ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

J.D.Powerのレポートから垣間見るテレマティクスの運命

2006年09月24日 | ITS
J.D.Powerアジアパシフィック(顧客満足度調査などで有名な調査会社)が日本の自動車先進技術調査の結果を発表した。

ナビゲーションについてはDVDからHDDに移行中だという。これはその通りだろう。
ただしこれはナビというよりは、ミュージックサーバーに対する魅力だ。

テレマティクスサービスについては、見出しでは「拡大途上の段階にある」としているが、中身を見るとかなり厳しい状況が浮き彫りにされる。

現在ナビゲーションを利用しているユーザーのうち、テレマティクスを利用しているユーザーは13%。テレマティクス未利用ユーザーの今後の利用意向は肯定、否定がともに25%程度、どちらともいえないが50%と、お世辞にも今後拡大する市場とは思えない結果が出ている。

しかも、現利用ユーザーが満足している理由は1位が「ルート案内全般」、2位が「現在の渋滞情報」。おそらくはホンダのインターナビにおける渋滞情報がVICSよりも優れている、ということだろう。

また、未装着ユーザーが関心を示しているのは圧倒的に地図のダウンロードによる最新化。これは、現状の地図アップデートの手間や金額に対する不満だろう。

注目するべきは、当初テレマティクスがさかんに喧伝していた電子メール機能、リアルタイム情報や緊急通報などという内容が出てこないことだ。

結局のところ、ユーザーが期待しているのは単にナビの高機能化であって、テレマティクスという概念=「車+通信」ではないのだ。

そして、おそらくこれらも敢えて言えば不満、ということで、わざわざ年会費や通信料を支払ってでも入手したいということでもなさそうだ。

トヨタ日産があれだけ頑張って普及させようとして、未だにこの程度ということは、拡大途上にあるというよりも「どうやら存在しないマーケットなのだ」と理解するほうが自然だろう。

安全走行支援サービスの苦悩

2006年09月24日 | ITS
国交省のITSホームページによれば、9月26日に第3回目の参宮橋実験の検討会が実施される。

リンク先文書には
「この社会実験において、交通事故の削減効果が継続していることや、実験モニターへのアンケート調査から本サービスが長期的に有効と考えられていること等の結果が得られました。」
とあり、どうしても実現したいという意思が現れている。

以前からこの実験については書いているが、もっとも実現を難しくしている点は「路側機と車載器のアンマッチ」なのだ。

ETCは普及が進み、今後車載装着率が60%以上になることは間違いないと思う。
しかし、ETCに対応したDSRC路側機の設置はするとしてもゼロスタートで、莫大な費用がかかる。

一方、車と通信する路側機としてはVICSビーコンがすでに4万5千箇所設置されている。
これらの状況から、すでに路側インフラとして存在するVICSビーコンを活用するという方向が打ち出されたのだ。

しかし、VICSビーコンの受信機はカーナビ装着車の10%程度であり、この装着率は決して右肩上がりではない。3メディアナビキャンペーンなどという施策を打ったようだが、まるでインパクトがなかった。

既存のインフラを活用しようという考えはまったく正しい。
しかし、ここできちんと評価しなくてはならないことは、
「4万5千箇所も路側機があるのに、なぜ車載VICSビーコンが普及しないのか」
ということだ。

結局、路側電光掲示板にも掲示される内容が車載モニターに表示される程度のことで数万円の出費をする消費者はいない、ということなのだ。

そしてまさにこれが参宮橋実験のあやうさなのだ。