”反叛”by 陳慧嫻(Priscilla Chan)
香港のアイドル歌手として先頭集団を走っていたプリシラ・チャンの、1985年度盤、「反叛」のCD化されたものが手に入った。
”輝いていたあの頃の香港”のものなら、どの盤であろうと宝物なのであって。どんどんこんな風にCD化して、容易に手に入るようにしておいて欲しいが、現地にそのような発想があるかどうか。
こうして今、聴いてみると、それぞれの曲があの頃の香港の一枚ごとのスナップ写真みたいだ。もはや”瀟洒”と呼びたい演奏に乗って、甘さを含んだプリシラの素直な歌声が九龍湾の空に上って行く。
あの頃の、つまり”中国本土への返還”を目前にした香港は、確かに世界の最先端にあった。南華の風変わりな方言であるはずの広東語は世界の流行を先取ったサウンドに乗り東アジアを駆け巡った。
それもまた、一幅の夢となり。イギリス領香港、借り物の時間は終わりを告げ、今、情け容赦のない現実は人々の日々に降り注ぐ。
こうして今、聴いてみると、それぞれの曲があの頃の香港のピクニックの記念写真みたいだ。彼らの夢想がどのくらい遠くにまで行き着けたのか、の。