[同日05:00.天候:晴 東京中央学園上野高校・旧校舎]
エレーナ:「っえーい!!」
バリーンという大きな音がして、旧校舎の中にある姿見が大きな音を立てて割れた。
その鏡の向こうから、ホウキを持ったエレーナが飛び出してきた。
エレーナ:「くそっ!ハメられた!」
エレーナはまだ薄暗い旧校舎の中に戻ってきた。
しかし、戻って来たのはエレーナだけ。
他の魔道師達は相変わらず、魔界から戻れないままだ。
エレーナ:「クロ!稲生氏を捜すよ!」
エレーナは使い魔の黒猫に命じた。
クロ:「血の臭いがするニャ!」
エレーナ:「何だって!?」
クロは廊下を走った。
学校の廊下を走ることは本来許されない行為であるが、今回は仕方が無かった。
クロ:「上の階からニャ!」
エレーナ:「血の臭いって、一体何があったのよ!?」
廊下を突き進むが、向こう側が闇に包まれている。
エレーナ:「無限廊下か!?……パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!光よ!闇に閉ざされた道を照らせ!レ・ミーラ!」
ホウキの柄の先から光が放たれる。
それで闇を払う。
闇自体が何かの化け物というのも、魔界には存在する。
そこから人間界に流れ込み、この旧校舎に巣くったのだろう。
光には弱く、特に魔法の光はその魔物にとっては、攻撃魔法を掛けられたようなものらしい。
ワッと闇が蜘蛛の子を散らすように消えていった。
恐らく、普通の人間には暗い廊下が続いているようにしか見えなかっただろう。
それで無限廊下に捕われ、永遠にさ迷い続けるのだ。
エレーナのように魔力を持つ者が見ると、不自然に闇に包まれているので分かる(他は非常灯や外からの薄明りがあるのに、その無限廊下の部分には全く光が無さ過ぎる)。
クロ:「血の臭いはこの上からニャ!」
エレーナ:「了解!」
エレーナは階段を登った。
エレーナ:「!?」
2階まで上がった時、フッと階段室から2階の廊下に出る人影を一瞬見つけた。
エレーナ:「…………」
エレーナは3階に行く前に、今の人影の正体を確認しようと思った。
2階の廊下に出ると、とある教室に入って行く誰かの姿を見つけた。
それは黒いローブを羽織り、フードを深く被った魔女のように見えた。
エレーナ:「……今の誰?」
エレーナは呟くように使い魔の黒猫を見た。
黒猫はフルフルと首を横に振った。
エレーナ:「私達の他に誰かいるのかな?」
エレーナはホウキを手に、さっきの魔女が入って行った教室へと向かった。
エレーナ:「いない……ってか、何これ?」
教室の中は物が散乱していた。
目立ったのは窓際にあった魔法陣。
エレーナ:「これは……実験用の魔法陣?……あんまり見たことのないデザインだねぇ……」
エレーナは中央に立てられているローソクに火を点けた。
エレーナ:「チッ、ヒドい臭いだ。何か生け贄……人間の生け贄を使ったな。死臭と腐臭だ。クロ、まさかこの臭いじゃないよね?」
クロ:「違うニャ。もっと上からニャ」
エレーナ:「分かった」
エレーナはローソクの火を消した。
エレーナ:「それにしても、さっきの魔女はどこに行ったんだ?」
エレーナは教室を出て、あの魔女は幻覚だと思った。
そんなことして何になるのか?あの魔法陣を見せるのが目的?それとも……。
クロ:「あのトイレニャ!あのトイレから血の臭いがするニャ!」
エレーナ:「了解!」
エレーナは女子トイレの前に着いた。
そして、慎重にドアを開ける。
木製のギィィィィという音が響いた。
エレーナ:「……血の痕がある。クロ、これが稲生氏の血?」
クロ:「そうニャ。相当、大ケガしたようだニャ」
エレーナ:「くっそーっ!誰だそんなことしやがったヤツは!?」
???:「あの……ちょっといいですか?」
エレーナ:「ああッ!?」
背後から声がして振り向くと、そこには仮面の少女がいた。
少女:「ここに来た男の人の知り合いの人ですか?」
エレーナ:「同じ魔道師の仲間だよ。一体どういうことか説明してくれる?」
少女:「実は……」
少女が話したのは稲生に起きた惨事。
背後から襲われた稲生は、ここから連れ出されたのだという。
エレーナ:「それはどこ!?」
少女:「あっちの方向です」
少女が指さした先にはトイレの窓があった。
覗き見防止の為か、その窓はすりガラスになっていて、そのままでは外が見えない。
エレーナが窓を開けると、その先には新校舎があった。
エレーナ:「あんた、こんなことが起きて黙ってたの!?」
少女:「ごめんなさい……。とても、強過ぎて、私には……。それに、私はもう死んで、ここのトイレに括られているから動けないの……」
エレーナ:「稲生氏を連れて行ったのは誰!?」
少女:「あなたの仲間だと思う」
エレーナ:「は!?」
少女:「黒いローブを着て、フードを深く被ってた。今のあなたの恰好と同じ……」
もっとも、エレーナはフードは被っていない。
女性用の中折れ帽を被っている。
エレーナ:「一体どういうことだ!?」
少女:「『女の敵だから、何をしても許される』とか何とか言ってた……」
エレーナ:「それは人間の話!稲生氏は男だけど、もうウチらの仲間なんだから許されるわけないだろう!!」
エレーナは急いでトイレから飛び出した。
そして、さっき来た階段を下りる。
エレーナ:「!?」
2階の廊下から2足歩行の化け物が現れた。
黒っぽい姿をしているが、身長は180cm以上ある。
エレーナの姿を見つけて、襲い掛かって来た。
エレーナ:「マジかよ!パペ、サタン、ハペ、サタン、アレッペ!……取りあえず、ヴァ・ギーマ!」
エレーナは魔法で応戦した。
2階の廊下からわらわらとやってくるのでそっちの様子を見たが、どうもあの魔法陣のある教室から湧いてくるようだった。
エレーナ:「あー、もうっ!こいつらと遊んでる場合じゃないよ!」
恐らくは稲生にケガさせて連れ去った魔女のしわざだろう。
エレーナ:「女の幸せを掴み損ねたクソ魔女が!」
因みにエレーナ自身は、人間時代に性犯罪に遭っていない少数派だ。
ダンテ門内でも性被害に遭って魔女となった者と、そうでない者とでは考え方に開きがあるのだという。
エレーナ:「まだ死んじゃダメだよ、稲生氏!あんたは大事なモデルケースなんだから!」
魔女であったマリアがそこから脱却しつつあるという事実も、門内には広まっている。
だから妹弟子のリリアンヌやアナスタシア組のアンナが、かなり関心を寄せているのは事実だ。
エレーナ:「んっ!?」
1階まで下りた時、黒い魔物が追って来ることは無くなった。
どうやら、行動範囲がかなり限られているらしい。
と、同時に何やらエレーナを呼ぶ声がしたような気がした。
エレーナの名前を呼んでいるわけではないのだが、何だか呼ばれているような気がしたのだ。
エレーナ:「っえーい!!」
バリーンという大きな音がして、旧校舎の中にある姿見が大きな音を立てて割れた。
その鏡の向こうから、ホウキを持ったエレーナが飛び出してきた。
エレーナ:「くそっ!ハメられた!」
エレーナはまだ薄暗い旧校舎の中に戻ってきた。
しかし、戻って来たのはエレーナだけ。
他の魔道師達は相変わらず、魔界から戻れないままだ。
エレーナ:「クロ!稲生氏を捜すよ!」
エレーナは使い魔の黒猫に命じた。
クロ:「血の臭いがするニャ!」
エレーナ:「何だって!?」
クロは廊下を走った。
学校の廊下を走ることは本来許されない行為であるが、今回は仕方が無かった。
クロ:「上の階からニャ!」
エレーナ:「血の臭いって、一体何があったのよ!?」
廊下を突き進むが、向こう側が闇に包まれている。
エレーナ:「無限廊下か!?……パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!光よ!闇に閉ざされた道を照らせ!レ・ミーラ!」
ホウキの柄の先から光が放たれる。
それで闇を払う。
闇自体が何かの化け物というのも、魔界には存在する。
そこから人間界に流れ込み、この旧校舎に巣くったのだろう。
光には弱く、特に魔法の光はその魔物にとっては、攻撃魔法を掛けられたようなものらしい。
ワッと闇が蜘蛛の子を散らすように消えていった。
恐らく、普通の人間には暗い廊下が続いているようにしか見えなかっただろう。
それで無限廊下に捕われ、永遠にさ迷い続けるのだ。
エレーナのように魔力を持つ者が見ると、不自然に闇に包まれているので分かる(他は非常灯や外からの薄明りがあるのに、その無限廊下の部分には全く光が無さ過ぎる)。
クロ:「血の臭いはこの上からニャ!」
エレーナ:「了解!」
エレーナは階段を登った。
エレーナ:「!?」
2階まで上がった時、フッと階段室から2階の廊下に出る人影を一瞬見つけた。
エレーナ:「…………」
エレーナは3階に行く前に、今の人影の正体を確認しようと思った。
2階の廊下に出ると、とある教室に入って行く誰かの姿を見つけた。
それは黒いローブを羽織り、フードを深く被った魔女のように見えた。
エレーナ:「……今の誰?」
エレーナは呟くように使い魔の黒猫を見た。
黒猫はフルフルと首を横に振った。
エレーナ:「私達の他に誰かいるのかな?」
エレーナはホウキを手に、さっきの魔女が入って行った教室へと向かった。
エレーナ:「いない……ってか、何これ?」
教室の中は物が散乱していた。
目立ったのは窓際にあった魔法陣。
エレーナ:「これは……実験用の魔法陣?……あんまり見たことのないデザインだねぇ……」
エレーナは中央に立てられているローソクに火を点けた。
エレーナ:「チッ、ヒドい臭いだ。何か生け贄……人間の生け贄を使ったな。死臭と腐臭だ。クロ、まさかこの臭いじゃないよね?」
クロ:「違うニャ。もっと上からニャ」
エレーナ:「分かった」
エレーナはローソクの火を消した。
エレーナ:「それにしても、さっきの魔女はどこに行ったんだ?」
エレーナは教室を出て、あの魔女は幻覚だと思った。
そんなことして何になるのか?あの魔法陣を見せるのが目的?それとも……。
クロ:「あのトイレニャ!あのトイレから血の臭いがするニャ!」
エレーナ:「了解!」
エレーナは女子トイレの前に着いた。
そして、慎重にドアを開ける。
木製のギィィィィという音が響いた。
エレーナ:「……血の痕がある。クロ、これが稲生氏の血?」
クロ:「そうニャ。相当、大ケガしたようだニャ」
エレーナ:「くっそーっ!誰だそんなことしやがったヤツは!?」
???:「あの……ちょっといいですか?」
エレーナ:「ああッ!?」
背後から声がして振り向くと、そこには仮面の少女がいた。
少女:「ここに来た男の人の知り合いの人ですか?」
エレーナ:「同じ魔道師の仲間だよ。一体どういうことか説明してくれる?」
少女:「実は……」
少女が話したのは稲生に起きた惨事。
背後から襲われた稲生は、ここから連れ出されたのだという。
エレーナ:「それはどこ!?」
少女:「あっちの方向です」
少女が指さした先にはトイレの窓があった。
覗き見防止の為か、その窓はすりガラスになっていて、そのままでは外が見えない。
エレーナが窓を開けると、その先には新校舎があった。
エレーナ:「あんた、こんなことが起きて黙ってたの!?」
少女:「ごめんなさい……。とても、強過ぎて、私には……。それに、私はもう死んで、ここのトイレに括られているから動けないの……」
エレーナ:「稲生氏を連れて行ったのは誰!?」
少女:「あなたの仲間だと思う」
エレーナ:「は!?」
少女:「黒いローブを着て、フードを深く被ってた。今のあなたの恰好と同じ……」
もっとも、エレーナはフードは被っていない。
女性用の中折れ帽を被っている。
エレーナ:「一体どういうことだ!?」
少女:「『女の敵だから、何をしても許される』とか何とか言ってた……」
エレーナ:「それは人間の話!稲生氏は男だけど、もうウチらの仲間なんだから許されるわけないだろう!!」
エレーナは急いでトイレから飛び出した。
そして、さっき来た階段を下りる。
エレーナ:「!?」
2階の廊下から2足歩行の化け物が現れた。
黒っぽい姿をしているが、身長は180cm以上ある。
エレーナの姿を見つけて、襲い掛かって来た。
エレーナ:「マジかよ!パペ、サタン、ハペ、サタン、アレッペ!……取りあえず、ヴァ・ギーマ!」
エレーナは魔法で応戦した。
2階の廊下からわらわらとやってくるのでそっちの様子を見たが、どうもあの魔法陣のある教室から湧いてくるようだった。
エレーナ:「あー、もうっ!こいつらと遊んでる場合じゃないよ!」
恐らくは稲生にケガさせて連れ去った魔女のしわざだろう。
エレーナ:「女の幸せを掴み損ねたクソ魔女が!」
因みにエレーナ自身は、人間時代に性犯罪に遭っていない少数派だ。
ダンテ門内でも性被害に遭って魔女となった者と、そうでない者とでは考え方に開きがあるのだという。
エレーナ:「まだ死んじゃダメだよ、稲生氏!あんたは大事なモデルケースなんだから!」
魔女であったマリアがそこから脱却しつつあるという事実も、門内には広まっている。
だから妹弟子のリリアンヌやアナスタシア組のアンナが、かなり関心を寄せているのは事実だ。
エレーナ:「んっ!?」
1階まで下りた時、黒い魔物が追って来ることは無くなった。
どうやら、行動範囲がかなり限られているらしい。
と、同時に何やらエレーナを呼ぶ声がしたような気がした。
エレーナの名前を呼んでいるわけではないのだが、何だか呼ばれているような気がしたのだ。