同校幹部は「3年生が軽率なことをしてしまった。生徒の処分も含め3日の職員会議で今後の対応を協議したい」と話している。同校は1964年創立の仏教系私立共学校。甲子園には、春2回、夏5回の出場経験がある。昨夏の甲子園では57年ぶりの連覇を成し遂げたが、直後に前野球部長による3年生部員への暴力問題が発覚。日本学生野球協会は前部長に対し謹慎1年、野球部に対し警告の処分を下している。毎日新聞 - 3月3日
■高校野球大会を主催している毎日新聞と朝日新聞は、特にこういう報道の仕方をしなければならないのでしょうが、問題は「高校球児の飲酒」なのではなく、未成年者の飲酒喫煙なのではないでしょうか?どうせ報道するのなら、特段マスコミに注目された事などない生徒達が起こす不祥事を細かく取り上げた方が、青少年の育成に資することになるのではないでしょうか?頼みもしないのに、甲子園に出場したというだけで、あちこちの新聞がわざとらしく大きく取り上げる「商売」をしておいて、この種の不祥事が起こる度に大事件にしてしまうのは感心しませんなあ。大正時代からの伝統が有るのは分かりますが、既にサッカー人口の方が野球少年の数を上回っていますし、今回のトリノの冬季オリンピックでメダルが一個だった事実も根は同じでしょう。
■国のスポーツ政策にビジョンが無く、地方自治体には土地に合った種目に集中的に予算を投下する権限が与えられていないのですから、夏のオリンピックになれば「運動場が足りない」、冬のオリンピックが終わったら「スケート場が足りない」と騒いでも無駄でしょうなあ。子供達が走り回れる場所を数十年かけて潰しておいて、子供の運動能力が落ちている!と騒ぐのと同じです。野球もサッカーも水泳もスケートも、西欧から入って来た遊戯文化ですから、どれを中心にするかを決められないのが日本です。しかも、学生野球だけを特別扱いするようになったのは、優れて新聞社の思惑によっていたので、別に日本の国を挙げて維持発展させねばならない理由は有りません。
■テレビ局では野球中継が商売にならない事が分かっているので、放送時間をどんどん減らしているのではないでしょうか?都市部の公園に「キャッチボール禁止」の立て札を立てて、野球の将来を心配しているのは笑止ですなあ。猫も杓子もゴルフにカネを掛けて、日本中の里山を荒らしておいて、若い娘さんがプロとして人気を博しているのも、マスコミを挙げてそれを報道するのもイカガなものでしょう?学生スポーツを教育の一環だと言いながら、本音では就職活動の一部となっているのは問題です。欧米大学では、学生スポーツの花形選手でも、進級試験が甘くなる事など考えられないと言います。日本は「スポーツ推薦」だの、「スポーツ特待生」だのと奇怪な制度を認めて推奨しているのは変です。高校も大学も、勉学をする場所ですから、その本文を投げ捨ててサーカス団の動物のように「芸を仕込んで」使い捨てるような商売をしては行けません。
■スポーツ進学をして体を壊した学生の末路は哀れを誘います。「自分の名前が漢字で書ければ良い」という極端な冗談が実しやかに囁かれるような貧しい学習環境に若者を放置している教育行政は、スポーツ界に決して一流の人物を送り出すことは出来ないでしょう。学生野球の不祥事を書き立てるのなら、プロの有名選手達に大規模なアンケート調査をすべきです。「鉄拳指導は是か非か」「最初に喫煙・飲酒した年齢」「進学時に裏金は貰ったか」「学力試験に不正は無かったか」等、調べておくべきテーマは山ほど有ります。それを避けて、高校球児を追い掛け回すのは問題を陰湿化させるだけでしょうなあ。
青山学院大は22日、18日に実施した国際政治経済学部の一般入試A方式の日本史に出題ミスがあったと発表した。選択解答式の問題の中で、休戦状態の朝鮮戦争を「終わった」と記したためで、この設問について受験した957人全員を正解とした。受験生からの指摘で分かったという。合格発表は24日。毎日新聞 - 2月22日
■たしか、青山学院大学は、去年も英語の問題で沖縄の語り部さんに関するユニークな問題を出したのではなかったでしょうか?高等学部の方でしたか?沖縄からクレームが付いて平身低頭している報道が有りましたなあ。出題内容全体を見ると、出題された英文の極一部を切り取ってクレームの材料にされた事が分かりましたし、なかなかユニークな文章だった印象が有ります。今回の「朝鮮戦争」に関する問題も、何か含むところが有ったのでしょうか?もう、北朝鮮の命運は尽きているとか……。本当に歴史担当の教員が無知を晒しただけならば、ここでも教員の資質が厳しく問われねばなりませんなあ。
■進学競争もスポーツ教育の幻想も、そろそろ再検討の時期に来ているようですが、そもそも、教育とは何だろう?と考えていると、こんな記事が見つかりましたぞ。
埼玉県吉川市で金型加工業を営む島崎博さん(64)が3月3日、10代の同級生らと一緒に県立吉川高定時制を卒業する。3人の孫を持つ最年長の卒業生だ。家庭の事情で中学を中退した島崎さんにとって、高校卒業は半世紀にわたる夢。卒業式では、普段通り仕事用のトラックで登校する島崎さんに皆勤賞と県教育長賞が贈られる。島崎さんは、父親の病気のため中学2年で同市内の中学を中退。東京都内や同市内のプレス加工工場で働き、30代で独立した後も高校進学の夢を持ち続けた。知人の中学校長らのアドバイスで01年に国の中学校卒業程度認定試験、02年2月に吉川高校に合格した。
■人として生まれて、学ぶ喜びを知るのは大切な事だと改めて教えられる話です。卒業証書さえ手に入れば良い、という不毛な学歴信仰とは無縁の「学ぶ心」が滅びてはいない事の証左でもある話ですなあ。
仕事の後、トラックで約10分かけて同校に通った。渋滞する時間帯など道路事情を熟知する島崎さんは3通りの通学路を使い分け、4年間を無遅刻・無欠席・無早退で通した。76単位を取り、成績も上位。日本史が好きで教室でよく質問した。総合学習の時間は人生経験豊かな島崎さんの独壇場だった。使われずに自宅に眠っていたみこしをクラスメート15人と協力して修復し、地元の祭りで練り歩いた。ホタルの飼育やベイゴマなどでは先生役。同級生の井野根健太さん(20)と佐々木直人さん(19)の2人は「教えてもらうことが多く、いい思い出になった」と喜ぶ。増田貞男校長は「島崎さんの頑張りは、若い同級生の大きな励みだった」と話す。島崎さんは「長い道のりを経て、ようやく高校卒業の夢がかなった。周囲の皆さんのおかげです。学ぶことの大切さを忘れず、高校生活を心の糧として歩んで生きたい」と力強く話している。毎日新聞 - 2月22日
■美談仕立てのわざとらしさも有りますが、並べられた事実だけを見ると、人それぞれの生き方の中に「学ぶ喜び」がきちんと定位しているのが分かります。「不登校児」「引き籠もり」などと、一斉登校・一斉授業に拘って異常者扱いするよりも、学びたい時に学べば良い、という大きな前提を用意した方が良いでしょうなあ。但し、記事に出ている島崎さんも中学2年生までに培った読み書き能力が社会生活でも、今回の高校卒業にも大きく役立っている事を再確認しておくべきでしょう。規定の年齢で小中学校を卒業しても、漢字が使えないだの、割り算が出来ないの分数は勘弁してくれなどという、それこそ「異常な」生徒を輩出するような学校制度は見直すべきでしょうなあ。
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