”Surfin' USSR.”by FARMERS MARKET
北欧はノルウエイのロックバンド、ファーマーズ・マーケット。このバンドは私にとっては初聴きだけど、結構なベテランバンドとか。
彼らの売り物はバルカンの民俗音楽を土台に各種音楽要素をゴタマゼとしつつ、突拍子もない音塊を聴衆に叩きつける。あくまでもユーモアを忘れず。そんなところのようだ。
彼らはロックバンドの標準的楽器編成に、あれこれ各国の民族楽器を持ち込んでいる。
変拍子など織り交ぜながら一団となりイスラミックなメロディをアップテンポで強烈にスイングする有様は、あのイタリアの民俗系ジャズロック・バンド、”AREA”なども思い起こさせる。相当な豪腕そろいのバンドなのだろう。
このアルバムは、そんな彼らがものにしたソビエト連邦時代のロシアをネタにしたブラック・ジョークに満ちた一発。
何しろタイトルは”サーフィン・USSR”である。とはいえ、CDを回転させて出てくる音楽はサーフ・ミュージックなんてものではない。
アラブ系の民俗管楽器が奏でるバルカン~ロシア風のメロディのバックで鳴り渡る、60年代のスパイ映画のサントラを思い起こさせる軽薄にノリの良いエレキ・バンドのサウンド、なんて調子である。
以下、007映画の主題歌パロディや、どうしてここで出てくるのか分からない、臭いカントリー&ウエスタン・ナンバーなど差し挟みつつ、素っ頓狂な東欧幻想が荒れ野を駆け巡る。
ジャケの作りまでが嬉しい。ジャケのイラストや歌詞カードのデザイン、そしてデジパックの紙質までもそれらしく作った、ロシア・アヴァンギャルドっぽい雰囲気横溢の代物で、このジャケの出来上がりだけでも、スキモノはこのCDを手に入れる理由があるだろう。
書かれているデータを読んでみても、作曲者は”レーニン=マッカーシー”のコンビであり(何のパロディか、わかるね)各曲の曲名も”カラシニコフ・ウエディング”やら”プロシアから愛をこめて”なんて洒落のきついものばかり。というか、私がロシアと共産党の歴史にもっと詳しければさらに笑える部分を発見出来たろう。
いやほんと、多分私はこのアルバムの本当の可笑しさを味わいきれていない。
細部まで懲り倒した作りになっているようだし、こんなに微妙な問題を題材にした作品を理解しきるには言葉の壁も文化の壁もある。
まあ、しょうがない。いずれ、おいおい、分かって行くさとあてのない決意を固めつつ。
しかし北欧にはどうしてこの種のヘンテコ・バンドが多いんだろうな?あちらと言うとすぐに福祉国家のなんのと言う話題が出たりするんだが、雪に閉ざされた世界で彼らは、こんな狂気も沈黙のうちに編み上げていたと言うわけか?