ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ジャマイカ・メント・タイム

2011-08-31 21:04:47 | 南アメリカ

 ”jamaica-mento 1951-1958”

 なんだかジャケのイラストを見ているだけでも嬉しくなってきちゃう一枚なのだった。中央に観光地図風に描かれたジャマイカの全図。それも、あちこちの名所、名産などが描き込まれた古臭く懐かしいタッチで。
 そのイラストの世界では熱帯の草花が咲き乱れ、コロニアル風の優雅な建物はのんびりと時間のハザマに寝そべり、海では水上スキーやスキューバ・ダイビングに興ずる人々がいて、海の底には昔、海賊が隠した秘密の宝が眠っている。まだゆっくりとした時間が流れていた頃の”南海の楽園”ジャマイカののどかな、美化された姿。

 そう、これはジャマイカの古い大衆歌、”Mento”の名演を集めたアルバムなのである。同じカリブ海の英語圏の島、トリニダッドで生まれたユニークなお笑いソング、”カリプソ”の圧倒的な影響のうちにジャマイカで生まれたMento音楽。
 カリプソと似て微妙に非なる、のどかなるローカル・ポップス。それは”本家”と比べて、より奔放な躍動感とB級っぽいひなびた楽しさに溢れる音楽だった。ジャズやラテン音楽から流れ込んだ雑多な音楽要素。カリプソ譲りの皮肉っぽくいたずらっぽい表情で跳ね回る、風刺のセンスに溢れた歌唱。

 この島で生まれてニューヨークで育ったんだっけ、ニューヨークで生まれてこの島で育ったんだっけ、ともかくそんな出自の大歌手ハリー・ベラフォンテは昔、このMentoを彼なりの歌唱でレコーディングし、世界的な成功を勝ち得た。世間的にその音楽は”カリプソ”と大掴みな呼び方で呼ばれた。
 そんな彼のヒット曲の原型ももちろん、このアルバムには収められている。バナナボート・ソングやマン・スマート、そしてさらばジャマイカ。それはどれも、いかにも”原曲”らしい、のびのびとした生命力が溢れ、南の太陽の恩恵の下に息つく島、ジャマイカの豊穣を歌っていた。
 (そりゃまあ、レゲのファンの人たちには、またいろいろと別の意見もあるんだろうけど)

 のどかに歌われる南の歌たちは、時代が下るにつれてレゲのリズムの面影が忍び寄り始めていて、歌い方も、よりクールさが増して行く感じだ。失われてしまった”ある時代”の記憶。愛すべきMento音楽の響きは、このアルバムの中に今でも生き生きと息ついている。






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