ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ムーミン谷の隠れ歌

2011-01-20 03:15:46 | ヨーロッパ

 ”Moomin Voices”

 北欧の作家、トーベ・ヤンソンが創作した童話・・・とかなんとかいう説明も蛇足だ、という気がするけど、まあようするに、あの”ムーミン”の物語にかかわる音楽です。
 アニメのムーミンに付けられた主題歌や挿入歌なんてものは世界中に山ほどあるんでしょうが、これは1950年代、ヤンソン自身が劇場用に自ら作ったメロディを元に創られた、いわば”本家”みたいなアルバムです。

 作家自身が作ったメロディ・・・そんなものがあるんですね。散逸していたヤンソン作のメロディの断片を集めてきて、スウェーデンのジャズ・ピアニスト、ミカ・ポージョラが形を整え、同じくスウェーデンの人気ジャズ歌手、ヨハンナ・グルスネルを迎えて吹き込んだのが、このアルバムという次第。
 ヤンソンが作った音楽の原型は聴いた事がない、というか聴くすべもないんだけど、作家はもちろん音楽の専門家ではないので、それほど要領の良いものではなかったのではないか?「劇場版は繰り返しが多くて面白いものではなかった」なんて盤に添えられたミカ・ポージョラのメモに、チラと本音(?)がもれていたりする。

 そのようにして出来上がった音楽は、ジャズをメインに、かたや現代音楽、かたや北欧民謡のメロディなども織り込みながらの、なかなか聴き応えのある楽しいものとなりました。
 これはヤンソン自身のメロディがもともと放っていたものだろうけど、いかにも北欧らしい、やや影のある旋律がさまざまなバリエーションを加えられながら、時に美しいハーモニーを伴いつつユラユラと歌いつずられて行くのを聞いていると、聞き慣れないスウェーデン語のエキゾティックな響きも相まって、どこか遠い遠い見知らぬ国の深い雪に包まれた隠れ里に住む不思議な種族が歌う歌、という感触がとてもリアルに感じられて来て、その種族の喜怒哀楽や手触りや体温まで感じ取ったみたいな幻想をもたらしてもくれるのでした。

 ところで残念なことに、You-Tubeにはこのアルバムの音は上がっていないようです。でも、何も貼らないのも悔しいんで、別のレコーディング(テレビ番組のためのものなのかな?)から、このアルバムの2曲目に収められているユーミンのテーマソング(?)など、貼っておきます。フィンランドでは、この歌を知らない子供はいないのだそうな。