Vergeltungswaffe 2(Aggregat 4):Peenemunde
1942年10月3日。
よく晴れていたというペーネミュンデから、一つの美しい流線型をした人工物が空へと翔び立った。
水とエチルアルコールと液体酸素を推進剤として63秒間の燃焼を終えた時、それは地上からの高度84.5キロメートルに到達。
そこは既に地球大気圏ではない。
人のつくった物体が、宇宙に到達した瞬間であった。
人類が有史以来、天上に向けて懸命に差し伸べ続けてきた手が、
ようやく地球大気圏の軛を振り解き宇宙の入り口へと届いて以来70年。
世界大戦と、それに続く東西冷戦という「自らの手による世界滅亡の恐怖」に後押しされた側面があるにせよ、
加速度的に飛翔距離を伸ばした人類の宇宙への歩みも、月到達と冷戦終結以降は停滞が目立ち始めて久しい。
そんな寂しさと共に一抹の不安と焦りを感じる秋に、今年も70年目のその日がやってくる。
いまだ混迷を極める新たなる世界秩序の下に、
「歪な平和」と「矛盾した豊かさ」に向かい猛進する人類社会を見下ろす時、
世界で初めての「宇宙旅行者」となったV2(A4)ロケットは何を想うのであろうか…
果たして、この旅人の行き着く先にはどんな世界が待ち受けているのだろう。
2012年10月3日
人類の宇宙到達から70年。
人類の宇宙到達から70年。