”Wishing Tree”by SHAUNA MULLIN
年の瀬から何となく調子悪く。若干の寒気がして、クシャミや鼻水が出る。あきらかに風邪の初期症状で、ひどくなるかな、熱でも出そうだな、と思うが持ちこたえている。とはいえ、治るわけでもない。なんとか正月まで持ちこたえたのだから、このまま抜けてくれればと祈りつつ、が、体調はむしろ下り坂に感じられる。
だったら早く寝たらいいものだが、体のだるさもあって、このまま起き上がって寝室へ行く気分にもなれず。時と健康を無駄にしているなあとちっぽけな焦燥を頭の隅に感じつつ、アイルランドのトラッド歌手、Shauna Mullinなる人のデビューアルバムを聴いている。
ケルトの血筋のヒトだから、ということなんだろうか、この名前をなんと発音すればいいのか分からない。ジャケ写真を見る限りでは失礼ながら結構体格の良い女性みたいで、そのゆえか、なかなかに男前な低音の凛としたボーカルスタイルの人である。
その凛とした低音が、大地を大きく踏みしめた感じのディープな歌心でゲール語の古謡を歌い上げる。こいつがベタベタした感傷を付着させがちなトラッド表現を、逆に清清しいものにしている。なにか5月の青葉が香る、みたいな爽やかな情感が伝わって来て、当方が今悩んでいる悪寒や鼻詰まりまでもスッと解消してくれるみたいな幻想があって、このCDを聴いているのだが、無論、そんな勝手な話が通るはずはなく、私はただ、本物の春の到来を待つしかないのである。