天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

関ヶ原で役不足福島正則を快諾した丹波さんは信念『役者は自分の匂いで好き勝手に演じるだけ』を実践

2009-11-12 22:15:50 | 日記
今日も大型時代劇『関ヶ原』の話です。このドラマは、とても豪華な出演者で製作されています。だから、製作者はその適材適所のキャスティングにとても頭を悩ました?のではと私は思っています。でも、そのキャスティングで、私は唯一不満がありました。それは、名優丹波哲郎さんを役不足としか考えられない福島正則に配したことです。福島正則は、豊臣家子飼いの忠臣でありながら、豊臣政権の転覆を図った徳川家康の謀略に気が付かず、石田三成憎しの私恨により、東軍に加担したまったく思慮の無い武将です。だから、私は名優丹波哲郎さんが、その役を何故引き受けたのか?今まで大きな疑問でした。
しかし、塩野七生著『男たちへ』の第一章「頭の良い男について」に登場した丹波哲郎さんと和田勉さんの対談を読んで、私の長年のその疑問が一瞬にして氷解しました。以下にその二人の対談の一部を掲載します。
・(和田)役者は、人間として考えた時、一番悲惨な生き方をしていると思うんです。なぜ悲惨かというと、人間にはそれぞれ自分の好みというものがあるでしょう。・・・自分の嫌いなタイプの人間を演じなければならないことだってある。・・・自分が演じている役に抵抗がある場合などは、それをはぎとらなければならない。
・(丹波)それはだいぶ役者を知らないね(笑)。役者とは、自分の好まないもの、演じたくないものを演じる時に、抵抗があるかといったら、そんなもの全然ない。
・(丹波)一番大事なのは、役者は手前の匂いを出すことだ。役の性格を掘り下げるのは演出家のやる仕事で、キャスティングの時に、その役に近いのは誰だということで丹波哲郎をもってきたのだろうから、あとは演出でカバーしてくれ。われわれは自分の匂いで好き勝手に演じるだけだということです。
この丹波哲郎さんの自己好悪の感情を持たず自然体の姿勢で役を演じる役者信念が、福島正則の役を快諾させたのでしょう。塩野さんも「丹波哲郎という俳優は、まあ男っぽい面がまえの俳優とは思っていたけれども、頭のほうは上等な男とは思っていなかったので、意外や意外、と感心した」とこの著書で書かれていました。
「私は世の光 私に従う者は命の光を得る」との独善的な観劇応援姿勢を持つ『他人の不幸が蜜よりも甘い』社会の悪行者達に丹波哲郎さん『役者は自分の匂いで好き勝手に演じるだけ』の役者哲学を私は捧げたい!
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