ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

自動運転に関するまとめ その1

2015年01月21日 | 自動運転
自動運転についてまとめてみようと思います。
かなり長くなるので何回かに分けて掲載していきます。

1.はじめに-なぜ自動運転なのか?
今年(2015年)のアメリカコンシューマーエレクトロニクスショー(CES)における自動車関連展示の中心は自動運転。ベンツ,アウディ,BMWといったドイツ系各社を始めとする各社が自社の技術を発表していた。正直,ドイツ勢がここまで本腰を入れている事に驚いた。車+通信は,すでに陳腐化してしまった「テレマティクス」から「コネクテッド・カー」と名前が変わったものの,それ自身ではここに至っても目新しい動きはなく,それも含めた中での「自動運転」がこれからのITSの最も重要なキーワードになることは間違いない。

自動運転はいわゆる「Fun to Drive」とは対極にあり,それをウリ文句にしてきたカーメーカーにとってはある種の自己矛盾となる。
一方で,我が国で年間5000人,アメリカで年間3万人に上る交通事故死のほとんどがヒューマンエラーに起因し,それを自動車というハードウェア側で減らすことができるのであれば,そちらに向かうことは当然カーメーカーの責務である。
さらに,自動運転は高齢者,障がい者のモビリティを飛躍的に向上させる。
これらを勘案すれば,将来車が自動運転になることは規定路線だと言える。

2.ASV
(1)ASVは自動運転への通過点
レーダや画像認識及びそれらの組み合わせによる自動ブレーキを中心に,自律安全機構がいま最も注目されている。こうした装備を備えた車を総称しASV(先進安全自動車)と呼ぶ。これが更に進化していくことは間違いなく,いわゆる「高度運転支援」の段階に到る。しかし,高度運転支援はあくまで運転支援であり,運転者の介在は必須であることから自動運転とは依然一線を画すものであり,この延長線上に有るゴールが自動運転だと考えるとわかりやすい。

(2)通信型か自律型か
ASVを実現する方法は大きく分けて二通りある。車両に搭載されたレーダーやカメラにより障害物を検知しするタイプ(ここでは自律型と呼ぶ)と,車両に搭載された通信装置が道路,他の車両,歩行者に設置された通信装置と交信することで障害物を検知するタイプ(ここでは通信型と呼ぶ)。
現在存在する自動ブレーキ等はすべて自律型で,通信型はまだ実用化されていない。
自律型は車から(レーダーやカメラが)見えるものしか避けられないことから,通信型がその進化形なのだという考え方もあるが,私は通信は将来にわたってあくまで補助にしかなりえないと思っている。

例として車対車の衝突回避を通信で行うケースを想定しよう。
これは言うまでもなくすべての車に統一されたプロトコルを持つ通信装置が装備されなくては機能しない。それには相当の時間が必要となる。万が一が許されない世界なので,何十年もかかるだろう。
さらに,フェイルした時の責任の所在が明確で無い。どちらかの車の機器か,サーバーか,通信状況かのいずれに問題があったのか,多分双方のデータ記録でわかるだろうが,大破して全焼することだってある。自律型であれば,責任はその車にしかない。

一方で,自律型はインフラ整備が進めばさらに進化する。
例えば,車両の画像認識をより正確にするために路側帯やセンターライン,交差点等のカメラ判定を容易にするラインの引き方をルール化することは,ペンキがあればすぐにでもできる。
同様に,車対車に関しても後部にレーダ認識を確実にするための統一規格による反射板などの設置を義務つけすることは,行政側が比較的簡単にできる施策だ。

車対車の通信型はかなりハードルが高いが,道路側からの通信による情報提供で安全運転支援をすることは難しい話ではない。
実際現在日本においてはDSRC通信とETC2.0車載器による路車間通信が始まっている。
しかしこれの安全運転支援への寄与は限定的でありその普及の道は遠く,世界ITS会議などで披露されているが海外の反応も鈍い。

通信は自律型センサーで感知できない障害物(見通しの悪い交差点やカーブ)検知,あるいは信号機との協調といった,自律型を補完する形であれば有効だろう。
(続く)