天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

映画NINE楽曲家の目標は、DNAがイタリア映画形成に貢献し並外れたソフィアローレンのエッセンス創造

2010-03-23 22:59:59 | 日記
今日の日記は、映画『NINE ナイン』(ロブ・マーシャル監督 ダニエル・デイ=ルイス主演 ソフィア・ローレン共演)でソフィア・ローレンが歌った『グラナダ・ラ・ルーナ』のことです。映画評論誌『キネマ旬報』最新号で、フリーライター・佐藤友紀氏が自己の映画評論で、ソフィア・ローレンが歌うはずだった舞台版『ナイン』が削られて、オリジナル楽曲『グラナダ・ラ・ルーナ』になった顛末を語っています。以下に、その記述を引用・掲載します。
『ソフィア・ローレン扮するグイドの亡き母親が、歌うはずだった「ナイン」が、削られているのがまず衝撃だ。もっとも作曲のイェストンいわく
「理由は簡単だよ。彼女のキーでは高すぎるから(笑)。その代わり、そのソフィア・ローレンを輝かせ、彼女の持ち味を引き出すという使命を僕は授かった。で、舞台版の「グイドのワルツ」という、自分としてはエリック・サティっぽい感じを取り入れた曲を思い出し、それに詞をつけて「グラナダ・ラ・ルーナ」にしたのさ」。』
さらに、この映画のパンフレットでも、同じように作詞・作曲家のモーリーイェストン(私注:舞台版の楽曲の製作者)は語っています。
『舞台版に出てくるグイドの母のオリジナル曲は典型的なハイソプラノの曲だが、ソフィア・ローレンはソプラノではない。それでは、この曲は舞台の時と同じような効果はもたらさなくなる。私の目標はソフィアのための曲を作ることだった。しかも、舞台と同じように叙情的でミュージカル的な要素を備えつつ、ソフィアの声域に合う曲。さらに、そのDNAがイタリア映画の形成に一役買ったといえる、並外れたひとりの女性のエッセンスのあるものを作ることだった。そして舞台版の「Waltz from Nine」をこの曲「グラナダ・ラ・ルーナ」に変化させたんだ。』
このように映画『NINE ナイン』では、俳優自身が映画で直接歌う製作方針を、強く貫いています。しかし、昔の映画はそうではなかったです。古いミュージカル映画では、歌唱の部分の声は、それを演じている俳優ではなく、別人の吹き替え音声でした。名作ミュージカルといわれている映画『マイ・フェア・レディ 』のオードリー・ヘプバーンや『ウエスト・サイド物語』のナタリー・ウッドは、自分自身では歌っておらず、吹き替えの歌手が代わって、巧みにこなしていました。このような映画製作姿勢に異論を唱えて、俳優自身が全てを歌った最初の映画は『ムーラン・ルージュ』(アメリカ2001年製作)だと、私は記憶しています。
ロブ・マーシャル監督も、前作『シカゴ』(2002年製作)で、その製作姿勢を貫いています。だから、彼はソフィア・ローレンといえども、何ら特別扱いをせず、彼女の声に合った相応しい楽曲を、時間をかけて舞台版の作曲家に作られてします。
このような真摯な姿勢で創られた肉声のミュージカル映画は、多くの観客に強い感動を生むのです。
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