しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

カストリ雑誌⑥証言の宝庫

2020年09月26日 | 昭和21年~25年
「東京闇市興亡記」 猪野健治編 双葉社 1999年発行



証言の宝庫=カストリ雑誌

パンパンと呼ばれていた街娼は焼跡闇市時代の一つの象徴であるが、カストリ雑誌もまた、そこで売られていた。存在そのものが象徴であった。
ではカストリ雑誌とはいったい、どのような雑誌だったのだろう。

密造のインスタント焼酎であるカストリは、一合ならともかく三合も飲むと悪酔いして倒れてしまう。
また、印刷用紙の不足を補うため、センカ紙という、チリ紙を転用した、みるからに悪質な再生紙を使用していた。
つぶれるところが多く、吹けば飛ぶようなもの、という意味もこめられていた。

もともとは大衆雑誌なのである。
そして大衆雑誌には、その時代の世相や風俗、人々の生きざま、意識などが、色濃く影を落とし、刻みこまれている。

敗戦直後の飢餓と廃墟と混乱と悪性インフレの闇市時代は、その日その日を生きることにひたすら死にものぐるいで、人間性、というよりも
欲望がむき出しにされて、生臭く、猥雑で、騒然としており、残酷であり、淫蕩であった。

戦後いちはやく登場した大衆雑誌「りべらる」は、創刊当時は文化総合雑誌といってよい内容であり、読物誌としての色彩を濃くしてからは現在の中間小説誌にあたる。
創刊以来、エログロ雑誌、悪書といわれ非難攻撃の矢面に立たされ、抹殺されようとした。





センカ紙は風船爆弾の落とし子

風船爆弾がつくられなくなってからは、コウゾの漉き機械は、無用の長物となっていた。
しかし、あまりにも印刷用紙が不足していたので代用印刷用紙を作ってみたところ飛ぶように売れた。
みるからに粗悪な悪質紙だったが、出版界の歓迎ぶりはすさまじかった。

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