Tossapon Himapan & Waipat Phetsupan
たびたび話題にしてきたタイの仏教系ポップス、”レー”の注目盤、”出家コンビ”をやっと聴き終えることが出来た。いや、別に聴き終えるのに困難が伴うような盤じゃないんだけど、なんかこの頃、音楽を聴くことに不真面目になってしまって、といって何をするでもない、ただ惰眠を貪るだけの毎日だったりするのでね。
仏教系ポップスとか書いたけれど、まだまだレーのことは良く分からないままだ。タイの演歌とも言うべきルークトゥンの一種で、僧侶が読経をする際に付ける抑揚に影響を受けた奇妙に裏返る、ある種ヨーデルのごとき歌唱法を持つ歌謡曲、と言った辺りが一応の定義と考えていいようだ。
読経からの影響を持つゆえであるからだろうか、葬送歌である、とかの解説(日本人の研究家による)も読んだことがあるが、それはどうだろうか?それにしては、私が若干持っている”レー”のCDの歌唱も演奏も明る過ぎポップ過ぎるし、なによりジャケのデザインがあっけらかんとしてい過ぎるように思える。
で、今回の”出家コンビ”は、その”レー”の現時点での第一人者と想像される(CDのりリース量の多さから)トッサポン・ヒンマポーンと、ルークトゥン界の大ベテランであり、こちらも最近、レーにご執心であるらしい、ワイポット・ペットスパンの大物二人の共演盤なのである。
いきなり、実に鄙びたルークトゥンの響きが流れてきて、トッサポン、ワイポット両者の、いつもよりは数段泥臭い感じの歌唱が飛び出してくる。これはディープだ。タイの僧侶の読経の、とか言っている場合ではない、聴き進むと日本の僧侶のするような、聴きなれた調子の念仏調のコブシまで聞こえてきて、ギョっとさせられたりする。
そして歌の合間に、かなりの長さの二人の会話が差し挟まれる。お互いの語りの中に相手の名前が頻繁に差し挟まれ、どうやらこれは両者の突っ込み合い、ある種の漫才のような事をやっているように思える。なにやら楽しそうで、これはタイ語が分かったら、そうとう笑えるのではないか。
このアルバムの映像版を見た人のコメントでは、彼らの歌声にいい年のオッサン、オバハンたちが浮かれ踊っている様が見られるとかで、なんだか韓国のポンチャク・ミュージックのありようを連想してしまったのだが、二人の”漫才”とも考え合わせると、そんな大衆に密着した娯楽を提供する音楽なんではないかなあ、レーというのは。
やはりこれは”死者を送る歌”とかじゃないでしょう。むしろ仏教説話を音楽に乗せて説く内、盆踊りの中心に位置してしまった河内音頭に近い存在なのではないかと想像されて来た。その種の、縁日の華やぎみたいな市井の至福感が、音の向こうからジワジワと伝わってくるのだ。う~ん、ますます興味深々だぞ、仏教系コブシポップス、”レー”。