福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

新臨床研修制度雑感(3)卒前の臨床実習、秋大包括医療実習(3)

2006年07月04日 06時23分22秒 | 医療、医学
 2004年から新臨床研修制度が始まった。この制度について各立場の方々からいろいろな評価が聞かれるが、私はとても良い制度だと思う。
 この制度発足後、学生達の地域医療包括実習に対する目が変わってきたように感じる。制度前には明らかに学外の臨床実習を軽視していた学生が多かった。極端な学生は「この3週間はとても迷惑です。無駄なカリキュラムと思います」、とまで明言した。講義も真面目に聴かず、実習に割り当てられた時間の大部分を卒業試験、国家試験の準備に当てていた学生も決して少なくなかった。当時は、と言っても僅かに2-3年前であるが、大学病院の医療・教育至上主義的な考えが大学の教官にも、学生にも浸透していた時期である。
 最近はこの実習期間は卒後の臨床研修を視野に入れた、卒業の後の進路、研修病院の選択の準備の一環としてとらえているようにも見える。私の印象では、実習期間中も従来よりは真面目に過ごしている様に思える。

 新臨床研修制度の発足で大学病院以外での医療や研修の価値が一気に見直され、特に学生の考え方は様変わりした。その流れを読み切れなかった大学の研修カリキュラムは概して旧態依然としていて魅力に乏しく、「入ってくるはず」「残るはず」「戻ってくるはず」等の思惑が見え隠れしていた。これらの読みが次々と外れている、というのが現状である。地域包括医療の意義をなかなか認めなかった秋大の教官も少なくなかったと聞いているが、学外の医療・福祉の包括的実習の価値を評価できなかったばかりでなく、新臨床研修医制度の中で研修医がどう行動するのか、も読み切れなかったのではなかろうか。

 学外実習に関して今後解決すべき課題もたくさんある。
 教育に従事する医師にとって時間の確保が困難である上に、一定の教育能力が求められる。指導医は前もって教育という基本的概念を学んでおくことが必要である。そうすれば、教育の目標、指導医としての自らの役割などが明確になる。この指導医に対する教育の労は大学医学部が負うべきである。
 教育能力という点で病院医師は大学人に比して、劣らない能力を持っていると言っていいし、教育に利用できる資料、材料、症例、経験は豊富である。ただ、時間と評価が不足している。
 医学教育において日常の医療と十分に接することの意義は諸外国でも認識され、医学教育のテーマの1つとなっている。専門医がプライマリケアの能力をも身につけている事は勿論必要であるが、プライマリケアに従事している医師自身がプライマリ・ケアは医療の役割分担の中で、立派な専門性と位置づけを持っている領域なのだという確固たる認識をもつことが必要である。加えて、それに従事している方々への評価も重要である。今の日本では、これらが不足している。
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