福田の雑記帖

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本 秋本治著「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(2) 庶民的視点の作品

2021年09月11日 18時53分58秒 | 書評
 「こち亀」は集英社発行の「週刊少年ジャンプ」で1976年9月から約40年間にわたって一度も欠裁することなく連載を終了した。作者の心技体がずっと維持されていたことで驚くべき業績である。

 当時の新聞によると、秋本さんは連載終了を祝うイベントで、「引き際としては、祝ってもらってスッと消えるのが一番良い大団円の場かなと思い、連載終了を決めた」と決断の理由を語った。

 「こち亀」は、東京の下町の派出所に勤務する警察官を主人公にしたギャグ漫画。ギャンブルやゲーム、プラモデルなど幅広い趣味を持つ型破り、かつ多彩な主人公のキャラクターが広い世代に愛された。

 40年も続く長寿作品になったのはなぜだろうか。
 「こち亀」は2016年、ギネス世界記録の「最も発行巻数が多い漫画シリーズ」に認定された。単行本の累計発行部数は1千万部を超えた。

 なぜ、このタイミングで終わったのか。今でも惜しむ声は広がる。

 少年漫画誌は読者アンケートで常に人気を測られる浮き沈みの激しい世界とされる。なぜ、「こち亀」は40年も続いたのか。子どもも大人も楽しめる内容だからであったからなのだろう。 「こち亀」には、ゲーム、フィギュア、ドローンなど時代を映す物がよく登場する。成人や熟年、高齢者の愛好家が喜んで納得するような、ちょっとマニアックで最先端のネタを扱っている。 かみくだいて出しているから誰にも受ける。読者第一の姿勢がすごい。

 「ドタバタ劇」も「懐メロ」も「人情もの」も、「時代の最先端を行く話」もある。作者は、漫画以外のいろんなことを知っていて、非常に幅が広いかたなのだろう。

 当時「ゴルゴ13」を43年以上描き続けていた漫画家さいとう・たかお氏は「ああいう作品は天才でしかできない。あそこまで感性と計算ずくめで続けていたのは奇跡に近い。ご苦労さまと言うしかない。連載があれだけ長くなると、止めるに止められなくなる。「こち亀」雑誌の顔でしたから、よく決断できたなあ。寂しいのと、うらやましいのと、不思議な気持ちです」とコメントしている。
 ちなみに、さいとう氏の「ゴルゴ13」は2021年「こち亀」の記録を抜いてギネスNo1となった。

 「ゴルゴ13」は国際情勢を反映している。
 「こち亀」は我が国の庶民レベルの歴史を反映している。
 ともに素晴らしい作品である。
 
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