数人で焼肉に行った。
10年前くらいの開店したての頃に一度来た事があるような記憶がうっすらあるような気がする焼肉屋さんだ。
ちょっと遅れてくる人もいたけど、そんなの気にせずさっさと注文して食べる。
もちろん美味しい。
ガツガツモリモリ食べ続ける。
おっ。
野菜の盛り合わせの中にニンニクがあるな。
丸ごとじゃなくって、一片が何個かね。
一片って言い方でいいのか?
一房とかなのか?
まあいいや。
呼び名は分からないけど、これも焼いて食べる。
うん。
ホクホクで旨いね。
ニンニクって匂いがするから食べるのは迷うとこだけど、でもまあ今が良ければそれでいいのだ。
明日周りから臭がられようと構わない。
美味しく食べましたよ。
すぐ横の網を使っていたタツヤとマサキも、ニンニクを焼いていた。
片面焼いたら焦げてしまったようで、慌てて食べている。
と…
少しして立ち上がったタツヤ。
そしてそのまま何も言わず、トイレに行ってしまった。
この時はそれほど気にせずにいたんだけど、それから5分後。
青白い顔でテーブルに戻ってきたかと思えば
「ちょっとヤベーから外に出てくる」
と言うではないか。
ん?
急にどうした?
と聞くが、
「さっきのニンニクが…」
とだけ言い残しで去っていってしまった。
何だ何だ?
大丈夫か?
ニンニクがどうしたんだ?
すると、同じニンニクを食べたマサキの様子もおかしい。
目が潤んでツラそうな表情をしているんだよね。
どうやらさっきのニンニクが、焦げてはいたけどまだ生だったらしいのだ。
噛んだ時に固くってシャキシャキなってたらしい。
でも構わず食べたら、それが胃の中で大暴れしているとの事。
「胃の中からノドのほうに波動拳をされているような感じ」と言うが、波動拳を受けた経験がないからそれがよく分からない。
でも強烈な痛みってのはよく分かる。
生のニンニクってこれほどまでのパワーがあるのか。
体調にもよるんだけど、あのタツヤがそこまで一気に悪くなるとは…。
恐ろしい。
マサキはどうにか席を立たずに済んでいたので、そっちのニンニクは少しだけ焼けていたのかもな。
ウーロン茶を飲んでいたらどうにか回復したようだよ。
しかしタツヤは心配だ。
回転寿司を30皿平気で食べるくらい強靭な胃袋を持つタツヤがあれほど苦しんでるんだからね。
かなりヒドい状況なのだろう。
今日はもう帰ったほうがいいかもな。
すると、5分くらいして戻ってきたタツヤ。
「もう大丈夫になった」
と言い、カルビをバクバク食べ始めるではないか。
さらにホルモンも冷麺もガツガツ食べている。
おいおい。
これがさっき「ヤベーから外に行く」と言った男の姿か?
あんな急激に悪くなって、こんな急激に回復するものなのか?
心配して損したな。
ま、無敵と思われていたタツヤに、生のニンニクという敵がいたって事が判明して良かったよ。
これから何かあったらニンニクをぶつける事にしよっと。