”リズム歌謡を歌う! 1949-1967 ” by 美空ひばり
というわけで。これは最近リリースされて、スキモノには話題の一発ですな。美空ひばりが”洋楽”からの影響を見事に自身の音楽として血肉化して歌いこなして見せた”リズム歌謡”の作品群(1940年代から60年代にかけて)を集めた50曲、2枚組のCDであります。
とか言ってるけどねえ、こんな凄い作品集を簡単に語れるはずはないんで、今はまだ盤の端っこをちょっと齧ってみただけって状態なんだけど。それでも十分、そびえ立つ音塊に圧倒されるばかり。美空ひばりって、”演歌の女王”に祭り上げられちゃう前は、こんなにも面白かったんだそう。
ブギウギのリズムと伝統的歌謡曲の世界のバッティングの傑作としてとうに定評のある”ロカビリー剣法”や”河童ブギウギ”の痛快さはいまさら言うまでもないけど、それ以外にも知らずにいた傑作群が目白押しだ。
これはエグい作品だろうなあと期待した”エスキモーの娘”は、普通にジャズ曲で、いやいや曲調はそうなんだけど、出来上がりはやはり強力で、その後、欧米のロック界で何度も登場することとなる”諧謔系オールド・ジャズ志向”の先行作であり、すでに完成されている感があり、であります。おーい、マーティン・マルとかその辺の連中、聞いてるか。聞いてねえだろな。そりゃそうだが。
同じくファンキーなる出来上がりを期待した”チャルメラそば屋”は、よくある中華サウンド、チャカチャカチャッチャチャッチャッチャ~ン♪”なんて世界が展開されるのかと思いきや、屋台のラーメンのチャルメラの音とペダル・スティールの、頭の線がねじ切れるような並走を見せるイントロに導かれた軽快なカントリーのサウンド。
でも、どうしてカントリー?なんて質問は受け付ける気配もなく、歌声は中華の双喜マーク乱れ飛ぶ西部の荒野に走り去ってしまうのでありました。
その他、この調子で書いているときりがないんで、”白いランチで十四ノット””すたこらマンボ ””ペンキ塗りたて ” と曲目だけ挙げておくんで、後は適当に想像してください。うん、現物は多分、その想像のはるか彼方を行くかも知れないが。
しかし、これだけ多種多様でムチャクチャな曲の数々をあてがわれつつ、それをことごとく歌いこなしてしまった歌手ひばりに改めて敬服、であります。いや、入ってきた異文化をねじ伏せて、見事なエンターティメントにしてしまった作家と歌手の共同作業に敬意を、というべきか。
それじゃ、私はこれから、この盤の続きを聞かなきゃならないんで、内容に関する詳しい話はまたいずれ、という事で。