わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

続 電動ろくろ30(トラブル8、蓋物1)

2019-12-03 13:25:18 | 続 電動ろくろに付いて

焼き物では、急須を始め、湯呑茶碗や茶碗蒸し用の器、茶道の水指、重箱、更には骨壺など

で、同じ素材の蓋の付いた物があります。(同じ素材の蓋を共蓋と言います)。

蓋物のトラブルとは、主に蓋と本体(器)がピッタリ重ね合わない状態です。

最悪の場合、蓋が出来ない場合すら珍しくありません。理想的には、どの位置でも蓋が出来る

事ですが、ある一か所のみでしか合わない事も多いです。蓋と本体の隙間が合わず、ガタガタ

する事も、稀ではありません。これらの原因や対策などに付いて述べたいと思います。

更に、蓋の合わせ方にも幾つかの方法がありますので、どの方法を採ったら良いかものべます

1) 本体と蓋を作る時は、時間差が生じます。

 一般には本体(器側)を先に轆轤挽きした後、蓋を制作する事が多いです。

 素地は、轆轤挽直後から乾燥収縮が始まります。それ故、蓋を轆轤挽時には、本体はかな

 縮んでいますので、この際の口径を測定し一致させても、完成時の蓋と本体の直径は合い

 ません。即ち本体を轆轤挽した直後の口径を測定し、その値を基に蓋の口径を決なくては

 いけません。口径を測るには、物差し等も有りますが、一般にはコンパス状の内パス、

 外パスを使用します。

2) 蓋と本体の隙間に付いて。

 単に器の上に蓋を置く構造であれば、隙間(クリアランス)を考慮する必要は有りません。

 しかし実際には、蓋が横に滑らない様に、何らかの引っ掛かりを付ける必要があります。

 引っ掛かりを器側に設ける場合と蓋側に設ける場合もあります。

 この器と蓋との隙間が問題になります。隙間が小さいと蓋は閉まりませんし、広過ぎると

 ガタガタしてしまいます。

3) 陶芸で良く使われる蓋の種類と名称。

 蓋を受け止める本体部分を蓋受けといいます。勿論蓋受け部分の無い器も存在しまあす

 蓋の種類には以下の物があります。

 ① 載せ(ノセ)蓋

  平板な蓋で、蓋自体や器側にも蓋を受け止め、移動を止める突起物は有りません。

  例えば、群馬県の碓氷峠の横川にある、峠の釜めしに付いている蓋です。

 ② 浅蓋(アサブタ)と深蓋(フカブタ)。

  器と同じ外形で、器本体より蓋の直径が大きく、本体に被さる状態の物です。

  蓋の内径が、器の外形よりも若干大きく、蓋の内側が器の外形に被さります。

  被さる長さが短い蓋を浅蓋と言い、器側より蓋側が長い物を深蓋といいます。

  又浅蓋を被せ蓋(カブセブ)とも言います。

 ③ 印籠(インロウ)蓋

  一番多く見られる蓋の形状で、蓋側又は器側、更には両方の合わせ目に凹凸がある形状

  の蓋です。印籠蓋にも幾つかの種類があります。

  ⅰ) 送り印籠: 器側の口縁の幅(肉厚)を二分し、その外側を高くし、内側を

   低くして段差を設けます。蓋側これと反対に外側を低く、内側を高くしてしっかり

   蓋と器が噛合様にします。

  ⅱ) 逆印籠: 上記送り印籠の蓋側と器側の凹凸が逆に成っている形状です。

   何れも、凹凸は轆轤の削り作業で成形します。

  ⅲ) 付け印籠:削り作業ではなく、器本体又は蓋本体の内側に円形の物を張り付け

   凹凸を作る方法です。口縁の肉厚が薄く削りが出来ない場合に行います。

   即ち、器側(又は蓋側)の内側に器より背の高い同型の円筒を張り付けて、内側が

   高く、外側の低い段差を設ける物です。

 ④ 落とし蓋。

   器側の口縁より一段低い位置に蓋受け部分を設け、底に蓋を置く方法です。

   当然、蓋の直径は器側の直径より小さくいます。急須の蓋や水指の蓋等で多く見る

   事が有ります。食器等に使用うと、口縁の内側の出っ張りが邪魔になり易いです。

   尚、内側の出っ張りを無くす方法として、①で述べた載せ蓋の内側に器の内径より

   やや小さい円形の突起物を設け、蓋の滑りを止める方法もあります。

 ⑤ 懸子(掛け子)

  蓋が二重になる物です。内蓋と外蓋が別々に成ります。

  緑茶を入れる茶筒がこの構造です。内蓋は落とし蓋で外蓋は浅蓋に成っています。   

 ⑥ その他の蓋

  ⅰ) 台指(ダイサシ):本体(器)の高さが低く、蓋が深い形状で、器の中央部分

   を高くして、蓋の内側に合わせます。

  ⅱ) 桟(サン)蓋

   焼き物では余り見ませんが、桐箱などで見られる蓋です。

   四方桟と下駄桟(二方桟):蓋の内側に四角又は二本の桟を設けた物です。

   この桟が器の内側に当たり、蓋の座りを良くします。

以下次回に続きます。

 


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