わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
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続 釉(薬)について9(フリット1)

2018-04-05 16:49:49 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
フリット(frit)とは、余り耳にする事も無く、一般に使用される事は少ないですが、釉の文献

を読むと見出す事もあります。尚、楽焼の釉で使用される白玉(しらたま)はフリットです。

フリット(frit)とは、釉の一部(又は全部)の原料を予め熔融しガラス化させた物です。

これを他の釉の原料に混ぜて使用します。

1) フリットを利用する理由。

 ① 水溶性の釉の原料を釉に入れ易くする効果があります。

  釉の原料の内で、炭酸ソーダ、炭酸カリ、硝酸ソーダ、硼素酸、硼砂などや、その塩化物

  は水溶性ですので、直接釉の中に入れると素地に吸収され、釉の成分が変化します。

  更にそのまま焼成すると、素地が膨らむ等の弊害が発生します。この様な原料をフリット

  にし、ガラス化すれば素地に溶け込まなく成ります。

  但し、炭酸カルシウム、炭酸および酸化マグネシウムは、水溶性ですが、フリットにする

  必要は有りません。上記弊害が無い為と思われます。

 ② 人間に有害な釉の成分を無害化する。

  現在ではほとんど使用されていない鉛化合物などを、フリット化する事で無害にする事が

  できます。即ち、ガラスでコーテングする事で、酸などから鉛の溶け出すのを防ぎます。

 ③ 低温では反応が遅いバリウム化合物などは、フリット化する事で、多量に使用出来る様

  になり、焼成温度範囲も広がります。更に釉の発色にも好影響を与えます。

 ④ 同じ組成の釉であっても、生原料の成分よりも、高濃度にする事も出来、嵩(かさ

  =量)も少なくする事が出来ます。その為、生釉よりも薄く施釉する事が可能です。

  又、フリット化で化学反応は終了しています。その為、化学的には不活発ですので、

  素地や下絵具に対して、安定して使用できます。

 ⑤ フリットにする事で、釉成分を均一化する事が出来ます。

  生原料の粒子の大きさ、比重や形状の違いなどが著しく異なる場合、フリットにする事

  で均一化する事が出来、釉の分離沈殿を防げます。更に、均一の発色を促し綺麗な色に

  焼き上げる事が出来ます。

 ⑦ 予め溶融しておく事で、釉の原料からガス成分を取り除く事が可能に成ります。

  その為、気泡の発生を抑える事が出来ます。

2) フリットの作り方。

 ① 坩堝(るつぼ)を800℃程度に余熱し、調合物を入れ温度を上昇させ、原料がわず

  かに熔融させる。坩堝の内面に予め珪砂を塗っておくと良い。坩堝の代わりに匣鉢

  (さや)を使う場合もあります。その際注意する事は以下の事項です。

  ⅰ) 最初から坩堝に入れると、ソーダーやカリ成分は低温で先に熔け、坩堝に吸収さ

   れ釉の成分量が変化してしまいます。

  ⅱ) 硼砂を多く含む調合物は、加熱と同時に急膨張し、坩堝から溢れ出します。

   その為、坩堝に投入する際には、数回に分けて行います。 但し、無水硼砂(焼硼砂)

   なら問題ありません。 焼硼砂を作るには、鉄鍋に入れゆっくり加熱し結晶水を蒸発

   させい粉状態にします。

 ② ガラス状態に成ったら、水の中に流れ出させます。

  但し、アルカリ成分(塩基)に対し珪酸成分が少ない場合には、幾分水溶性があり、水

  に直接投入せずに、磨いた鉄板の上に薄く流し出し、扇風機などで空冷すると良いそう

  です。

 ③ 水に入れると白濁化し軽石状態になり粉砕し易くなります。

3) 陶芸材料メーカーでは、ガラス粉を販売しています。又ガラス釉なる物も市販されて

 います。ガラスや板ガラスの粉末も、フリットとして使用できますが、鉛や硼砂などが

 入っていますので、使用温度が高くなりますが、上手に使用する事です。特に色ガラス

 等は用途によっては、味のある釉を作れる可能性もあります。それ故、挑戦する価値が

 あるかも知れません。

以下次回に続きます。
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