ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

痛快トロット・アイドル、ノユニ

2007-01-03 00:34:57 | アジア
 ”Love Always Finds a Reason” by NOYUNI

 ノユニ、と読むのでしょうかね、韓国の新人女性歌手のミニ・アルバムです。鮮やかな赤を基調にしたジャケに、ノユニの清楚そうな写真が掲げられ、英語のアルバム・タイトルが記されています。

 こんなのを見たら、さぞ純情なアイドル・ポップスが収められているんだろうと思いますが、聴いてみるとこれがノリノリのディスコ・サウンドに乗って歌われる、韓国で言うところのトロット、つまりはド演歌なんだから驚いたしまう。しかも、すべてアップテンポ。

 ドスンドスンと打ち込まれる快調なリズムと男性コーラスによる豪放な掛け声を従えて、凛々しいを通り越していっそ雄雄しいと表現したくなるノユニの力強い歌声が韓国演歌特有の塩辛いメロディをドーン!と歌い上げます。まあ、えげつない世界ですなあ。あ、これはもちろん、誉めて言ってるんですが。

 このジャケの清純イメージとの落差がほんとに楽しくて、誰彼かまわずつかまえて聞かせてみたくなってしまうんだけど、この時点ですでにこちらの脳内がトロット乗りに感化されてしまっている可能性大。

 注意して聞いてみると、バックのギターなんかも憑かれたように”正調ヘビメタ演歌の世界”みたいな異種混合プレイに没頭しまくりで、それのみに注意を払って聞いていても十分楽しい。この辺のやり過ぎの激走魂が韓国大衆音楽の醍醐味でありましょうなあ。

 ジャケと収められている音楽の落差に妙に受けてしまったのだけれど、韓国の人にしてみれば「何が不思議なの?」ってなものなのかなあ。清純そうな女の子が腹の底からハスキーボイスをゴリゴリに押し出して演歌を怒鳴り上げる。何がおかしいの。普通じゃん。・・・うん、そうかもなあ。

 冬の夜、日本とは一段深さの違う寒波に覆われたソウルの街で、唐辛子のきっちり利いた食べ物を腹に収め、きつめの酒に酔う。そんな、かの地の平均的市民生活には、こんな豪放な”アイドル”も似合いかも知れないのであります。

 それにしても、これが5曲(プラス・カラオケ3曲)入りのミニ・アルバムであるのが残念でならない。フルアルバムだったら、年間ベスト10とかに選出してみるのも痛快だったろうになあ。