迎撃ミサイル・システムを共同開発するよりも、攻撃用の弾道ミサイルを揃えた方が安上がりかも知れません。「対話と圧力」などと相手にも自国民にも分かり難い事を言っているよりも、遥かに分かり易いメッセージを相手に伝えられるのですが……。アホ面して原爆の流れ弾を受けるのだけは御免被りたいものです。

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やっぱり出たかテポドン3 其の壱

2006-03-10 18:58:22 | 外交・情勢(アジア)
■『正論』4月号に、ジャーナリストのウラジミールさんが『謎の組織「科協」に迫る』という恐ろしいレポートが掲載されています。1月24日に日本の陸上自衛隊が開発した最新型地対空ミサイル・システムに関するデータが流出した事件の裏側を検証した内容です。「科協」というのは「在日本朝鮮人科学技術協会」の略称で、北朝鮮のミサイルも核開発も日本から流出した技術によって生まれ、現在の段階にまで発展したのではないか?という疑惑を1970年代からの資料を元にして検証しています。

■これを読むと、拉致事件も偽札事件も小さな問題に見えて来るようなトンデモない事が起こっていたらしいと驚かされましたが、その記憶が薄らぐ前に、北朝鮮がミサイルを発射したというニュースが入ったので、何とも嫌な感じがしましたなあ。


マクレラン米大統領報道官は8日、北朝鮮が中朝国境地帯でミサイルを発射したとの情報について記者団に対し、「2発の短距離ミサイルを発射したようだ。北朝鮮は過去にも同様の実験を行ったことがある」と述べ、誤射ではなく、実験と認識していることを明らかにした。国務省高官は同日、ミサイルが発射されたのは、ニューヨークで金融制裁をめぐる米朝協議が行われたのと同じ7日だったと指摘、「北朝鮮の意図は不明だ」と述べた。実験場所など詳細については言及を避けた。一方、米政府高官はミサイル発射に関し「北朝鮮領内を出ていない」と述べ、発射と着弾場所は同領内との見方を示した。共同通信 - 3月9日

■「中朝国境」と言っても、西の渤海湾側ではなく、日本海側、つまりロシアに近い海岸から岸に沿って海上に発射したようです。やはり、西に向けては実験と言っても打てない事情が有るのでしょうなあ。日本海側には米国のイージス艦が居ますし、偽札やら麻薬やら一方的に責め立てられる米朝協議に苛立っている頃でもありますから、実験自体に驚きは有りませんが、イランとイラクでもたついている米国を揺さぶろうとしているのでしょうか?


米国防総省ミサイル防衛局は8日、日米両政府が共同開発を進める次世代ミサイル防衛の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)で、初めての共同飛行実験をハワイ沖で実施。日本の独自技術を生かしたミサイル先端部分の覆い「ノーズコーン」が正常に作動したことを確認、実験に成功したと発表した。日米は1998年に日本列島の上空を飛び越えた北朝鮮の弾道ミサイル「テポドン」発射をきっかけに次世代の共同技術研究を開始、昨年開発段階移行で合意した。今回初めての実験に成功したことで、ミサイル防衛計画は実用化への新段階を迎え、今後の計画にも弾みがつきそうだ。
共同通信 - 3月9日

■この実験の内容を事前に察知しての発射実験だとしたら、複数のミサイルを同時に発射して迎撃不能の攻撃力を誇示した可能性も考えられるのではないでしょうか?莫大な予算を注ぎ込んで迎撃ミサイルを開発しても、百発百中のシステムの完成にはまだまだ長い時間が掛かるとも言われている日米共同で進めている迎撃兵器を嘲笑っているのかも知れませんが、攻撃は最大の防御という戦いの原理に変わりは無い事を見せ付けているようにも思えます。相手の保有するミサイルを全て撃ち落す為には、一体、何倍の迎撃ミサイルを用意しなければならないのか?どう考えても攻撃側の方が安上がりで済みそうですなあ。


北朝鮮がグアム・沖縄の米軍基地を攻撃できる中距離弾道ミサイルの実戦配置を準備しているという証言が出てきた。 今年初めに赴任したベル在韓米軍司令官は7日(現地時間)、米上院軍事委の聴聞会でこのように証言した。ベル司令官は「北朝鮮がグアム・沖縄はもちろん、アラスカにある米国施設まで到達しうる中距離弾道弾ミサイルの実戦配置を準備をしていることを示唆する報告がある」と述べた。ベル司令官が述べた中距離弾道ミサイルが正確に何を指しているかは確認されなかった。

■今年1月に日本の陸上自衛隊から流出した情報が「中距離地対空誘導弾システム」に関連したものだった事は確認されていますが、それ以前にどれだけの情報が盗み出されているのかは分かりません。発射実験について小泉首相は「情報収集はきちんとしているから大丈夫です」と答えていたようですが、本当でしょうか?自衛隊が使用しているコンピュータに情報交換ソフトの「ウイニー」が植え込まれていた事を知ったのも極最近でしょうし、一体、何がどれだけ流出したものやら、小泉首相も知らないのではないでしょうか?


軍事専門家らは、北朝鮮が射程距離2000~4 0000キロのテポドン1号ミサイルと同じ距離のBM-25ミサイルを保有していると把握してきた。この2機種は米軍の核心基地がある沖縄に到達できる中距離弾道ミサイル。まだ実戦配置はされていないと知られている。
中央日報 3月8日

■同盟国の米軍でさえ、ミサイル配置の全貌を把握していないのならば、日本の防衛庁が持っている情報など微々たるものなのではないでしょうかな?仮に、米軍が更に詳細な情報を持っていたとしても、穴の開いたコンピュータ・ネットワークを平然と使っているような日本に教えてはくれないでしょうし、北朝鮮の軍事技術の相当部分が日本から渡っている事など当の昔から知っていて、きっと呆れ返っているのでしょうなあ。以前のクリントン政権が「経済援助してくれたら核開発はしない」と言う北朝鮮に騙されたと知って攻撃準備に入った時にも、日本は遮二無二反対したばかりか、妨害に等しい動きをしたそうですから、ブッシュ大統領は日本に何も相談も無く、「やる時はやる」のでしょう。

■グアム基地が北朝鮮のミサイルの射程内に入り、中国の潜水艦がグアム島を何周かして見せるというのは、第二次朝鮮戦争は半島の外にも戦場を広げる可能性さえ伺わせますぞ!先の戦争では中国人民解放軍からの支援と補給を絶たねば勝てない、と考えたマッカーサーは旧満洲に原爆数個を投下する必要性を訴えて解任されましたが、立場が逆になる中国は韓国を支援する沖縄やグアムの米軍基地を躊躇無く攻撃するでしょう。そうなったら小泉総理は、「感動した」とでも言うのでしょうかなあ?


バーウェル・ベル在韓米軍司令官(陸軍大将)は7日、北朝鮮が射程距離1300キロメートルのノドン(蘆洞1号)ミサイル200基と韓半島(朝鮮半島)全域を攻撃できるスカッドミサイルを600基以上保有していると明らかにした。ベル司令官は米上院軍事委員会の国防予算審議聴聞会で、「北朝鮮が沖縄、グアム、あるいはアラスカに位置する米国施設まで優に射程距離とする新型弾道ミサイル(IRBM)を実戦に配備する準備を行っているという報告があった」としながら、このように明らかにした。在韓米軍の司令官が、北朝鮮のノドンミサイル保有の規模を公開したのは今回が初めてで、600基というスカッドミサイルの数は、2004年から2005年の議会・聴聞会で報告された当時の500基から100基増えたもの。

警察に頼れないとは頼りない 其の弐

2006-03-10 14:09:52 | 社会問題・事件
■電車の増発にも限界が有るようですし、都市に人口が集中し過ぎているとは分かっていても、これを拡散するのは不可能なのでしょうなあ。都市生活で最も不愉快な超満員電車を、唯一の楽しみにしているのが痴漢常習者なのでしょうが、それほど莫大な人数とも思えませんが、「女性専用列車」などという恥曝しなサービスが必要になるほど被害は多いのは確かなようです。こうした愚か者はきちんと処罰して反省させないと社会秩序が維持できませんから、びしびし摘発するべきですが、ひどい混雑の中で起こる犯罪ですから、勘違いや不可抗力も有るでしょう。

■触られた方も嫌な気分になるでしょうが、何もしていないのに卑劣漢の濡れ衣を着せられる方も大変な迷惑を被りますから、警察の皆さんには慎重な仕事を熱望します。冤罪が発生する原因は、警察の無能を強引に誤魔化そうとする姿勢に有るのですから、猛省を促したいですなあ。有給休暇を取るのも遠慮しなければならない日本で、105日間も拘留されたら元の生活になど戻れない事は警察関係者も知っているはずです。


岡山、愛媛両県警でファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を導入した私物パソコンから捜査情報が流出した問題で、警察庁の漆間巌長官は9日の定例会見で「京都府警が著作権法違反の疑いがあると摘発したソフトを職員が利用するなど、警察職員として信じられない事態」と厳しく指摘した。警察庁は、04年3月に京都府警で起きた流出問題を受けてウィニーの利用禁止と削除を通達したが、今回の両県警を含めて2年間で計7件が発覚。

■米国映画には、応酬した麻薬を横流しして稼ぐ悪徳警官などが登場しますが、摘発した違法ソフトで自分達の情報を漏洩させるとは、何ともマヌケな話です。摘発側がこの程度では、ハッカー犯罪は野放し同然でしょうなあ。自衛隊の情報流出が大問題とされているどさくさに紛れて処理してしまおうと思っても、そうは行きませんぞ!


漆間長官は「インターネットを利用すれば、ウィニーに限らずウイルスに感染する危険性が高いという認識が甘い」と述べ、公務用パソコン導入などハード面の整備を進めても「危険性を28万人の警察職員が共有しなければ再発の恐れはある」との認識を示した。同庁は7日付の通達で、公務で使用するパソコンにウィニーがないことや、個人のパソコンに捜査情報が入っていないことの緊急点検を指示。今月31日までに証明するハードコピーや確認書の提出を求めている。毎日新聞 - 3月9日

■自衛隊の事件でも、個人用のパソコンを防衛業務に使っていたのが原因とされているのですが、警察も同じ事をしていたとすれば、IT後進国の汚名は免れませんなあ。次は「絶対に安全だ!」と総務庁が太鼓判を押した住民基本台帳からの流出が発覚するのでしょうか?


茨城県警牛久署は10日、同県阿見町うずら野、警視庁千住署の巡査部長、桑原英男容疑者(50)を傷害の疑いで逮捕した。調べによると、桑原容疑者は9日午後10時10分ごろ、同県牛久市のJR常磐線牛久駅ホームで、同市内の男性会社員(56)の顔を殴り、軽傷を負わせた疑い。桑原容疑者は特急列車で帰宅途中、禁煙場所のデッキで喫煙していたところを会社員に注意され、口論となった。調べに対し、桑原容疑者は「酒が入っていて、よく覚えていない」などと供述しているという。有吉正典・千住署長は「今後職員に対する指導、教養を徹底したい」とするコメントを出した。
読売新聞 - 3月10日

■怖いから注意できない市民に代わってマナー違反を注意するべき立場の警察官がこれでは、ますます喫煙者の肩身が狭くなりますなあ。正気を失うほど酒を飲んでしまう警察官がいるのなら、くれぐれも拳銃を自宅に持ち帰るような事はしないで貰いたいものです。かっとなった警官が脇の下からピストルを抜いたりするのだけは勘弁して貰いたいですなあ。

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警察に頼れないとは頼りない 其の壱

2006-03-10 14:08:42 | 社会問題・事件
■幼児が残虐な犯罪に巻き込まれたり、老人が詐欺の食い物にされたり、若い女性がストーカー犯罪やらセクハラ事件やらに巻き込まれる、何かと物騒な世の中で一般庶民が頼れるのは警察だけなのですが、これがどうも頼りにならないような事件が並びました。近所に信頼できる交番や駐在所が有る人は稀に見る幸運な日本人という事になるのでしょうか?

職務質問を巡るトラブルから埼玉県戸田市の男性(35)に発砲し、重傷を負わせたとして、同県警は10日、蕨署の男性巡査部長(54)を業務上過失傷害の疑いでさいたま地検に書類送検する。県警は巡査部長を懲戒処分にする方針。調べによると、巡査部長は昨年4月30日午前1時15分ごろ、同県蕨市錦町の市道で、男性の知人が無灯火で自転車に乗っていたところを職務質問。知人に呼ばれて現場に来た男性が巡査部長の胸ぐらをつかむなどしたため、数メートルの距離から発砲し、男性に重傷を負わせた疑いが持たれている。弾は男性の左胸を貫通した。
 
■ちょっと古い事件ですが、報道された当時も発生状況が飲み込めない奇妙な事件だった記憶が有りました。自転車の盗難事件に拳銃の発砲という組み合わせには、どうしても違和感が有りますからなあ。確かに、歩くには距離が有る通勤や通学に欠かせない自転車を盗まれた時の腹立たしさは、経験した人ならば誰しも同じですから、その市民の怒りを共有してくれる警察官には感謝と尊敬の念を禁じえませんが、丸腰で自転車に乗っている相手に向ってピストルを抜くというのは異常な話です。


巡査部長は県警監察官室に対し「拳銃を奪われると思い、撃った」と説明。これに対し、男性は「拳銃を奪うつもりはなかった」として昨年7月、巡査部長を殺人未遂と特別公務員暴行陵虐致傷容疑でさいたま地検に告訴したが、県警は「威嚇のため銃を抜いたが、あわてていて引き金に指をかけてしまい、誤って撃った」と判断した。読売新聞 - 3月10日
 
■これだけの記事だと、無灯火で乗っていた自転車が盗難品なのか、この男の所有物なのかが分かりませんが、仮に所有物だったとしたら、危険な無灯火運転を注意すれば済んだ話です。知人を呼び出すほどの恐怖を感じたとしたら、呼び止めた警察官の態度に行き過ぎが有ったとも思えますが、知人がやって来るまで男と警察は一緒にいたようですから、その間、どんな遣り取りが有ったのか、それも分かりません。「特別公務員暴行陵虐致傷容疑」とは随分と長い容疑名ですが、武器を持っていない相手に「威嚇のために銃を抜い」てしまう警察官には問題が有りますなあ。銃器が氾濫している米国ならば警察官自身の身を守るために何かと銃を身構えるとは聞きますが、日本でもそんな世の中になったという認識が警察署内には有るのでしょうか?

■警棒や手錠も携帯している警察官が、直ぐに拳銃を抜くのも恐ろしいのですが、この発砲が暴発や誤射ならば、ホルスターに入っていた拳銃の安全装置が外れていた事になりますなあ。普通は引き金に触れても動かないはずです。戸田市の警察官は、常に安全装置を外して拳銃を持ち歩いているとしたら、余り近くには寄りたくないですなあ。まるで、赤塚不二夫さんの漫画に出て来る無闇にピストルを乱射する「ホンカン」さんや、『こちら亀有公園前派出所』の両津巡査長を彷彿とさせます。まさか、この警察官の愛読書ではありますまいな?


電車内で女子高校生に痴漢行為をしたとして、強制わいせつ罪に問われた東京都内の男性会社員(43)に対し、東京高裁は8日、懲役1年6月、執行猶予3年とした東京地裁判決(05年1月)を破棄し、無罪を言い渡した。原田国男裁判長は「被害者は警察のずさんな捜査で被告を犯人と確信したに過ぎず、有罪と認定するには疑問が残る」と判断、「被告と被害者の主張を冷静に吟味していれば起訴に至らなかったのではないか」と捜査当局を批判した。

■地裁の有罪判決の方が問題なのですが、被疑者の人生を無茶苦茶にしてしまったのは杜撰な捜査をした警察だったようです。


…男性は03年10月、西武新宿線の新井薬師―高田馬場駅間で、女子高校生の下着の中に手を入れたとして逮捕、起訴された。04年2月まで105日間にわたり拘束され、現在も休職している。男性は「犯人は隣にいた別の男」と主張。弁護側は控訴審で、大きな腕時計をしていた男性が下着の中に手を入れることは不可能とする実験結果を証拠として提出した。判決は「第三者が犯人という可能性も排斥できない」と判断、「被告が受けた苦難を考えると、慎重な捜査を経たうえでの起訴が必要」と述べた。判決後に会見した男性は「自分と家族の一生がめちゃくちゃになったが無罪が出てうれしい。判決も捜査を批判してくれたが、しっかり調べもせずに逮捕する警察のやり方は許せない」と語った。毎日新聞 - 3月8日

■電車内の痴漢行為というのは、世界的に見ても珍しい犯罪のようですが、強姦や強盗とは違った不思議な犯罪ですなあ。一見暴力的ではないようにも思えるので、常習者が後を絶たないのでしょうが、被害に遭った女性は非常に恐ろしい思いをするそうです。アウシュビッツにユダヤ人を送り込んだ貨車でもあるまいし、朝夕の電車内は異常な混在に見舞われているので、実際に手のやり場に困る事も多いし、つり革やポールに手の届かない場所では隣の乗客に身体を預けてバランスを取るしか方法が有りません。「時差通勤」を勧めるポスターなども見かけますが、20分も30分も早く家を出るのは並大抵の苦労ではないので、そんなキャンペーンは無駄でしょうなあ。