「さざなみ」
イギリスの田舎町で、平穏な暮らしを営む熟年夫婦のジェフとケイトは、週末に結婚45周年記念のパーティを控えていた。そんな中、ドイツからジェフに1通の手紙が届く。それは、ケイトの夫への愛や信頼を揺るがすことになるのだった…
すごく静かで淡々とした内容、展開なのですが、不思議と睡眠誘導されませんでした。何でもないシーンや台詞に、何か予断を許さないような緊張感がピリピリと漂っていたからでしょうか。不安や嫉妬、不信に襲われたケイトが、ギリギリまで抑制しながらもつい言ってはいけないことを言ってしまいそうで、してはいけないことをしてしまいそうで、こっちがハラハラしてしまう、みたいな。揺るぎないものと信じ切っていたものが、実は脆く壊れやすいものであり、この世に確かなものなんて何ひとつないと悟ってしまう絶望。小さなひび割れが、どんどん大きく広がっていって、ついには粉々に砕け散ってしまうのですが、もうイヤ!離婚!と感情にまかせて怒ったり泣いたりできないケイトの理性、知らぬ間に夫婦を雁字搦めにしていた結婚45年という長い年月が重苦しかったです。
ケイトとジェフは、まさに理想的な熟年夫妻だったのに。静かに互いを思いやって寄り添って生きてる姿が、結婚ってうまくいけばこんな風に優しく静かな境地に到達できるんだな~と、憧れさえ抱いてしまったのですが…ケイトとジェフに子どもがいたら、また違った話になったんだろうな~。子どもがいたら、夫が元カノのことで揺れる想い~♪by ZARD でも、勝手にしろ!と冷笑スルーできたでしょうに。夫への愛しか拠り所がなかったことが、ケイトの悲劇です。いくら夫とはいえ、一人の男に固執してしまうのは不健康かもしれない、と思いました。愛することは尊いけど、愛しすぎるのはイタい。私は100%で愛してるのに、夫は60%でしか愛してくれてなかった、と気付いたら、確かに悲しいし憤りも理解できる。ケイトは繊細で感受性が強すぎた。鈍感で図太いほうが、傷つかず幸せになれるのかもしれません。
ケイト役は、ヨーロッパ映画界のレジェンド女優シャーロット・ランプリング。御年70にして、彼女はこの映画で初めてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。
大げさで暑苦しい大熱演ではなく、抑制のきいた繊細で自然な演技が素晴らしいです。冷静沈着に見えるけど、今にも精神のバランスを崩しそうな、いや、すでに崩れてるのかもしれない?と観る者を不安に陥れる表情、雰囲気が、まさに女の中で轟く阿修羅を思わせて沈痛、かつ怖くて引き込まれます。ハリウッドや日本のアンチエイジングに必死すぎる熟女女優と違い、顔のシワもタルミも隠そうともせず、あるがままの堂々としたナチュラルさが、クールでニヒルな内面を表しているようでカッコいい。もう老女といっていい御年なのに、夫とちゃんとセックスもしてるという老いさらばえない現役女な設定も、ランプリングおばさまらしかったです。それと、スタイルがいい!細い~!特に足!でもエクササイズで必死に保ってる感ゼロ。あくまで天然っぽい美。若い頃から今に至るまで、巨匠名匠や気鋭の若手監督に作品を捧げられる存在であり続けるランプリングおばさまは、まさに女優の理想形ではないでしょうか。
ジェフ役の名優トム・コートネイも好演。優しく穏やかで、おっとりのんびりしたジェフは、一緒にいたら気疲れしない、癒される存在だろうな~と思わせる好々爺なのですが、どうしてどうして、なかなか難しい、めんどくさい爺さんなのが怖くて笑えた。昔の女>妻、ということを、イヤというほどケイトに思い知らすのですよ。でも、ケイトへの愛の問題ではなく、元カノのことで心が少年返りしてしまい、それが老いた現在の自分と突然折り合いがつかなくなって、なすすべもなく狼狽えてしまう…というように私には見受けられました。そういう気持ちは、私にも何となく理解できます。フワフワと浮世離れした天然キャラが残酷なジェフを、トム・コートネイが可愛いボケ爺さんみたいに演じてました。
結婚記念パーティでも、キメキメにキメた気合いの入りすぎなドレスアップではなく、シンプルかつエレガントなケイトのファッションセンス、見習いたいです。あと、寂寥感がありつつ静謐な田舎の風景が美しかったです。早朝の散歩が気持ち良さそうでした。夫婦の飼ってた大型犬が可愛かった!何かブラッドリー・クーパーに似てた。ブラパってやっぱ犬顔だよな~と、あらためて思った。
イギリスの俊英アンドリュー・ヘイ監督が、まだ40そこそこの年齢だからか、熟年夫婦の話なのにどこか瑞々しい感性も映像や演出に感じられました。カミングアウトしているヘイ監督の「ウィークエンド」というBL映画も、ぜひ観たいものです。
イギリスの田舎町で、平穏な暮らしを営む熟年夫婦のジェフとケイトは、週末に結婚45周年記念のパーティを控えていた。そんな中、ドイツからジェフに1通の手紙が届く。それは、ケイトの夫への愛や信頼を揺るがすことになるのだった…
すごく静かで淡々とした内容、展開なのですが、不思議と睡眠誘導されませんでした。何でもないシーンや台詞に、何か予断を許さないような緊張感がピリピリと漂っていたからでしょうか。不安や嫉妬、不信に襲われたケイトが、ギリギリまで抑制しながらもつい言ってはいけないことを言ってしまいそうで、してはいけないことをしてしまいそうで、こっちがハラハラしてしまう、みたいな。揺るぎないものと信じ切っていたものが、実は脆く壊れやすいものであり、この世に確かなものなんて何ひとつないと悟ってしまう絶望。小さなひび割れが、どんどん大きく広がっていって、ついには粉々に砕け散ってしまうのですが、もうイヤ!離婚!と感情にまかせて怒ったり泣いたりできないケイトの理性、知らぬ間に夫婦を雁字搦めにしていた結婚45年という長い年月が重苦しかったです。
ケイトとジェフは、まさに理想的な熟年夫妻だったのに。静かに互いを思いやって寄り添って生きてる姿が、結婚ってうまくいけばこんな風に優しく静かな境地に到達できるんだな~と、憧れさえ抱いてしまったのですが…ケイトとジェフに子どもがいたら、また違った話になったんだろうな~。子どもがいたら、夫が元カノのことで揺れる想い~♪by ZARD でも、勝手にしろ!と冷笑スルーできたでしょうに。夫への愛しか拠り所がなかったことが、ケイトの悲劇です。いくら夫とはいえ、一人の男に固執してしまうのは不健康かもしれない、と思いました。愛することは尊いけど、愛しすぎるのはイタい。私は100%で愛してるのに、夫は60%でしか愛してくれてなかった、と気付いたら、確かに悲しいし憤りも理解できる。ケイトは繊細で感受性が強すぎた。鈍感で図太いほうが、傷つかず幸せになれるのかもしれません。
ケイト役は、ヨーロッパ映画界のレジェンド女優シャーロット・ランプリング。御年70にして、彼女はこの映画で初めてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。
大げさで暑苦しい大熱演ではなく、抑制のきいた繊細で自然な演技が素晴らしいです。冷静沈着に見えるけど、今にも精神のバランスを崩しそうな、いや、すでに崩れてるのかもしれない?と観る者を不安に陥れる表情、雰囲気が、まさに女の中で轟く阿修羅を思わせて沈痛、かつ怖くて引き込まれます。ハリウッドや日本のアンチエイジングに必死すぎる熟女女優と違い、顔のシワもタルミも隠そうともせず、あるがままの堂々としたナチュラルさが、クールでニヒルな内面を表しているようでカッコいい。もう老女といっていい御年なのに、夫とちゃんとセックスもしてるという老いさらばえない現役女な設定も、ランプリングおばさまらしかったです。それと、スタイルがいい!細い~!特に足!でもエクササイズで必死に保ってる感ゼロ。あくまで天然っぽい美。若い頃から今に至るまで、巨匠名匠や気鋭の若手監督に作品を捧げられる存在であり続けるランプリングおばさまは、まさに女優の理想形ではないでしょうか。
ジェフ役の名優トム・コートネイも好演。優しく穏やかで、おっとりのんびりしたジェフは、一緒にいたら気疲れしない、癒される存在だろうな~と思わせる好々爺なのですが、どうしてどうして、なかなか難しい、めんどくさい爺さんなのが怖くて笑えた。昔の女>妻、ということを、イヤというほどケイトに思い知らすのですよ。でも、ケイトへの愛の問題ではなく、元カノのことで心が少年返りしてしまい、それが老いた現在の自分と突然折り合いがつかなくなって、なすすべもなく狼狽えてしまう…というように私には見受けられました。そういう気持ちは、私にも何となく理解できます。フワフワと浮世離れした天然キャラが残酷なジェフを、トム・コートネイが可愛いボケ爺さんみたいに演じてました。
結婚記念パーティでも、キメキメにキメた気合いの入りすぎなドレスアップではなく、シンプルかつエレガントなケイトのファッションセンス、見習いたいです。あと、寂寥感がありつつ静謐な田舎の風景が美しかったです。早朝の散歩が気持ち良さそうでした。夫婦の飼ってた大型犬が可愛かった!何かブラッドリー・クーパーに似てた。ブラパってやっぱ犬顔だよな~と、あらためて思った。
イギリスの俊英アンドリュー・ヘイ監督が、まだ40そこそこの年齢だからか、熟年夫婦の話なのにどこか瑞々しい感性も映像や演出に感じられました。カミングアウトしているヘイ監督の「ウィークエンド」というBL映画も、ぜひ観たいものです。