残業代ゼロ法案との批判はあたらないというが
日本共産党の志位和夫委員長は9月28日の衆議院本会議での代表質問で働き方改革問題を取り上げ長時間労働をなくすと言うなら残業代ゼロ法案労働基準法改悪案を撤回すべきだと主張しました。
これに対して安倍晋三首相は長時間労働是正し働く人の健康を確保し、意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能にするもので残業代ゼロ法案と批判はあたらないと答弁しました。これは全く嘘の答弁です。
長時間労働是正?時間規制外し残業代はゼロ
まず法案が長時間労働を是正するものだと言うのはひどいウソです。法案の最大の内容は「高度プロフェッショナル制度」の創設です。管理職になる一歩手前の「高度専門職」(年収1070万円以上)について、労働時間規制の対象外にするものです。
労働基準法40条に労働時間休憩休日及び深夜の割増料金等に関する規定は適用しないという文言をあらたに書きいれます。この文言の通り、労働者は労働時間規制から外され、しかもどんなに長時間働いても残業代が出ない仕組みをつくるものです。
これは誰が見ても長時間労働ますますひどくする制度です。経団連はこの制度を労働者全体の10%に導入することを求めており、そうなったら日本は大変な長時間労働の国になってしまいます。
管理職になる手前の労働者と言うのは30歳から40歳代の企業の中心的な働き手で、最も長い時間働いている層です。政府の過労死労災の申請・認定状況(精神障害)を見ても最も多い年齢層が40歳から49歳層、次が30歳から39歳層です。この層の労働者に残業代が出ない長時間労働を押し付ける、まぎれもない「残業代ゼロ法案」「過労死促進法案」です。法案は、企画業務型裁量労働制について、これまで認めてこなかった営業などに広げます。これも長時間労働を促進するものです。
健康を確保する?長時間労働は避けられない
法案について安倍首相は健康を確保すると言いましたが、実際は「最悪の健康破壊」といえるものです。先に見たように法案は労働時間の適用除外制度を作るのです。
ではそもそも労働基準法の労働時間規定は何が目的かと言えば、労働者の健康守ることです。「健康確保規定」といえます。したがって、この規定の適用外にされたら、労働者は長時間労働から身を守るよりどころを失ってしまいます。
労働者の健康確保規定から外して「健康を確保する」というのはありえません。実際、法案の健康確保措置はひどい内容です。労働者には労働時間が適用されないので、何を基準に健康を確保するのかが問題です。これは会社にいた時間と社外で労働した時間を合計した健康管理時間と言うものを把握して対策を取ると言います。
仕事が終わらず夜遅くまで働いても「会社にいた時間」としか見られないと言うことです。そして健康確保のための3つの選択肢を示しています。①始業から24時間内に休憩時間を定める②健康管理時間を省令で定める範囲内にする③年104日、かつ、4週間に4日以上の休日を確保するという内容です。
この中で最も選択の可能性が高いと言われるのが③です。1004日の休日と言うのは週休2日で、後はお盆、正月、国民の祝日も休まず、毎日が青天井の状態で働くと言うことです。これが法案の健康を確保措置です。安倍首相が言う「健康を確保」するというのはまったくのデタラメです。
働く人のため?労働者のぬきの財界主導法案
安倍首相は、法案が働く人のためかのように主張しましたが、事実に反します。この法案は、政府の産業競争力会議で、経団連の榊原定征(当時東レ会長)長谷川閑史武田薬品社長(当時経済同友会代表幹事)ら財界代表が提案、議論を主導した企業のための法案です。
この会議には労働者代表が1人も入っていません。労働者の声は全く反映されていません。この案が労働政策審議会で検討された時、労働者側委員が一致して反対しました。「概ね妥当」と言う答申を短時間でまとめたものの、「高度プロフェッショナル制度は長時間労働になる」という労働者側の反対意見を付記すると言う異例の措置がとられています。労働者の反対の声を押し切って、財界の要求を通した典型的な企業を応援法案です。