みに・ミーの【みにスケール模型日記】

ミニスケールAFVを中心とした模型日記です。

スケールアヴィエーションのソ連機特集 その2

2010年02月19日 00時04分00秒 | 書籍
(前回の続き)それから、この機関砲の「極端に大きな発射衝撃を機体隔壁や肋骨材らに殆ど介することなく機体外板に数十本の螺子だけで固定するのは……大丈夫なのだろうか」と心配しておられます。いや、外板へのビス留めだけで機関砲を固定しているということは常識的にないと思いますよ。機関砲を装着後、パネルを閉めてビスで留めるのは当然のこと。だからって、その外板のビスだけが機関砲を固定していることにはならないと思います。むしろ、こういう装着方法で機関砲が発射できるということは、内部のどこかで機体の構造材にしっかり固定されていると考えるべきでしょう。
 また、「機関砲弾を給弾する度に上図のように完全に分離するのだ。給弾後、胴体に取り付ける度に取り付け角などは狂わなかったのだろうか」とも述べておられます。取り付け角については、上で述べたように機関砲が機体の構造材にしっかり固定されるようになっていれば、毎回射軸が大幅に狂うということはないのでしょう。もちろん、MiG-15の射撃照準システムがライバルのF-86のそれに大幅に劣るものであったことは確かです。しかしだからと言って、F-86にとって、MiG-15は決してチョロい相手ではなかったことも事実で、MiG-15の射軸が給弾の度に毎回狂ってくるほどいい加減なものだったとも思えません。
 もう一つ問題なのは、MiG-15の機関砲の給弾は、機関砲パックをを一々降ろさないと行えないものだったのか、とういことです。著者はイラストのキャプションに、「左右の外版は中央と蝶番で連結され、図のように機体から下げ降ろさなくとも左右のみの開閉が可能だ。小整備などには便利な構造となっている」と述べておられます。そうすると、ここから「小整備」だけではなく、砲弾の給弾も可能なのかもしれません。機体に装着した状態でも開閉できるこのドアについては、当ブログでも以前触れました。
 さてこれについては、Squadron / Signal社の『Walk Around Mig-15 Fagot』にこんな写真が載っていました。このように、機関砲パックを完全に地面まで降ろさなくても、左右のパネルを下方向に開いた状態で給弾が可能だったことが分かるのです。但し注意すべきは、単にパネルを開くだけではなく、機関砲自体もやや降ろされているという点です。機関砲機関部の上に砲弾マガジンがあるのですが、整備兵の手はそのマガジンの上に伸びています。やはりパネルを開くだけではここに手が届きません。左右パネルを開いた上で、機関砲をやや降ろして給弾する、という方法もとられたようですね。

 この「アナタノ知ラナイ兵器」ですが、確かに目の付け所はよい。こうした疑問点に気づくこと自体、相当飛行機に詳しい人ならばこそです。特に、MiG-15の機関砲は収納した時どのように固定したか、なんてこと私はいままで気づきもしなかったんですよ。しかし残念なのは、その疑問が疑問だけで終わっている点です。よくって、推測が加えられているだけ。
 機関砲の固定については、確かに著者のおっしゃるとおりで、降ろされた機関砲パックのどこを見ても、機体構造物にがっちり固定されるような部分が見あたらないんです(だからって外板にビスで固定されているとは思いませんが…)。上の面には機関砲弾のマガジンがあり、機関砲ベイの天井にがっちり固定される部品はなさそうです。蝶番で開く左右パネルに挟まれた中央部パネルは、機関砲の機関部を乗せるパレットになっているそうです。いろんな資料を見ると、そのパレットには補強の桁も通っているらしい。ということは、この中央部のパレットが機体外殻の構造物にがっちりとはまるようになっているのではないかと思われます。
 もちろん筆者は、「筆者がみたまま感じたままを述べるいつものだ」と断っておられる。だからって私は、筆者が感じたままを書いただけの文章を金を払ってまで読みたくないんです。やはり、プロでなければ知らないこと、プロが調べたからこそ判明したこと、それを読みたくて模型の資料を買うんですね。このMiG-15の記事を読む限り、疑問点は確かに面白いのですが、その疑問点が疑問のまま残されています。文体については好みの問題ですが、思いつくままの疑問で終わっているのは残念です。私のような素人が調べて分かる程度のことは、せめてちゃんと書いておいてほしい。今後も興味のある特集があれば『スケアビ』は買います。せっかく買ったなら「アナタノ知ラナイ兵器」の連載記事も読みます。しかし「アナタノ知ラナイ兵器」の単行本はと言うと、今のところ買うつもりはありませんね。