「ヒヤシンスの血」
80年代のポーランド、ワルシャワ。同性愛者が集う夜の公衆トイレで、富豪の他殺死体が発見される。刑事のロベルトはゲイコミュニティへの潜入捜査を開始、アレクという青年と親しくなり彼から情報を得ようとするが…
LGBTへの理解と配慮が推進されている現在社会ですが、かつてはすさまじい差別偏見が当然のようにまかり通っていました。それらは今でも決して消えたわけではなく、あからさまにはできない風潮になってるだけ。LGBTを攻撃したり排除したりすることが、むしろ正しいとされていた時代はそんな遠い昔ではなく、数々の映画でもその恐ろしさ理不尽さは描かれてきました。今でもLGBTに対して不寛容で厳しく、信じられないような人権無視、人権蹂躙がアメリカや西欧諸国から非難されている国のひとつがポーランドです。この映画は、LGBTを社会悪と見なし犯罪として取り締まっていた80年代のポーランドの実態を、クライムサスペンスの形で描いています。
タイトルのヒヤシンスとは、同性愛者への蔑称。ヒヤシンス作戦という秘密警察による同性愛者弾圧が、いかにもあの頃の共産主義国な非道さ陰惨さ。同性愛者を問答無用にしょっぴいて、身体的にも精神的にも拷問に近い取り調べをし、同性愛者であることを認める書類にサインさせ、それをもとに彼らを管理監視する、とかホントに80年代の話?!と戦慄。秘密警察とか、響きだけで禍々しい。LGBTだけでなく、当局や権力者にとって都合の悪い者、目障りな者は簡単に痛めつけられ、そして消されてしまう暗黒社会。中国なんて今でも同じような感じ。
物資や娯楽に乏しく貧しい国民生活や、暗鬱な閉塞感を募らせる冬の寒々しさなども、日本に生まれてよかったと心底思わせてくれました。昼間でも何だか光が足りないような、生気のないどんよりしたムード。数年前に行ったチェコもそんな感じでした。事件の真相や、そこにたどり着くまでの過程は、特に目新しくない刑事ドラマなのですが、当時の東欧の共産圏の暗く息苦しい社会を背景にしているところが、興味深く出色でした。そして、なかなか切ないBLものとしても。
最近すっかり人気ジャンルになってるBLですが、そのほとんどが男女の恋愛と変わらないようなノーテンキでハッピーなもの。それも悪くないんだけど、やっぱ私はBLには禁断とか背徳、苦悩とか試練を求めてしまうんですよね~。この映画のロベルトも、結婚予定の恋人がいて彼女とエッチもしてるんだけど、捜査中に知り合ったゲイの美青年と親密になってBL関係になっちゃう。もちろんハッピーロードは歩みません。当時のワルシャワでBLなんて、文字通り命がけ。ノンケなはずのロベルトがなぜか彼女といてもフラストレーション、幸せなふりをしているような虚しさを否めない、けどアレクといると熱い歓びや解放感を覚える。これって何だ?と葛藤、そして目覚めてしまう愛しさ、抑えられなくなる欲望。禁じられると燃えてしまう、というシチュエーションの苦しさと切なさ、だからこそ深まる快楽。これこそBLの醍醐味なんですよ。
ロベルトとアレクが惹かれ合う様子はロマンティックかつ悲愴で、ついに結ばれるシーンも痛ましく切ない。セックスシーンは終盤に一回だけですが、せわしく激しくも短く終わるところが男同士のセックス感を出していてリアルでした。ラスト、真実を暴いたロベルトを待ち受けてるものは…アメリカや西欧なら一件落着だけど、ワルシャワだとそうは問屋が卸さない。めでたしめでたしな終焉ではなかったけど、生きてさえいえばいつかアレクと再会できるはず、という終わり方には一抹の希望を感じることができました。
ロベルト役のトマシュ・ジェンテクは、オーランド・ブルームをちょっと濃ゆくした感じのイケメンで、ヒゲがなかったら可愛い童顔だろうなと思わせます。アレク役の俳優もイケメン。やっぱBLは、どこの国でもイケメンが鉄則ですまるで隠れキリシタンのような、隠密のLGBTコミュニティの存在も興味深かったです。彼らのパーティーで、楽しそうにはっちゃけるロベルトが可愛かったです。
80年代のポーランド、ワルシャワ。同性愛者が集う夜の公衆トイレで、富豪の他殺死体が発見される。刑事のロベルトはゲイコミュニティへの潜入捜査を開始、アレクという青年と親しくなり彼から情報を得ようとするが…
LGBTへの理解と配慮が推進されている現在社会ですが、かつてはすさまじい差別偏見が当然のようにまかり通っていました。それらは今でも決して消えたわけではなく、あからさまにはできない風潮になってるだけ。LGBTを攻撃したり排除したりすることが、むしろ正しいとされていた時代はそんな遠い昔ではなく、数々の映画でもその恐ろしさ理不尽さは描かれてきました。今でもLGBTに対して不寛容で厳しく、信じられないような人権無視、人権蹂躙がアメリカや西欧諸国から非難されている国のひとつがポーランドです。この映画は、LGBTを社会悪と見なし犯罪として取り締まっていた80年代のポーランドの実態を、クライムサスペンスの形で描いています。
タイトルのヒヤシンスとは、同性愛者への蔑称。ヒヤシンス作戦という秘密警察による同性愛者弾圧が、いかにもあの頃の共産主義国な非道さ陰惨さ。同性愛者を問答無用にしょっぴいて、身体的にも精神的にも拷問に近い取り調べをし、同性愛者であることを認める書類にサインさせ、それをもとに彼らを管理監視する、とかホントに80年代の話?!と戦慄。秘密警察とか、響きだけで禍々しい。LGBTだけでなく、当局や権力者にとって都合の悪い者、目障りな者は簡単に痛めつけられ、そして消されてしまう暗黒社会。中国なんて今でも同じような感じ。
物資や娯楽に乏しく貧しい国民生活や、暗鬱な閉塞感を募らせる冬の寒々しさなども、日本に生まれてよかったと心底思わせてくれました。昼間でも何だか光が足りないような、生気のないどんよりしたムード。数年前に行ったチェコもそんな感じでした。事件の真相や、そこにたどり着くまでの過程は、特に目新しくない刑事ドラマなのですが、当時の東欧の共産圏の暗く息苦しい社会を背景にしているところが、興味深く出色でした。そして、なかなか切ないBLものとしても。
最近すっかり人気ジャンルになってるBLですが、そのほとんどが男女の恋愛と変わらないようなノーテンキでハッピーなもの。それも悪くないんだけど、やっぱ私はBLには禁断とか背徳、苦悩とか試練を求めてしまうんですよね~。この映画のロベルトも、結婚予定の恋人がいて彼女とエッチもしてるんだけど、捜査中に知り合ったゲイの美青年と親密になってBL関係になっちゃう。もちろんハッピーロードは歩みません。当時のワルシャワでBLなんて、文字通り命がけ。ノンケなはずのロベルトがなぜか彼女といてもフラストレーション、幸せなふりをしているような虚しさを否めない、けどアレクといると熱い歓びや解放感を覚える。これって何だ?と葛藤、そして目覚めてしまう愛しさ、抑えられなくなる欲望。禁じられると燃えてしまう、というシチュエーションの苦しさと切なさ、だからこそ深まる快楽。これこそBLの醍醐味なんですよ。
ロベルトとアレクが惹かれ合う様子はロマンティックかつ悲愴で、ついに結ばれるシーンも痛ましく切ない。セックスシーンは終盤に一回だけですが、せわしく激しくも短く終わるところが男同士のセックス感を出していてリアルでした。ラスト、真実を暴いたロベルトを待ち受けてるものは…アメリカや西欧なら一件落着だけど、ワルシャワだとそうは問屋が卸さない。めでたしめでたしな終焉ではなかったけど、生きてさえいえばいつかアレクと再会できるはず、という終わり方には一抹の希望を感じることができました。
ロベルト役のトマシュ・ジェンテクは、オーランド・ブルームをちょっと濃ゆくした感じのイケメンで、ヒゲがなかったら可愛い童顔だろうなと思わせます。アレク役の俳優もイケメン。やっぱBLは、どこの国でもイケメンが鉄則ですまるで隠れキリシタンのような、隠密のLGBTコミュニティの存在も興味深かったです。彼らのパーティーで、楽しそうにはっちゃけるロベルトが可愛かったです。
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