映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「プリデスティネーション」

2015年03月13日 | SF映画

ロバート・A・ハインライン「輪廻の蛇」を
マイケル&ピーター・スピエリッグ兄弟が映画化。
タイムパラドックスものです。

ものすごくトリッキーな話なので
時間のほとんどをあらすじのために費やしてありますが、
ここだけは押さえておかなくてはいけない!というシーンには
たっぷりと時間を使ってあり、そして役者さんもとてもいい演技をなさっているので
全体的にびっくりさせられつつも切なさのある、いい映画化じゃないかと思います。

この兄弟監督の前作は、弟が兄に対して一方的に異様な愛情を抱く吸血鬼もの、
「デイブレイカー」なので、おたく的に注目監督。
今回兄弟ものじゃなかったので安心しました…。

時空警察のエージェントである主人公は、
ニューヨークで1万人以上を爆殺する爆弾魔を追っていた。
バーテンダーになりすまして店で働いている主人公の前に
青年が現れ、奇妙な身の上話を始めるのだった……というあらすじ。

内容ばれ

めちゃくちゃ沢山伏線を引いてくれているので、
大体途中で分かると思います。すごく親切です。
それぞれの年代の彼女の、彼の苦悩があるので、
びっくりトリックのための記号、という感じはしない。
オープンカフェでお茶を飲んでいるジョンとジェーンかわいかったです。
(わー、イケメンな俳優さんだな、誰だろう、と検索した…)

鶏と卵の話がそもそも最初にあるんですけど、
時空警察の干渉を受けていない状態での始まりはどこなんだろう…。
すごいぐるぐる考えました。

結局のところ飛びぬけて優秀な個体である主人公が
エージェントになってから残す膨大な業績が目当てで、
そのあとのデメリットについてはある程度放置、
そして被害を極小に抑えさせるという、
骨までしゃぶりつくす時空警察が鬼畜という気がします。

耳の形をずっと見てました。




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「アナベル」

2015年03月06日 | ホラー映画

「死霊館」に出てきた呪いの人形アナベルのスピンオフ映画です。
アナベルビギニングで、話は前作と繋がっていますが
充分単独で見られます。
ジェームズ・ワン監督からジョン・R・レオネッティ監督にかわりました。

第一子を妊娠中の若い夫婦。
幸福な生活を送る彼等だったが、
隣人の夫妻がカルト信奉者に襲われ無残に殺されたところから
何かが狂い始める、というあらすじ。

お化け屋敷的に、ばーん!と驚かしてくるので
カップル、友達同士で行ってきゃーきゃー楽しむの向け。
効果音が異様に大きいので、家庭の再生環境だと
会話が聞き取れなくて、ボリュームをあげたら
お化けのシーンで爆音が轟くパターン。
製作費の37倍の興行収入を叩きだしています。
ホラーは安く撮れるのが強み。
だいたい3倍で黒字と聞きますが、37倍だと何字だろう。

ラストばれ

ジェームズ・ワン監督・製作作品ではよく
人間の霊と悪魔がタッグを組んで出てくるのですが、
それぞれ所属の違うものだし対処法も違うし、節操ないなーと思っていました。
しかし今作は悪魔+呼び出した悪魔信奉者の霊という理由付けがあって納得。

おばけ出現演出で1つ見たことないパターンがあって、
遠くの部屋から(小)が走ってきて、よっしゃ、あれくらいならばっちこい、と思っていたら
直前の障害物で姿が隠れて、次の瞬間めっちゃ(大)が来て、
らめぇー!ってなるところなんですが(分からん)
手品や視覚トリックみたいな感じでよかったです。
私がお化け屋敷コーディネーターだったら、さっそく使うんだけどなー。
(小)の走る距離といい、(大)の出現場所の近さといい、走る速度といい完璧でした。
ホラーも数学なのかもしれない。あるいはリズム。

要求をかなえたら人質を返してくれるとか、
人間の犯罪者より悪魔の方が余程紳士的だなと思ったんですが、
友のために自分を犠牲にする尊い精神に、神は奇跡を起こす
というような説法が2回あるので、
もしかすると最後に救ってくれたのは神って言いたいのかもしれないです。
でもそれ、神が生贄を必要とするってことで却って怖いような…。

ホラー映画で驚き役が夫婦だと、進行の都合上
夫はすごいワンマンだったり、奥さんを全然信じなかったりしますが、
この夫さんはこれまで見たなかで一番草食系だった。
奥さんの希望は全部かなえてあげて、何でも言うことを聞いてあげる。
こんな都合のいい夫いるか?非実在夫なんじゃ?って疑ってました。

「死霊館」のときも確か書きましたが、
実際のアナベルはもっと単純な顔立ちの愛らしい人形です。
でも「見たら呪われる絵」とかとセットの画像があるので
検索には注意が必要です……。

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「フォックスキャッチャー」

2015年03月02日 | 実話系

実際にあった事件を元にした映画です。
デュポン財閥の相続人の1人ジョン・デュポンが
オリンピックのレスリング部門をサポートして祖国に貢献しようと思い立ち、
所有する土地にトレーニング設備を建設し、金メダリストを呼び寄せます。
ややメンタルの弱い選手マーク・シュルツと、
その兄で理想的な指導者にして弟の庇護者であるデイヴ・シュルツ。
うまくいくかに見えた彼等の関係は、やがて破綻し思わぬ悲劇を呼びます。

実際にあった出来事の時系列にやや手を加えて、
少々誇張したりはしつつ、でも基本的には実話に忠実に
監督の解釈を仄めかすという手法です。
ほとんど音楽のない映画で、沈黙するシーンが多く緊張しました。
顔の作りこみ、体型の改造含め、3人の演技がすごい。
マーク・ラファロさんは誰か別の俳優さんみたいでした。

ねたばれ

シュルツ兄は富豪の理想すぎた。
シュルツ弟は富豪を本当に尊敬して理解者だと信じていた。
兄は弟が可愛かったし家族が大切だった。
富豪は狂いかけていた。シュルツ弟を友人とも息子とも思った事もあったけど
そうじゃない時もあった。シュルツ兄になりたかった。
そんなシュルツ兄は自分を歯牙にもかけないように見えた。
シュルツ弟は、信じていた富豪も自分より兄に価値を見出したと思った。
そして自分は結局偉大な兄なしには何もできないと思い知った。

本当の尊敬や、精神の強さ、人徳、才能はお金では買えない。
普通の人間なら若いうちにちゃんと学ぶんだけど
富豪はあまりに桁外れのお金持ちだったので、
学習できないまま高齢者になった。
馬や高価な切手のように選手を収集し、尊敬を集められると思っていた。
母が見学に来た時にいいところを見せたくて選手の前で中身のない演説をして、
ほとんど素人同然なのに稽古を付けようとするところ、痛々しかった。
そのくせ彼は大事なアスリートにコカインをやらせたりする。
触れるものをみんな腐らせてしまう、おとぎ話の呪われた手の持ち主のようでした。
メンタルの弱いシュルツ弟とは混ぜるな危険。
シュルツ兄は心の強い、選手達からも子供や妻からも、誰より弟から信頼と尊敬を受ける
太陽のような、まさに富豪の理想そのものの男性ですが
いくら彼がキャパの広い男とはいえ、心を病んだ成人男性を2人も面倒見られない…。
1箇所だけ、富豪とシュルツ弟の疑似同性愛的な関係をちょっと仄めかすシーンがあります。

長々と書きましたが以上が映画の解釈で、
wikipediaでざっと読んだだけですが、実際のところは
統合失調症の妄想によるものなんでしょうね。
この人があそこまで異常なお金持ちでなければ、
たぶん周囲の誰かに強制的に病院に連れて行かれてこんな事にはならなかったのに。
病気は明白で、周囲の証言もあって、年齢も初老なのにどうして収監されちゃったんだろう。
すごい弁護団組まれそうなものだけど。親族に切られたとかかな…。
そしてこれデュポン財閥が映画化を差し止めるために法的措置を講じたりしなかったのか。

映画の写真と当時の写真を見ていると、どっちがどっちか分からなくなる。


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