”Vive la Canadienne”by Bonnie Dobson
この盤は、初期カナディアン・フォークの隠れたる名盤ということになるんだろうか、1960年代にアメリカとカナダのフォーク・サーキットで活躍したカナダ出身の女性シンガーソングライター、Bonnie Dobsonである。
今聞くとなかなか先鋭的なポジションにいた人で、確かにもっと再評価というものがなされてもいいような気がするのだが、その種の歌手、つまりシンガー・ソングライターのブームとなった70年代にはもう彼女は歌手活動の末期に入っていたゆえ、陽の目を見そびれたというところだろう。
おそらくキャリアの初め頃はジョーン・バエズあたりに影響を受けたのであろうと思われる、澄んだ美声を高々と響かせるタイプの歌い手である。さっき明けたばかりの朝の大気の涼やかさ、そんな歌心が実に清潔な響きをもって迫ってくる。生成りの木綿のような、なんて表現があるでしょう、そんな感じだ。
多くはギター一本の弾き語りで、素朴なフォークナンバーや自作曲を弾き語る。やや、トラディショナル・ナンバーが多いだろうか。初期にはアメリカ合衆国の。後期には自国カナダの。こいつもカナダ人ゆえのこだわりなのだろう、フランス語の伝承歌も重要なレパートリーとなってくる。
おそらく、アメリカのフォーク歌手の物真似から入り、その後、カナダ人としての自分の独自性、といったものが気になり始め、やがて自分なりに曲も書き出して、といったステップを踏んで自分の音楽世界を構築していったのではないか。
それにしても、この楚々たる響きの高音で美しいメロディを高らかに歌い上げるというパターンには最近、あまり出会わないせいか、心地良い。その素朴な歌心の向こうに、確かにカナダの広大な自然がひんやりとした空気の中に広がっているのが見えてくるようだ。
非常に萌える、というのか、世代の違いゆえに彼女のキャリアの最盛期に同じ青春期を過ごして彼女を応援できなかったのが惜しくてならない、なんてバカな焦燥に駆られてしまったりするんで、我ながら弱ったものだと思っている。
ところで彼女、付属のブックレットを見ると、もっと可愛く写ったり美人に写ったりしている写真もあるのに、何でこのアルバムのジャケ写真はこれなのかね?わざわざブサイクに写ったものの中からあえて選んだ、みたいじゃないか。
それとも、彼女の身近かにいた人々にしてみれば、彼女の人間性を良く表しているのはこれ、なのかも知れないが。私は、なんか納得出来ないんだがね。