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ニュージーランド星空旅記2009~7、サザンアルプスを越える鉄路

2009-07-05 | 旅行
写真:サザンアルプスの谷間で停車中のトランツ・アルパイン号


写真:トランツ・アルパイン号の先頭に立つディーゼル機関車

ニュージーランド星空旅記2009~6、トレッキング・目指せマウントジョン天文台からの続きです

2009年6月19日

サザンアルプス山中の氷河湖レイク・テカポからクライストチャーチに戻ってきた。
今日は、朝から市バスで鉄道駅に向かい列車に乗る。


早朝のクライストチャーチ駅に停車して発車を待つのは、大人気の観光列車「トランツ・アルパイン」号。
アルパインの名の通り、サザンアルプスを越えて西海岸の港町グレイマウスへと向かう“ニュージーランド南島横断列車”だ。
列車から見るサザンアルプスの風景は大層素晴らしく、世界で最も車窓の美しい列車のひとつに選ばれたこともあるという。
この列車に乗って、今日は日帰りで「乗り鉄」を楽しもうと思う。

ニュージーランドでは鉄道の民営化に伴う行き過ぎた合理化の弊害で、旅客列車が極限まで削減されてしまい今では全国でも数えるほどの本数しか運転されていない。
大自然の国ニュージーランドが環境に優しい鉄道を冷遇しているという現状は解せない(まぁ政府がエコと称して国民にクルマやテレビを買い換えろと必死に煽り立ててる我が日本も他人のことは言えないが)。
運転本数が極端に少ない分、鉄道の予約システムもシンプルそのもので、インターネットのホームページで予約すると送られてくる確認メールをプリントアウトして駅に持参してチェックイン、その場で座席を割り当てられボーディングパスを渡されるという具合で、つまり乗車券・きっぷというものが存在しない(ボーディングパスは乗車後すぐ回収されてしまうし)。
解かり易くて結構なシステムだが、鉄道のシンボルアイテムと言うべききっぷが無いというのは少し寂しいような気もする。

8:14、クライストチャーチ発車。
定刻より1分早発なんだが…乗客が全員乗ったと確認できたらさっさと発車してしまうらしい。

冬の平日だというのに車内はほぼ満席。数日前に下見に来た時もそうだったが、この「トランツ・アルパイン」号、本当に大人気のようだ。
今日は座席車6輌に展望デッキ付き荷物車と電源車がつながった編成だが、夏の休暇シーズンには堂々10輌以上の座席車を連ねた長大編成を組むこともあるというのも頷ける。

クライストチャーチを出発すると、貨物ヤードや工場の間を掻い潜りながらかなりの速度で飛ばしていく。
何だか車窓の風景と道路に見覚えがあるが、どうやらレイク・テカポへとバスで向かう途中に通ったルートと並走しているようだ。

8:30頃、最初の停車駅Darfieldに到着。クライストチャーチの郊外駅といった風情のここから数名乗車した模様。
この駅で路線が分岐し、列車は西へと向かう。行く手にサザンアルプスの雪山が見え始める。

Springfield到着。
「ここで数分間停車するけど、乗り遅れに注意!汽笛が鳴ったらすぐ車内に戻れ」とまるでちょっと降りてみろと言わんばかりの車内放送があったので、早速プラットホームに降りる。

線路は真っ直ぐ、サザンアルプスに向かい延びている。
列車の先頭には山越えに備えてアメリカンスタイルの大型ディーゼル機関車が重連で立ち、行く手に待ち構える山脈を見据える。

汽笛に急かされ車内に戻ると、すぐ発車。
いよいよ車窓にサザンアルプスが迫ってきた。



編成の中間に連結された展望車から走行する列車を見る。
この展望車、完全オープンデッキなので見晴らしは最高だが、列車は山道でも容赦なく凄い勢いで高速走行しているので、吹きさらしのデッキはとにかく寒い!

サザンアルプスの奥深く分け入るように、「トランツ・アルパイン」号は往く。




雲海の谷を越え…


白銀の峰を目指す!
アルプス横断列車の名に相応しい、美しくも嶮しい車窓が展開する。

重連のDLに牽かれ山路を力強く駆け抜けた列車は、行程のほぼ中間点、山脈の北端に位置するアーサーズ・パスに到着。


国立公園の入り口となる駅で、数分間停車。

アーサーズ・パスを出るとすぐに長さ8キロを超える(と路線ガイドに書いてあった)トンネルを抜け、サザンアルプス越え区間は終わる。






その後は清流や牧場を見ながら、高原を走っていく。




ここまで長い時間を、寒さに耐えて過ごした展望車。
編成中間に連結される電源車の前後にオープンデッキの展望スペースがあるという独特なスタイルで、発電機の積まれた車輌中央部は立ち入り禁止なので編成の前後を行き来できないという、実にヘンテコな車輌ではある。

オープンデッキは山越え区間では手摺が氷結する程の寒さに加えて沿線の荒野や未舗装の道路、それに先頭のディーゼル機関車から土埃や煤が容赦なく降り注ぐという中々過酷な環境なのだが、それでも車窓をダイナミックに眺めることが出来るので乗客が入れ替わり立ち代わりやってくる車内一番の人気スポット。
壁には漢字で「禁煙」の注意書きも…




サザンアルプスが遠ざかり、西海岸の終着駅が近付いて来る。


最後の停車駅Moanaでは駅から湖が見えた。

昼過ぎ、終着駅グレイマウスに到着。





乗客が駅から去ると、「トランツ・アルパイン」号の編成はそのまま引き揚げていく。
折り返しの発車まで、小1時間程の休憩。


駅前から見た、グレイマウス駅舎。
グレイマウスはグレイ川の河口に広がる南島西海岸最大の町だが、それでもかなり小ぢんまりとした地方都市に過ぎない。
急峻な山地と切り立った海岸線が続く西海岸はニュージーランドでも特に人口希薄な地帯のようなのだ。

グレイマウスの名物は水害対策の大堤防だそうで、駅前にも堤防の土手が見えるので登ってみた。

堤防の向うにはグレイ川が流れていた。
堤防の上は遊歩道のようになっていたので、ちょっと散歩してみる。


暫らく歩くと、石炭貨車が並ぶ公園があった。
以前はここから石炭の積み出しが行われていたのだろうか。よく晴れた昼下がりなのに、どこか寂しげな雰囲気が漂う。

小さな散歩の後、駅に戻って、再び「トランツ・アルパイン」号に乗り込みクライストチャーチへと戻る。

往きの車中では展望車に入り浸ったり停車駅毎に降りて写真を撮ったりと忙しかったので、帰りは自分の席でのんびりしよう。
隣の席に座ったのはタスマニアから来たという爺さんで、1ヶ月かけてニュージーランドを巡っているとのこと。
「お前さんは、日本からひとりぼっちでニュージーランドまで何しに来たんだい?」とか聞かれたので、
「星を見に来たんですよ、テカポまでね。明日はもう日本に帰るよ」と答えると、
「テカポか!あそこの星は奇麗だろ?」
「うん、凄かった!日本では空が明るくて霞んでるから、あんな星空は見えないですよ」
「そうか、日本の空はfoggyなんだな」とか何とか会話。
向かいの席は地元のおっさん2人組みで、発車するや缶ビールを凄い勢いで開け始めてあっという間に出来上がってしまい、タスマニア爺さんと一緒にタスマニアンデビルに襲われてどうしたこうしたと盛り上がっている。
こちらは早朝からの乗り鉄の疲れが出て、ついウトウト。

と、列車が駅でもない場所で停車して、そのまま動かなくなってしまった。

サザンアルプスの谷間の信号所か何かで停まっているのだが、多分行き違いの貨物列車が遅れているんだろうと思ってそのまま居眠りを決め込んでいたが、10分程経っても動き出す気配がない。
そのうち退屈した乗客がどんどん列車を降り始めた。タスマニア爺さんの話によると「この先で線路を掘っている(保線工事をしている?)」とのことで、暫らく停車し続けそうだったので僕も降りてみた。

乗客は皆、手持ち無沙汰に列車の周りをウロウロしている。
僕はこれ幸いとばかりにベストアングルから「トランツ・アルパイン」号の編成を撮影。
すると、誰かがやっていることは真似したくなる心理は世界共通のようで、皆カメラを手に列車の撮影開始。

かくして、予期せぬ“トランツ・アルパイン号本線上撮影会”を楽しんだのでした。

結局、クライストチャーチには40分遅れて午後7時前に到着。
これで、今回のニュージーランド旅行の予定はすべて終了。明日、日本に帰る。

ニュージーランド星空旅記2009~8、帰路・帰って来る空に続く


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