「バーフバリ」のS.S.ラージャマウリ監督の新作。
大義を持った2人の英雄が出会い、偽りの身分のまま友情を結ぶが、
やがてその大義が激突し、苦悩に身を焦がされるという超直球な物語に、
恋や民族運動、あっと驚くアクションシーン、歌に踊り、信仰、
ありとあらゆるエンタテインメントをぶち込んだ娯楽超大作です。
インド独特の世界観と画作りが花開いて、実写とアニメと歌劇のハイブリットみたいな映像でした。
(英国完全悪なので英国贔屓の人にはつらいかも。あと痛いシーンはそれなりにあります)
温順な性質の森の部族を守る戦士ビームは、
英国の総督夫人に連れ去られた少女を取り返すためデリーに潜伏していたが
そこで鉄道爆発事故に巻き込まれ、飛び込んできた見知らぬ男と息の合った救出活動で
少年の命を助ける。
勇敢で優しい気性の男を好ましく思ったビームは男と親しくなるが、
彼は総督より直々に森の戦士を狩る役目を仰せつかった警官、ラーマだった…というあらすじ。
Wikipediaを見て主役2人が実在の人物だったことを知りました。
実際は出会わないまま亡くなっている独立闘争の英雄なので歴史IFものなんですね。
それで、どう見てもビームが年上だが兄貴…?と思ってましたが
実在のラーマがビームより年上だった。
Komaram Bheem (1900/1901~1940)
Alluri Sitarama Raju(1897/1898~1924)
映画を見てから2日経ってますが、まだこの曲が頭の中を回っています。
(わりと目玉のシーンなので、鑑賞予定の人は見ないほうがよい)
https://www.youtube.com/watch?v=OsU0CGZoV8E
ラストまでバレ
ダンスシーンもそうだし、肩車アクションシーンも、
「絶対に頭の中の画を成立させる!」という鉄の意志と技術の円熟を感じました。
人が思いついてもやらないことを、100倍派手にしてやり遂げている。
邦画だったらどういう映像になるかな…って想像するんですけど、
照れが入っちゃうと思うんですよね。あとまあ、しょぼくなるか、おとなしくなるか。
その辺に生えてる雑草でエリクサー生成か?とか、
ダイナマイトがあまりにも無防備かつええ感じに誘爆させる保管すぎとか、
マッリのお母さん生きてたにしては気絶した様子が死体すぎとか、
総督夫人その棘付き鞭は寝室で使用するやつなので?総督は毎晩豚なので?とか、
突っこむところたくさんありすぎますが勢いが強くてまあいいか…ってなります。
普通の映画だったら終盤の見せ場級のハイカロリーシーンが20分に1回くらいある。
今年見たドラマ「ミズ・マーベル」で分離独立が印象的に扱われていて、
それで先日の女王の逝去の時のインドの人たちの反応が理解できたのですが、
この映画の設定の数年あとが、
最近見た「ダウントン・アビー 新たなる時代へ」の年代なので
豊かで文化的な時代というのは搾取なしになりたたないのかも…
一切の搾取をやめると(奴隷労働搾取、女性の無償家事労働搾取、等々)全員慎ましい暮らしをするしかないのかも…
それが嫌な国が時代を逆行して隣国を侵略しているのかも…
などとちょっと考えました。
1点不満なのは、総督の姪っ子さん。尺を割かれなかったので、
保護者的な存在の伯父と伯母を殺した相手を笑顔でハグする少々謎めいた結末。
あと親しくなりたい相手の車を壊して困っているところに声を掛けるってのは野蛮だと思った。
ラーマが持ち掛けたアイディアを、ビームが「そんなことしてはいけない」と言って欲しかったかな。
ラーマとビーム、仲良くなっていくシーンがダイジェストだったので
なにかあのあたりのショートムービーがほしいところですね。特典とかね!そういうやつで。