野々池周辺散策

野々池貯水池周辺をウォーキングしながら気がついた事や思い出した事柄をメモします。

各社二輪事業 -12月度決算より

2012-02-20 06:41:46 | 二輪事業
二輪各社の12月決算報告資料から二輪の世界市場動向の一側面を見てみた。

「ハーレーダビットソン」:
 ■1-12月年間累計
  ・売上高   46.62億ドル
  ・営業利益   8.30億ドル
  ・営業利益率  17.8%
 ■備考
  ・2011年度販売:欧州、北米、南米、アジアで販売増、日本向け販売減。
  ・2012年度販売目標:24~24.5万台。
 ■収益推移 (億ドル)・・・Harley-DavidsonHPより
  ・年度     2011   2010   2009    2008
  ・売上高    46.62  41.76  42.87   55.78
  ・営業利益    8.30   5.61   1.96   10.59
  ・営業利益率  17.8%  13.4%  4.6%  19.0% 

「ホンダ」:   
 ■第3四半期累計
  ・売上高   9,902億円 
  ・営業利益  1,097億円 
  ・営業利益率  11.1%
 ■備考
  ・北米、日本で微増なるも、欧州(特に南欧)は販売不振
  ・アジア好調、タイの洪水影響による販売減少
  ・南米(ブラジル、アルゼンチン)は販売好調維持
 ■収益推移(億円)・・・ホンダHPより
  ・年度   2011(予想)2010    2009    2008
  ・売上高          12,881  11,402  14,115
  ・営業利益  未発表   1,385     588     999
  ・営業利益率       10.8%    5.2%    7.1% 

「ヤマハ」:
 ■1-12月年間累計
  ・売上高   8,876億円 
  ・営業利益    276億円    
  ・営業利益率  3.1%
 ■備考
  ・USで底打ち、欧州は引続き販売減
  ・アジアや中南米で伸長なるも円高やタイ洪水の影響により収益悪化
  ・2009年度からV字回復した
 ■収益推移(億円)・・・ヤマハHPより
  ・年度    2011   2010   2009    2008
  ・売上高   8,876  9、142  8、171   10,288 
  ・営業利益    276   485   △42      336  
  ・営業利益率  3.1%  5.3%  △0.5%   3.3%  
  
「スズキ」:
 ■第3四半期
  ・売上高   1,888億円  
  ・営業利益   △28億円
  ・営業利益率 
 ■備考
  ・欧州向け二輪販売減少、北米とアジア向け増
  ・円高、タイ洪水の影響で収益減   
 ■収益推移(億円)・・・スズキHPより
  ・年度    2011(予想)2010   2009    2008
  ・売上高           2,577  2,629   4,543             
  ・営業利益   未発表   △108   △211    △64 
  ・営業利益率  
     
「カワサキ」:  
 ■第3四半期累計
  ・売上高  1,542億円  
  ・営業利益   △45億円
 ■備考
  ・新興国販売増なるも欧州での販売減少と円高減益
  ・日本販売は微増
 ■収益推移(億円)・・・川重HPより
  ・年度    2011(予想) 2010   2009    2008
  ・売上高   2,400    2,344  2,030   3,037  
  ・営業利益   △30     △49   △270    △104

   ***注:二輪事業決算に含むビジネスユニットは各社HPによった。

ハーレーは米国市場を中心に先進国での販売を伸ばし15%近い営業利益率を確保、今期販売台数目標24万台。
収益性の高い大型二輪を中心に販売伸長、これを軸に新興国への販売拡大すると報告されている。

一方、タイ洪水の影響をもろに受けたホンダ四輪は大幅な収益減少となったが、頼みの綱は二輪事業と金融サービス事業。
二輪と金融サービスの黒字で四輪事業の赤字を吸収した形になった。
危機のたびにホンダ二輪はホンダの収益を支え、過去これまでに数度にわたりホンダの危機を救ってきた。

ヤマハも新興国向けを中心に3%以上の営業利益率を確保し、V字回復した。
ヤマハは2009年度に赤字決算を計上したが、既公表の収益改善策(損益分岐点の引下げや数値目標を前面においた構造改革の拡大)や
社債の発行等によって、新興国に軸足をおいた開発専念効果が出たものと推測される。

ヤマハは今年、「技術経営委員会」を新設し、有望な技術を早期に実用化できる体制を整えて研究開発部門を活性化する。
また、インドとベトナムでも生産能力増強と販路拡大を進め、先進国市場が縮小する中、経営資源をアジアの新興国へ更に集中するとある。

スズキは2Q決算で前年度赤字決算から脱却し7億の黒字であったが、タイ洪水による販売減と円高によって△28億となった。

カワサキは、3Qからの通期予想は△30億となった。
上期決算時の予想では、通期営業利益当初目標50億を20億に下げて黒字転換を目指していたが、依然として低迷。
東京モーターショーでも発表された先進国向け新機種等を毎年発表し続けたが、収益改善には至っていないようだ。
カワサキ二輪は2008年から4年間赤字計上を続けた。


決算から少し分かった事は、

●アジアを中心とした新興国と南米(ブラジル、アルゼンチン等)の二輪需要は依然として強い。
 旺盛な新興国需要に応えるべく生産ラインを急ピッチで整え市場を急拡大してきた日本の二輪企業と
 先進国を中心に強いブランド力を持って安定した収益を基本に新興国へ触手を伸ばしているハーレーダビットソンを中心とする欧米の二輪企業、
 いわゆる3強が一時の収益低下を克服し高い収益性を確保し続けている。

●先進国市場で確実に収益を確保し新興国への触手を伸ばしつつある欧米の二輪企業、今なお急進中の新興国に軸足を移したホンダとヤマハ。
 何れの企業にとっても新興国は魅力ある市場に間違いない。
 先進国を軸に生活に豊かさや潤いを与えるハーレーと新興国を軸に生活の足としてのホンダ/ヤマハが二輪事業の主役であることに当面揺るぐことはない

●日本国内や経済危機にある欧州の二輪需要は下降線の一方だが、東南アジアに加え、南米そして未開拓のアフリカ等、
 長期的に見れば更なる市場拡大のチャンスが見込める二輪事業はうまみのある事業体であることは間違いない。

●ハーレーやホンダ/ヤマハの二輪事業展開を観察すれば、
 世界的不況と言われる中でも二輪事業は極めて高い収益性を確保できる事業体であることは変わらない。
 それは、市場動向を見た的確な戦略と素早い決断/実行力こそが高い収益性を確保できる事業体に成長することを、
  ハーレー、ホンダ/ヤマハの決算から読みとれる。
 メディアによる二輪の将来は必ずしも明るいと言えないとする論調もあるが、二輪事業は経営手腕によって「未来ある事業体」と言えるのではないだろうか。
 当たり前のことだが、最後は経営戦略の優劣が勝敗を決する。


ところで、2月7日の人民網日本語版に「日本家電メーカーの衰退は必然的だ」という記事があった。
これは、パナソニックやシャープそしてソニーのグローバル企業が大幅赤字を計上する見通しについて、
中国の家電業界専門家の羅清啓氏は「巨額の赤字を前にして、日本家電大手は動揺している。
日本家電各社は新興業界へのモデルチェンジに乗り出しているが、グローバル経済の低迷と円の続騰を受け、
日本メーカーのいかなる行動も短期間内に奏功することはなく、日本家電メーカーの衰退は必然的だ」と指摘している。 

あるいは、日産純利益業界トップとの報道について、日産は「重要が伸びている地域で顧客のニーズに合った商品をいち早く投入できたこと」と分析している。
宋文洲のツイッターには、
『日産、利益で業界首位 。違うのはトップだけ。』『外人が社長になればうまくいく保証もない。ソニーもオリンパスも外人社長だった。
しかし、会社の良し悪しを決めるのは絶対社長だ。』とのコメントしている。
日産はタイ洪水の影響が少なかったとはいえ、それまでの動向をみれば経営方針が明確だった事は確かだ。 

中国の専門家に日本家電企業の衰退を指摘される状況までに落ち込んでしまった事自体は残念だが、
サムソンやLGの台頭や日産から見えることは、円高と言う外部要因によって収益が悪化したのは確かだが、
最も重要なことは事業経営トップの手腕と言うか、先読みへの決断が企業収益に大きく影響したと言うことだろう。


一方、2月3日、ホンダは伊東社長出席の2012年モータースポーツ発表会を報道陣に公開した。

伊東社長が出席した2012年ホンダモータースポーツ発表会(2月3日)


発表会資料の冒頭は、
「Hondaにとってモータースポーツ活動は、チャレンジングスピリットの象徴であり、
 創業当時から世界の頂点を目指してさまざまなレースカテゴリーに挑戦してきました。
 これまでに培ったノウハウとチャレンジングスピリットで、2012年もより多くのお客様の期待に応え、
 共感していただけるモータースポーツ活動を展開します」とある。


この表現の意味するところを紐解いてみると面白い事が分かる。
ホンダのレース活動発表会を単なるモータースポーツ界へのセレモニーとみるか、あるいは別の意味が隠れているかは自由な解釈だが、
ホンダスピリッツ=チャレンジスピリッツをもって世界の頂点を目指せの意味は、低迷したホンダ四輪事業部隊への鼓舞であるとも解釈されるだけに、
四輪の低迷を二輪が救わざるを得ない現状への危機感の表れとも理解できる。
F1は撤退したものの、世界中のモータースポーツシーンに参戦する経済的余裕度は十二分にあること、
四輪を含む全事業ユニットのトップ企業で有りたいとする、
その総括表現がホンダのモータースポーツへの取組として発表されたとすれば、実に分かり易く明快だ。

ホンダの原点はレース活動であり、レーシングスピリッツを常に持つ企業体としてのホンダの在り様の意思表示だと思える。



「無表情が詰まる通勤電車に乗り込むと、自分も明るい顔ができなくなる」とツイッターにあったが、
 事業経営トップが気にせねばならぬ事、これが本質かもしれぬ。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする