ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

「暗闇は光の大切さを、沈黙の強要は声を上げる事の大切さを気づかせてくれる」女性よ声を!マララさん

2014年10月13日 | 世界とわたし


慈悲深く、慈愛あまねきアッラーの御名において。

パン・ギムン国連事務総長、ブク・ジェレミック国連総会議長、ゴードン・ブラウン国連世界教育特使、尊敬すべき大人の方々、
そして、私の大切な少年少女のみなさんへ、アッサラーム・アライカム(あなたに平和あれ)。

今日、久しぶりに、こうしてまたスピーチを行えて、とても光栄です。
このような尊敬すべき人たちと共に、このような場にいるなんて、私の人生においても、とてもすばらしい瞬間です。
そして今日、私が、故ベナジル・ブット首相のショールを身にまとっていることを、名誉に思います。

どこからスピーチを始めたらいいでしょうか。

みなさんが、私に、どんなことを言ってほしいのかはわかりません。
しかし、まずはじめに、我々すべてを平等に扱ってくれる、神に感謝します。
そして、私の早い回復と、新たな人生を祈ってくれた、すべての人たちに感謝します。

私は、みなさんが私に示してくれた愛の大きさに、驚くばかりです。

世界中から、温かい言葉に満ちた、手紙と贈り物をもらいました。
それらすべてに感謝します。
純真な言葉で私を励ましてくれた、子どもたちに感謝します。
祈りで私を力づけてくれた、大人たちに感謝します。
私の傷を癒し、私に力を取り戻す手助けをしてくれた、パキスタン、イギリス、アラブ首長国連邦の病院の看護師、医師、そして職員の方々に感謝します。
国連事務総長パン・ギムン氏の、Global Education First Initiative(世界教育推進活動)と、国連世界教育特使ゴードン・ブラウン氏と、国連総会議長ブク・ジェレミック氏の活動を、私は全面的に支持します。
みなさんの、たゆまないリーダーシップに感謝します。
みなさんはいつも、私たち全員が行動を起こすきっかけを与えてくれます。


親愛なる少年少女のみなさんへ、
つぎのことを決して忘れないでください。
マララ・デーは、私一人のためにある日ではありません。
今日は、自分の権利のために声を上げる、すべての女性たち、すべての少年少女たちのためにある日なのです。

何百人もの人権活動家、そしてソーシャルワーカーたちがいます。
彼らは、人権について訴えるだけではなく、教育、平和、そして平等という、目標を達成するために闘っています。
何千もの人々が、テロリストに命を奪われ、何百万もの人たちが、傷つけられています。
私もその1人です。
そして、私は、ここに立っています。
傷ついた数多くの人たちのなかの、一人の少女です。

私は訴えます。
自分自身のためではありません。
すべての少年少女のためにです。

私は声を上げます。
といっても、声高に叫ぶ私の声を、届けるためではありません。
声が聞こえてこない、「声なき人々」のためにです。
それは、自分たちの権利のために、闘っている人たちのことです。
平和に生活する権利、尊厳を持って扱われる権利、均等な機会の権利、そして教育を受ける権利です。



親愛なるみなさん、
2012年10月9日、タリバンは、私の額の左側を、銃で撃ちました。
私の友人も撃たれました。
彼らは銃弾で、私たちを黙らせようと考えたのです。
でも失敗しました。
私たちが沈黙したそのとき、数えきれないほどの声が上がったのです。
テロリストたちは、私たちの目的を変更させ、志を阻止しようと考えたのでしょう。
しかし、私の人生で変わったものは、何一つありません。
次のものを除いて、です。
私の中で、弱さ、恐怖、絶望が死にました。
強さ、力、そして勇気が生まれたのです。

私は、これまでと変わらず、「マララ」のままです。
そして、私の志も、まったく変わりません。
私の希望も、夢も、まったく変わっていないのです。


親愛なる少年少女のみなさん、
私は誰にも抗議していません。
タリバンや、他のテロリストグループへの、個人的な復讐心から、ここでスピーチをしているわけでもありません。
ここで話している目的は、すべての子どもたちに教育が与えられる権利を、はっきりと主張することにあります。
すべての過激派、とりわけ、タリバンの息子や娘たちのために、教育が必要だと思うのです。

私は、自分を撃ったタリバン兵士さえも、憎んではいません。
私が銃を手にして、彼が私の前に立っていたとしても、私は彼を撃たないでしょう。

これは、私が、預言者モハメッド、キリスト、ブッダから学んだ、慈悲の心です。
これは、マーティン・ルーサー・キング、ネルソン・マンデラ、そしてムハンマド・アリー・ジンナーから受け継がれた、変革という財産なのです。
これは、私がガンディー、バシャ・カーン、そしてマザー・テレサから学んだ、非暴力という哲学なのです。
そして、これは、私の父と母から学んだ、「許しの心」です。
まさに、私の魂が、私に訴えてきます。
「穏やかでいなさい、すべての人を愛しなさい」と。


親愛なる少年少女のみなさん、
私たちは暗闇のなかにいると、光の大切さに気づきます。
私たちは沈黙させられると、声を上げることの大切さに気づきます。
同じように、私たちがパキスタン北部のスワートにいて、銃を目にしたとき、ペンと本の大切さに気づきました。
「ペンは剣よりも強し」ということわざがあります。
これは真実です。
過激派は、本とペンを恐れます。
教育の力が、彼らを恐れさせます。
彼らは、女性を恐れています。
女性の声の力が、彼らを恐れさせるのです。


だから彼らは、先日クエッタを攻撃したとき、14人の罪のない医学生を殺したのです。
だから彼らは、多くの女性教師や、カイバル・パクトゥンクワやFATA(連邦直轄部族地域/パキスタン北西部国境地帯)にいる、ポリオの研究者たちを殺害したのです。
だから彼らは、毎日、学校を破壊するのです。
なぜなら、彼らは、私たちが、自分たちの社会にもたらそうとした自由を、そして、平等を恐れていたからです。
そして彼らは、今も、それを恐れているからです。


私たちの学校にいた少年に、あるジャーナリストが、こんなことを尋ねていたのを覚えています。
「なぜタリバンは、教育に反対しているの?」

彼は、自分の本を指さしながら、とてもシンプルに答えました。
「タリバンは、この本の中に書かれていることが、わからないからだよ」

彼らは、神は、ちっぽけで取るに足りない、保守的な存在で、
ただ学校に行っているというだけで、女の子たちを地獄に送っているのだ、と考えています。
テロリストたちは、イスラムの名を悪用し、パシュトゥン人社会を、自分たちの個人的な利益のために、悪用しています。
パキスタンは、平和を愛する民主的な国です。
パシュトゥン人は、自分たちの娘や息子に、教育を与えたいと思っています。
イスラムは、平和、慈悲、兄弟愛の宗教です。
すべての子どもに教育を与えることは、義務であり責任である、と言っています。


親愛なる国連事務総長、教育には平和が欠かせません。
世界の多くの場所では、特に、パキスタンとアフガニスタンでは、テロリズム、戦争、紛争のせいで、子どもたちは学校に行けません。
私たちは、本当に、こういった戦争にうんざりしています。
女性と子どもは、世界の多くの場所で、さまざまな形で、被害を受けています。
インドでは、純真で恵まれない子どもたちが、児童労働の犠牲者となっています。
ナイジェリアでは、多くの学校が破壊されています。
アフガニスタンでは、人々が、過激派の妨害に長年苦しめられています。
幼い少女は、家で労働をさせられ、低年齢での結婚を強要されます。


貧困、無学、不正、人種差別、そして基本的権利の剥奪――これらが、男女共に直面している、主な問題なのです。


親愛なるみなさん、
本日、私は、女性の権利と女の子の教育、という点に絞ってお話します。
なぜなら、彼らがいちばん、苦しめられているからです。
かつては、女性の社会活動家たちが、女性の権利の為に立ち上がってほしいと、男の人たちに求めていました。
しかし今、私たちは、それを自分たちで行うのです。
男の人たちに、女性の権利のために活動するのを止めてくれ、と言っているわけではありません。
女性が自立し、自分たちの力で闘うことに絞って、お話をしたいのです。


親愛なる少女、少年のみなさん、
今こそ、声に出して言う時です。
そこで今日、私たちは、世界のリーダーたちに、平和と繁栄のために、重点政策を変更してほしい、と呼びかけます。
世界のリーダーたちに、すべての和平協定が、女性と子どもの権利を守るものでなければならない、と呼びかけます。
女性の尊厳と権利に反する政策は、受け入れられるものではありません。
私たちは、すべての政府に、全世界のすべての子どもたちへ、無料の義務教育を、確実に与えることを求めます。
私たちは、すべての政府に、テロリズムと暴力に、立ち向かうことを求めます。残虐行為や危害から、子どもたちを守ることを求めます。
私たちは、先進諸国に、発展途上国の女の子たちが、教育を受ける機会を拡大するための、支援を求めます。
私たちは、すべての地域社会に、寛容であることを求めます。
カースト、教義、宗派、皮膚の色、宗教、信条に基づいた、偏見をなくすためです。
女性の自由と平等を守れば、その地域は繁栄するはずです。
私たち女性の半数が抑えつけられていたら、成し遂げることはできないでしょう。
私たちは、世界中の女性たちに、勇敢になることを求めます。
自分の中に込められた力を、しっかりと手に入れ、そして、自分たちの最大限の可能性を、発揮してほしいのです。



親愛なる少年少女のみなさん、
私たちは、すべての子どもたちの明るい未来のために、学校と教育を求めます。
私たちは、「平和」と「すべての人に教育を」という目的地に到達するための、旅を続けます。
誰にも、私たちを止めることはできません。
私たちは、自分たちの権利のために声を上げ、私たちの声を通じて、変化をもたらします。
自分たちの言葉の力を、強さを信じましょう。
私たちの言葉は、世界を変えられるのです。
なぜなら私たちは、教育という目標のために、一つになり、連帯できるからです。
そして、この目標を達成するために、知識という武器を持って、力を持ちましょう。
そして連帯し、一つになって、自分たちを守りましょう。



親愛なる少年少女のみなさん、
私たちは今もなお、何百万人もの人たちが、貧困、不当な扱い、そして無学に苦しめられていることを、忘れてはいけません。
何百万人もの子どもたちが学校に行っていないことを、忘れてはいけません。
少女たち、少年たちが、明るい、平和な未来を待ち望んでいることを、忘れてはいけません。

無学、貧困、そしてテロリズムと闘いましょう。
本を手に取り、ペンを握りましょう。
それが私たちにとって、もっとも強力な武器なのです。
1人の子ども、1人の教師、1冊の本、そして1本のペン、それで世界を変えられます。
教育こそが、ただ一つの解決策です。

エデュケーション・ファースト(教育を第一に)。
ありがとうございました。



マララさんのスピーチの後ろに存在する、女子教育の問題を抱える国々の、具体的な事例。
引用元:
http://www.47news.jp/47topics/e/258281.php

■ナイジェリア
「少女たちよ。学校を去り、結婚しなさい」
イスラム過激派ボコ・ハラムの指導者アブバカル・シェカウ容疑者は、ビデオ映像で、
4月に、ナイジェリア北東部の学校から、200人以上の女子生徒を拉致したことを認め、こう警告した。  
ボコ・ハラムの組織名は、地元の言葉で、「西洋の教育は罪」
その象徴である欧米式の学校を襲撃し、これまで、多数の生徒や教員を殺害した。
シャリア(イスラム法)の導入を要求し、女性は家事や子育てをするべきだ、と主張、女子教育を、真っ向から否定している。  

■シリア、イラク他『イスラム国』の支配下に置かれた地域
内戦中のシリアや、イラクの過激派「イスラム国」の支配下に置かれた少女たちも、過酷な環境にある。
女性は、全身を隠す衣装「ニカブ」の着用を強要され学校では、音楽や体育の授業は禁止
イスラム教の戒律を、厳格に適用する教育しか、認められていない。  
イスラム国が8月、イラク北部の村を制圧した際には、
クルド民族少数派ヤジド派の、少女を含む約300人を、「戦利品」として拉致し、1人千ドル(約11万円)での人身売買も実施
異教徒の女性を、奴隷として扱う実態が、明らかになった。  

■パキスタン
女性を厳しく抑圧した、タリバンの保守的な思想が今も残り、
女子校に有毒ガスがまかれたり、教師が襲撃されたりする事件が、たびたび起きている。  
農村部では、子どもを労働力と見なしたり、10代前半で娘を嫁がせたりする家庭が多く、教育の必要性が十分認識されていない。  
マララさんが育っカイバル・パクトゥンクワ州では、過激派に爆破されるなどして破壊された学校は、ここ数年で、800以上に上っている。