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「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」

2020年01月29日 | 美学系

企画が難航し、何度も流れ、
キャストも変わり、けれど監督が根性で完成させた作品。

若手鬼才映画監督が、スペインで撮影中に、
かつて自分が学生時代に「ドン・キホーテ」を撮影したことを思い出す。
プロの役者は使わずに、現地の一般人に演じてもらったその作品が懐かしくなり、
監督は現場を抜け出して撮影した町に向かう。
しかし、主役を演じた靴職人の男が、
撮影をきっかけに自分をドン・キホーテと思い込むようになり、
またヒロイン役の娘も、セレブの仲間入りを夢見て都会に行き、
身を持ち崩したと聞き、主人公は罪悪感を持つ。
運悪く事故で警官を傷つけてしまった主人公は、
自称ドン・キホーテの狂人と旅をすることになるが…というあらすじ。

最近引っ張りだこのアダム・ドライバー氏が、ちょっと傲慢な若手監督を演じます。
監督の持ち味である絢爛豪華な怪奇シーンは健在で、スペインの風景も美しい。
微妙に原作に沿いつつ意外性のあるラストは良かった。
しかし、ギリアム監督作品を初めて見る人にとって
この作品はどうなのかは分からない。
年齢80歳近くでいらっしゃるので、女性のキャラクターはさすがに、まあその古い。

一瞬だけ犬の虐待シーンがあります。

ラストばれ

個性的な女性を描くのが巧いワイティティ監督作品を見たあとなので特に際立った。 
アイリッシュマンの時も思ったが、女性が妻・母・ヒロイン・娼婦のテンプレしかいない。
上手い女性キャラクターっていうのは、男性に変えても成り立つけど
なぜか女性の方がしっくりくる、そういう感じだと私は思う。

あと17世紀初頭のスペイン侯爵家を模した館で(たぶん)、
余興の巨大な山車を運んでくるのが、
アフリカっぽい腰蓑と扮装の男たちというのは少しやばい。
メインの登場人物女性2人は男性から暴力を受けており、
管理職らしき女はいない。暴力を受けている女は救済措置がなく
公衆の面前で夫の靴を舐めさせられる、これも少しやばい。
でも一番やばいのは、ムスリムの女性たちがニカブを取ったら
男性であることが分かるシーン、
「自爆テロだ!」って皆が叫んで警護がボスを体でかばう余興。

誰かなにか意見しなかったのか。
やばいというのはキレキレという意味じゃなくて、
大学生が糞便と性器しかジョークの持ちネタがないみたいな、その類のやばいです。

靴職人がドン・キホーテとして、若い娘を酔漢から助け、
狂気が芽吹くシーンはとてもよかった。
その狂気が継承されるところも。

靴職人の憑依型俳優ってもしかしてダニエル・デイ=ルイスと言いたいのかな?
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