[5月1日14:00.天候:曇 東京都内某所 某ラジオ局]
ラジオ局でゴールデンウィークのイベントの告知をするMEGAbyteのメンバー達。
結月ゆかり:「5月3日から札幌ドームで、『北海道ボーカロイドフェスティバル』が行われます!」
Lily:「私達、MEGAbyteも参加させて頂きますので、皆さんよろしくお願いします」
未夢:「楽しいイベントなので、是非来てくださいね〜」
パーソナリティ:「MEGAbyteの皆さんも参加されるということですが、あえて五大ドームツアーでなく、札幌ドームのみでのイベントにしたのはどうしてなんでしょう?」
Lily:「初音ミクさんなど、大元の開発メーカーが北海道にあるんです。言わば、北海道はボーカロイド発祥の地でもあるんです。それに因んだそうです」
パーソナリティ:「そうなんですね。MEGAbyteの皆さんとしては……」
[同日同時刻 天候:曇 ラジオ局の外]
ラジオ局の外に止まっている1台のクラウン。
車内のラジオからは、今正にMEGAbyteが出演しているラジオ番組が受信されていた。
鷲田:「明日から出発なのか?敷島社長」
敷島:「ええ、そうですよ」
敷島はリアシートに座って、運転席と助手席に座る鷲田警視と村中課長と話をしていた。
鷲田:「いい加減、そろそろ無茶ぶりはやめてもらいたいものだね」
敷島:「私はボーカロイド達の運用責任者としての責務を果たすだけですよ」
村中:「はははっ!そう言うと聞こえはいいがね」
鷲田:「ボーカロイドだけではないだろう?社長の秘書さんにも関することではないかね?」
敷島:「どうですかねぇ……」
車の外ではエミリーが周囲を警戒していた。
鷲田:「私としては、まだ金髪の方が話が通じそうでいいと思うんだがね」
村中:「そうですか?あのクールな人もいいと思いますよ」
鷲田:「村中君!」
村中:「おっと、失礼!」
敷島:「北海道にはエミリーやシンディも連れて行きます」
鷲田:「ほお?いいのかね?奥さんの方の護衛は……」
敷島:「アリスは結構強いですし」
村中:「はははっ!」
敷島:「それに身の周りの世話の方はメイドロイドがいますし、警備に関してはあいつ自作のマリオとルイージがいます」
鷲田:「なるほど。人間は信用できんということか」
敷島:「あいにくと。ロボットをテロに使おうとする人間かいたのは事実です」
村中:「ま、気持ちは分かる」
敷島:「何かあったら連絡はしますよ?」
鷲田:「そうしてもらいたいものだね。何しろ、KR団の首領らしい者をまだ検挙しておらん」
敷島:「そうですね」
するとエミリーがこちらを向いた。
敷島:「すいませんが、そろそろ時間のようです」
村中:「ああ。余計な時間を取らせて済まなかったね。とにかく、気をつけて」
敷島:「どうも」
鷲田:「会社に帰ったら、今回の旅行の行程表と日程表を送ってほしいのだが?」
敷島:「ええ。ファックスにします?それともメール?」
村中:「メールで」
鷲田:「ファックスだ。メールだとどこで流出するか分からん」
敷島:「分かりました」
敷島がリアドアを開けた。
スッと降りてすぐにドアを閉める。
鷲田達が乗ったシルバーのクラウンは、スーッと都道を走り去って行った。
エミリー:「社長、大丈夫でしたか?」
敷島:「ああ。まさか、ここで警視庁の特別捜査班に職質食らうなんてな」
エミリー:「MEGAbyteのラジオ出演がまもなく終わる予定です」
敷島:「井辺君に教えてあげよう」
敷島は自分のスマホを出した。
敷島:「井辺君に急な別件が入ったもんだから、代わりに俺が来てみたものの、どうやらその必要は無かったみたいだな」
エミリー:「はい」
[同日17:00.天候:曇 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]
敷島:「どうかな?」
整備士:「はい、特に異常ありません」
敷島:「よしよし」
明日に備えてボーカロイド達の整備は怠らない。
もっとも、平賀が専属整備役として同行してくれることになっている。
最後の整備をしていたのは、巡音ルカ。
敷島:「ルカ、どうだ?調子は?」
ルカ:「あ、はい。特に異常ありません」
敷島:「明日から、よろしく頼むな?」
ルカ:「はい、お任せください」
もっとも、明日は移動だけで、実際はその次の日からである。
敷島:「ん?」
ボーカロイドが発声練習(という名の調整)を行う部屋は、ちゃんと防音が施されている。
それでも鉄扉の外には聞こえるものだ。
初音ミクの声がした。
敷島:「この歌は……?」
敷島は鉄扉のドアを開けた。
初音ミク:「……騒ぐな海鳥♪波よ♪船を揺らすな〜♪今夜は〜♪ぐーっすりと〜♪寝ぇかせてーおやりよ〜♪今夜は〜♪ぐーっすりと〜♪寝ぇかせてーおやりよ〜♪」
歌い終わった後で、ミクがハッと後ろを振り向く。
ミク:「たかお社長!」
敷島:「調整は上手く行ってるみたいだな」
ミク:「はい、おかげさまで」
敷島:「いつ聴いても、お前の歌は素晴らしい」
ミク:「ありがとうございます」
敷島:「何度も言うように、お前は兵器じゃない。歌を聴いた人間を幸せにするボーカロイドなんだからな。何も気にせず、持ち歌をきちんと歌えばいい」
ミク:「はい!」
敷島は社長室に戻った。
敷島:「明日1日のことは、矢沢専務にお願いしたし……。あとは大丈夫かな?」
エミリー:「はい、大丈夫です。……あっ、井辺プロデューサーが戻られたようです」
敷島:「そうか。井辺君も明日から北海道まで来てくれることになっているからな、ちょっと話をしてこよう」
敷島は今度は隣の事務室へ向かった。
[5月2日05:32.天候:曇 東京都江東区東雲 TWR東雲駅]
敷島:「朝早いな。今日は1日、移動だけだ」
エミリー:「そうですね」
敷島とエミリーは始発電車を待っていた。
エミリー:「社長、タクシーで東京駅まで行っても良かったんですよ?」
敷島:「いや、無駄な金は使いたくない。都営バスの始発が6時半くらいだとは……」
〔まもなく2番線に、電車が到着します。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕
東雲駅は高架駅であるが、屋根の無い場所で待っていると、首都高を走る車の喧騒な音で放送の声が聞こえにくい。
〔2番線の電車は、各駅停車、新木場行きです〕
りんかい線の車両が入線してくる。
〔しののめ、東雲。2番線は、各駅停車、新木場行きです〕
まだガラガラの始発電車に乗り込んだ。
途中駅のせいか、発車メロディが僅か数秒しか鳴らない。
〔2番線から、電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
ドアチャイムの音と共にドアが閉まる。
ガラガラの車内でもエミリーは座席には座らず、敷島の横に立つだけである。
尚、大きなキャリーケースを持っているが、エミリーにとっては空のダンボール箱のようなものである。
〔「次は新木場、新木場、終点です。JR京葉線、東京メトロ有楽町線はお乗り換えです」〕
電車はほぼ直線の線路を東へ向かってグングンと進む。
昇り始めた朝日は雲間から僅かに覗く程度であるものの、けして幸先は悪くないスタートだった。
敷島:「ボーカロイド達は直接、東京駅に行くんだったな」
エミリー:「そうです。井辺プロデューサーもです」
敷島:「うん」
エミリー:「シンディは大宮駅から、平賀博士は仙台駅から乗られます」
敷島:「予定通りに行くといいな」
エミリー:「はい」
ラジオ局でゴールデンウィークのイベントの告知をするMEGAbyteのメンバー達。
結月ゆかり:「5月3日から札幌ドームで、『北海道ボーカロイドフェスティバル』が行われます!」
Lily:「私達、MEGAbyteも参加させて頂きますので、皆さんよろしくお願いします」
未夢:「楽しいイベントなので、是非来てくださいね〜」
パーソナリティ:「MEGAbyteの皆さんも参加されるということですが、あえて五大ドームツアーでなく、札幌ドームのみでのイベントにしたのはどうしてなんでしょう?」
Lily:「初音ミクさんなど、大元の開発メーカーが北海道にあるんです。言わば、北海道はボーカロイド発祥の地でもあるんです。それに因んだそうです」
パーソナリティ:「そうなんですね。MEGAbyteの皆さんとしては……」
[同日同時刻 天候:曇 ラジオ局の外]
ラジオ局の外に止まっている1台のクラウン。
車内のラジオからは、今正にMEGAbyteが出演しているラジオ番組が受信されていた。
鷲田:「明日から出発なのか?敷島社長」
敷島:「ええ、そうですよ」
敷島はリアシートに座って、運転席と助手席に座る鷲田警視と村中課長と話をしていた。
鷲田:「いい加減、そろそろ無茶ぶりはやめてもらいたいものだね」
敷島:「私はボーカロイド達の運用責任者としての責務を果たすだけですよ」
村中:「はははっ!そう言うと聞こえはいいがね」
鷲田:「ボーカロイドだけではないだろう?社長の秘書さんにも関することではないかね?」
敷島:「どうですかねぇ……」
車の外ではエミリーが周囲を警戒していた。
鷲田:「私としては、まだ金髪の方が話が通じそうでいいと思うんだがね」
村中:「そうですか?あのクールな人もいいと思いますよ」
鷲田:「村中君!」
村中:「おっと、失礼!」
敷島:「北海道にはエミリーやシンディも連れて行きます」
鷲田:「ほお?いいのかね?奥さんの方の護衛は……」
敷島:「アリスは結構強いですし」
村中:「はははっ!」
敷島:「それに身の周りの世話の方はメイドロイドがいますし、警備に関してはあいつ自作のマリオとルイージがいます」
鷲田:「なるほど。人間は信用できんということか」
敷島:「あいにくと。ロボットをテロに使おうとする人間かいたのは事実です」
村中:「ま、気持ちは分かる」
敷島:「何かあったら連絡はしますよ?」
鷲田:「そうしてもらいたいものだね。何しろ、KR団の首領らしい者をまだ検挙しておらん」
敷島:「そうですね」
するとエミリーがこちらを向いた。
敷島:「すいませんが、そろそろ時間のようです」
村中:「ああ。余計な時間を取らせて済まなかったね。とにかく、気をつけて」
敷島:「どうも」
鷲田:「会社に帰ったら、今回の旅行の行程表と日程表を送ってほしいのだが?」
敷島:「ええ。ファックスにします?それともメール?」
村中:「メールで」
鷲田:「ファックスだ。メールだとどこで流出するか分からん」
敷島:「分かりました」
敷島がリアドアを開けた。
スッと降りてすぐにドアを閉める。
鷲田達が乗ったシルバーのクラウンは、スーッと都道を走り去って行った。
エミリー:「社長、大丈夫でしたか?」
敷島:「ああ。まさか、ここで警視庁の特別捜査班に職質食らうなんてな」
エミリー:「MEGAbyteのラジオ出演がまもなく終わる予定です」
敷島:「井辺君に教えてあげよう」
敷島は自分のスマホを出した。
敷島:「井辺君に急な別件が入ったもんだから、代わりに俺が来てみたものの、どうやらその必要は無かったみたいだな」
エミリー:「はい」
[同日17:00.天候:曇 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]
敷島:「どうかな?」
整備士:「はい、特に異常ありません」
敷島:「よしよし」
明日に備えてボーカロイド達の整備は怠らない。
もっとも、平賀が専属整備役として同行してくれることになっている。
最後の整備をしていたのは、巡音ルカ。
敷島:「ルカ、どうだ?調子は?」
ルカ:「あ、はい。特に異常ありません」
敷島:「明日から、よろしく頼むな?」
ルカ:「はい、お任せください」
もっとも、明日は移動だけで、実際はその次の日からである。
敷島:「ん?」
ボーカロイドが発声練習(という名の調整)を行う部屋は、ちゃんと防音が施されている。
それでも鉄扉の外には聞こえるものだ。
初音ミクの声がした。
敷島:「この歌は……?」
敷島は鉄扉のドアを開けた。
初音ミク:「……騒ぐな海鳥♪波よ♪船を揺らすな〜♪今夜は〜♪ぐーっすりと〜♪寝ぇかせてーおやりよ〜♪今夜は〜♪ぐーっすりと〜♪寝ぇかせてーおやりよ〜♪」
歌い終わった後で、ミクがハッと後ろを振り向く。
ミク:「たかお社長!」
敷島:「調整は上手く行ってるみたいだな」
ミク:「はい、おかげさまで」
敷島:「いつ聴いても、お前の歌は素晴らしい」
ミク:「ありがとうございます」
敷島:「何度も言うように、お前は兵器じゃない。歌を聴いた人間を幸せにするボーカロイドなんだからな。何も気にせず、持ち歌をきちんと歌えばいい」
ミク:「はい!」
敷島は社長室に戻った。
敷島:「明日1日のことは、矢沢専務にお願いしたし……。あとは大丈夫かな?」
エミリー:「はい、大丈夫です。……あっ、井辺プロデューサーが戻られたようです」
敷島:「そうか。井辺君も明日から北海道まで来てくれることになっているからな、ちょっと話をしてこよう」
敷島は今度は隣の事務室へ向かった。
[5月2日05:32.天候:曇 東京都江東区東雲 TWR東雲駅]
敷島:「朝早いな。今日は1日、移動だけだ」
エミリー:「そうですね」
敷島とエミリーは始発電車を待っていた。
エミリー:「社長、タクシーで東京駅まで行っても良かったんですよ?」
敷島:「いや、無駄な金は使いたくない。都営バスの始発が6時半くらいだとは……」
〔まもなく2番線に、電車が到着します。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕
東雲駅は高架駅であるが、屋根の無い場所で待っていると、首都高を走る車の喧騒な音で放送の声が聞こえにくい。
〔2番線の電車は、各駅停車、新木場行きです〕
りんかい線の車両が入線してくる。
〔しののめ、東雲。2番線は、各駅停車、新木場行きです〕
まだガラガラの始発電車に乗り込んだ。
途中駅のせいか、発車メロディが僅か数秒しか鳴らない。
〔2番線から、電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
ドアチャイムの音と共にドアが閉まる。
ガラガラの車内でもエミリーは座席には座らず、敷島の横に立つだけである。
尚、大きなキャリーケースを持っているが、エミリーにとっては空のダンボール箱のようなものである。
〔「次は新木場、新木場、終点です。JR京葉線、東京メトロ有楽町線はお乗り換えです」〕
電車はほぼ直線の線路を東へ向かってグングンと進む。
昇り始めた朝日は雲間から僅かに覗く程度であるものの、けして幸先は悪くないスタートだった。
敷島:「ボーカロイド達は直接、東京駅に行くんだったな」
エミリー:「そうです。井辺プロデューサーもです」
敷島:「うん」
エミリー:「シンディは大宮駅から、平賀博士は仙台駅から乗られます」
敷島:「予定通りに行くといいな」
エミリー:「はい」