映画の豆

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「ルーム」

2016年04月12日 | 実話系
監督レニー・エイブラハムソン
原作脚本エマ・ドナヒュー
(カナダ・アイルランド)

地方の、裕福でない普通の母子の話の体裁で映画は始まります。
なのでこの映画をご覧になるおつもりの方は下記あらすじを
読まれない方がいいと思います。

けれど少しずつ妙な部分が目立ってきます。
小さな部屋の扉がやけに重くて頑丈そうなこと、
「父親」が帰ってくるときに電子機器を操作するような音がすること。
「父親」が帰ってくると、子供はクロゼットに押し込まれてしまうこと。
母親と子供が一切外出していない雰囲気。
そしてとうとう、母親が17歳の時に誘拐されて
7年間監禁されている女性で、子供は犯人の子であるというのが分かります。
ある日、誘拐犯が失業して生活が困窮し始めたことを知った母親は
身の危険を感じ、決死の脱出を試みます。

かなり厳しいあらすじですが、犯人は完全に脇役で
舞台装置に等しく、役目が済んだらすぐに姿を消します。
メインは母と子の濃密な関係と、
極限状況から生還した被害者がさらされる世間のあらゆる反応、
立ち直って行く過程なので、身構えていたほどは落ち込まなかったです。

息子役の子が美少年で、予告の段階では女児だと思ってました。
監督も、思わずぐいぐい撮ってしまった!(そして編集でカットできなかった!)
という感じのシーンが散見されます。

内容ばれ
・部屋の中とテレビしか知らなかった子供が経験する、
 絨毯が広がるように果てなくどんどん拡大していく世界が
 すごく不思議できらきらして見えました。 
・脱出の過程はドキドキしました。あの警察官の女性、
 スーパー推理コンボが決まりまくりで、何か別の連ドラの主人公様じゃ?
 と思いました。
・監督の前作「FRANK フランク」とは、あらすじも台詞も進行の早さも
 現実度も何もかも違う。
・犯人の息子でもある自分の孫をどうしても受け入れられない父親、
 というのがリアル。
・「人に親切にしなさい」って教えられてきたから、
 犯人に「病気の犬を助けてくれ」って言われてついていった!
 私がいなくなっても普通に暮らしていたくせに!
 っていう被害者からの、親への叫びもリアル。
・主人公の女性の母親と現在のパートナーが、
 優しい…の一言では片付けられない、心の強い人達で良かった。
・監禁期間は確かに地獄で、こちらの世界こそが正常で健全なんだけども
 けれど「ルーム」は母と子だけの親密な時間で、
 あそこにはもう戻れないと知っていても
 母も子も、少し甘く懐かしく思うニュアンスもあった。
 (あと現実世界が厳しすぎた)
 子にとっては胎内回帰願望というか、産まれなおした感じ。
・この映画のモデルになった実際の事件は犯人が父親で、
 母親も協力していたという更に救いのない内容で、
 でも西でも東でも昔も今もこの手の事件ってずっと起こり続けているので
 異常な犯人による犯罪!と一時的に騒いで終了っていうのをやめて、
 本能的に監禁飼育したいものなのだということを全員認めて、
 恒久的に防止できる策を考えた方がいいと思う。
 申告している人数(戸籍と照合)よりも電気ガス水道の使用量の多い住宅には
 チェックが入るって手段しか私は思いつかないけど
 もっとローコストの方法を頭のいい人なら考え付ける筈。
・この手の事件に限らず、陰惨な事件を認めたくないという心理から
 被害者に落ち度を探すのは、よくない。



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